イスラーム研究 月刊『道(タオ)』2000年1月号掲載 
12.イスラームの目指すもの

人に気を配る宗教  イスラームは人を庇護する、つまり、人間を守り、育てることを第一の目的にしています。それは人のためになるものを定め、人に害を及ぼすかもしれないことを禁じています。  イスラームは人にとって悪いもの、例えば人の悪口を言う、両親を大切にしないことなどを認めません。このことから、イスラームは全てのことを知り、全てを見通すことの出来る存在に由来するものであることが分かります。  その存在は善いことも悪いことも人の生活の一部であると知っています。人に必要なもの全てを知り、何が人を善へと導き、何が悪へと導くかも知っています。この全能の存在こそ、最も偉大で、最も慈悲深いアッラーなのです。  アッラーは、イスラームを人々のあらゆる生活の規範として受け入れるように命じました。  読者の皆さんがこれからお話しする内容をよく考えるならば、これらの話が全て、そのように命じたアッラーの偉大さを表わすものであることに気がつくでしょう。イスラームは我々に善いことをするように教え、悪い行ないを禁じました。  これから、人にとって大変大事な五つのことを見ていきましょう。これらのことが人にとって大事なことだと気づかず、重く見ない人は多くのものを失なうでしょう。それとは対照的に、これらのことを生活の中に取り入れる人は、善い人生を送るに違いありません。  その五つのこととは次の通りです。  1.宗教  2.精神と生命  3.家族と名誉  4.理性  5.財産  では、次にその一つ一つについて詳しく見ていきましょう。

1.宗教  宗教とは、人間が何千年もの間、拠り所としてきたものです。創造主であるアッラーは預言者達を通じて宗教を人々に伝えてきました。預言者達はアッラーの御言葉を伝えてきました。そして、アッラーから伝えられた最後の宗教がイスラームです。  アッラーは全ての人に対して、イスラームをその人の宗教として受け入れるように命じました。別の言い方をすれば、アッラーのお決めになった戒律に従うように命じたのです。アッラーは人々に、イスラームを否定したり、その価値を減じようとしたり、矛盾したりする全てのものに対し従わないようにと警告しました。  イスラームは全てのものの創造主であるアッラーから授けられたものです。そして、それはアッラーのみが崇拝されるべきであると教えています。預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)はアッラーの最後の使徒であり、彼の亡くなる前にアッラーはイスラームという宗教を完成されました。  イスラームはアッラーから人類へ授けられた素晴らしい恵みで、現世だけでなく、来世においても人々を善き人生へと導きます。イスラームは人間に最も適した宗教です。『クルアーン』の中でアッラーはこうおっしゃっています。 「今日われはあなたがたのために、あなたがたの宗教を完成し、 またあなたがたに対するわれの恩恵を全うし、あなたがたのための教えとして、イスラームを選んだのである」(第五章(食卓章)三節)

2.精神と生命  イスラームは精神にとって善いものを教え、精神を損なうものを禁じています。イスラームは人の命を庇護しています。それは人を不健康にするものや病気をもたらすものを禁じます。また、病気の治療法を探すことを教え、常に体を健康でたくましく保つように教えました。  イスラームは人の命を奪うこと、殺すことを禁じました。人の命は人のものではなく、人を創造したアッラーのものです。ですから、人を殺すということは大変に大きな罪です。したがって、自殺も禁止しています。  イスラームは各自に生命を維持するために食べ物と飲み物を得るよう努力することを命じています。さらに我々自身の体と心に気を配るように教えています。体と心はどちらも平安でなければなりません。そして、我々の体を病気や他のものの攻撃から守るように教えています。  ある人々は、イスラームのことを争いを呼ぶ宗教だと非難しています。それは、彼等がイスラームの真の教えを理解していないからです。事実、イスラームは他のものに危害を加えることを禁じています。イスラームの敵が、イスラームは争いの宗教だと言うのは、彼等が妄想で話をしているからです。彼等の間違った考え方が広く伝わってしまい、多くの人々がそう思い込んでいます。  思慮深い人々には、イスラームについて勉強して頂き、真のイスラームの姿を理解し、それに基づいて御自分の考えを持って頂きたく思っています。

3.家族と名誉  イスラームは家族と名誉とを大変重要に考えています。イスラームは結婚の制度を定めています。性欲は結婚を通して満たされます。  人には感情と欲があります。イスラームは、欲を満たすための正しい道を選ぶように教えています。この方法は他の人たちに迷惑をかけることがありません。  イスラームは夫婦以外の性交渉を禁じています。もし禁じなかったとしたら社会を腐敗させ、誰が父親だか分からない子どもが生まれてくることにもなります。このようなことは善い社会には相応しいことではありません。  さらに、夫婦以外の無分別な性交渉は沢山の病気をもたらしてきました。今日の科学は、ある非常に危険な病気が夫婦以外の性関係と同性愛の結果広まったと明言しています。これは不適切な性関係の結果です。  イスラームは不適切な性関係を禁じています。分別のある人は、このように性交渉に制限を設けているイスラームの智慧を理解するでしょう。  イスラームは結婚した女性が他の男性と性関係を持つことを禁じています。また一方で、敬虔な女性を、他の男性と性関係を持ったとして非難する人々に対して警告しています。イスラームは仲間を侮辱したり、その人の陰口を言ったり、名誉を傷付けることを禁じています。  これは、全て社会と、住民間の信頼と親交を損なわせないために定められているのです。そして、これは人の名誉を守るためなのです。  イスラームは妻に対する夫の権利と夫に対する妻の権利を与えています。さらに、子どもの権利を定めています。また、イスラームは夫と父親に、家族の長としての権利と義務を与えています。そして、欺くことに対して警告をしています。夫が妻を欺くこと、また、妻が夫を欺くこと、子どもを欺くこと、全て禁じられています。欺くということは家族の権利を、さらに社会の権利を踏みにじるものです。

4.理性  理性は非常に大切なものです。理性は善いもの全てへと向かう一方、全ての悪いものへも人を導いてしまいます。理性でものごとを考えれば、理性が純化していきます。理性が人を害悪から守ります。バランスの取れた理性はバランスの取れた考えをします。バランスが取れていない理性であれば、人の行ないもアンバランスとなっていきます。  イスラームは理性に気を配るように命じています。アルコール類などは理性に作用し、その機能をにぶらせます。そこで、イスラームは人の理性の働きに悪影響を与えるアルコール類や麻薬などを禁じているのです。  さて、人は周囲の全てのものごととその機能について考えるべきです。全てのものごとを研究することは真の信仰へと導きます。この地と天にあるものは全てアッラーによって創造されました。我々はその恩恵を有り難く頂くべきです。ものごとを観察し、研究することが我々の義務です。 『クルアーン』三十二章(アッサジダ章)二十六、二十七節に次のように書かれています。 「かれらに教えなかったか。それ以前にわれが幾世代を滅ぼしたかを。 その住まいの中を、(今)かれらは往来している。本当にその中には、種々の印がある。 それでもかれらは聞く耳を持たないのか。  またわれが水を不毛の地に送り、 それで作物を育成させ、かれら自身や家畜に食べさせるのを見ないのか。 かれらは見る目を持たないのか。」  三十六章(ヤー・スィーン章)六十二節には、 「確かにかれ(悪魔)はあなたがたの大部分を迷わせた。どうしてあなたがたは悟らなかったのか。」 とあり、アッラーは分別ある人々に向かって、考える力を奮い起こすようにと命じました。

5.財産  イスラームは富を得なさいと助言しています。富は人を善い人生へと導きます。  しかし、イスラームは不正な富を得ることを禁じています。例えば、不正な取り引きをしたり、賄賂を使って売買することを禁じています。このような行ないは敵を作り、憎しみを生みます。  それゆえ、イスラームは売買に制限を設けています。正しい心でこれらの条件を見れば、それらが、あらゆることを知り、あらゆることを裁く方によって定められたと理解するでしょう。その方は、このやり方ならば誰も傷つけられることがないと御存知なのです。

『クルアーン』の中にある、命令や方法は千四百年以上も昔に授けられたものですが、それらはあらゆる時と場所に当てはまるものです。  このことからも、アッラーが我々を超越した存在であることが分かります。我々の創造主であるアッラーは全知全能であり、我々について知らないことはありません。そして、我々を善い方向へと導きます。その導きはあらゆる人に あるのです。           (続く)

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