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学生との交流:ジェッダ

6
 
  「高校を卒業したら、僕はまず、ザハラーンのキング・ファハド大学に行く。そしてアラムコの石油科学技術者になるんだ」

 マゼール君は迷いのない口調で断言した。

 今回の旅で私たちに同行してくれたサウジ・サイエンスクラブ所属の高校生達は、サウジ中の高校から選ばれた優秀な理系学生達である。彼らに将来の目標を聞くと、大抵は医者、あるいは石油化学技術者と言う返事がかえって来る。

  「君はなにになるの?」

  「まだわからない」

 彼より学年にして三年も上である、私の返事がこれだ。

 隣席の渡辺君は、社会科学の教授、と答える。

  「社会学って、どういう学問なの」

 説明しにくい問がなげかけられる。社会環境と個人のアイデンティティーとの関連について調べる学問、との説明に、マゼール君は興味も無さそうに呟く。

  「これまでの勉強によって僕はこういう人間になっている。それだけだと思う」

  「君の家族、学校、そういうものが君に影響を与えていないと言い切れるかい」

 私も政治-経済学の領域にいる人間であり、社会学の擁護に努める。

  「少なくとも日本人の僕は、石油化学の技術者になろうとはあまり思わない。サウジアラビアという国に生まれたからこその目標だよね。そしてもちろん、宗教もまた、君につよい影響を与えているはずだ」

 ニュアンスは伝わったようだ。

 サウジアラビアでは、理系学問を志す学生は多い。しかし、文系学問は非常に軽視されている。日本でなら、誰もがすこしは考えるであろうアイデンティティーの問題のような観念論ははやりにくい社会なのである。学生との交流の中で何回か感じた点である。

 確かにこうした問題は、強固な精神的バックグラウンドをもてば不問かもしれない。彼らの背景にある信仰にその源泉を求め、越えることの出来ない溝として彼我の差異を定義するのも可能だろう。将来の目標を思い悩む必要もない社会なのかも知れない。

 しかし、この単純化には多いに疑問がのこる。将来への明確な解答、それは情報の欠如の単なる裏返しではないだろうか。日本の高校生にしても状況は同じである。取りあえず大学にいく、というのが日本での典型的な答えだが、それは高校生の時点ででもっている情報が、自分の将来を考えるには不充分であることの現れである。日本人なら、将来はまだ分からないという白紙答案を出す。そこでサウジ学生はエンジニアという模範解答をかわりに出しているだけではないだろうか。

  「イスラームについてどう思う」

 横からムハンマド君の質問が入る。会話はイスラームについて、さらにはサウジアラビア社会についてと移り変わっていく。サウジアラビアの現状について、多少批判めいたことも言ってみる。返ってくるのは教条的な反論ではなく、よく考えた末での異論である。彼らにも同様の批判があり、自国の、自らの問題として真摯にそれと対峙していることが感じられる。

 この国ではエンジニアから出発して、政治を担うテクノクラートになった例もすくなくない。今は模範解答を提出している彼らの将来は、一体どうなるのだろうか。むろん私自身も、何らかの答えを出す日は近い。数年後の再会が楽しみな出会いが多く与えられた訪問であった。
 


 
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