- 第3回目 -
2003年1月18日
イスラーム講座の主な講義内容
1)礼拝の効果
2)義務の礼拝の名前
3)礼拝を行う義務がある人
4)礼拝の条件
5)礼拝の仕方
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まずサラートという言葉について説明します。
サラートというアラビア語には「良いことを祈願すること」という意味があります。
また、法学上のサラートの定義では「タクビールで始まり、タスリームで終わる特別な言葉と動作」となっています。わたしたちムスリムが毎日5回行う礼拝にはたくさんの祈りの言葉が含まれています。ですからこの動作がサラートと名づけられたのです。
礼拝にはどんな効果があるのか、そして、先ほどの「特別な言葉と動作」とはいったい何なのか、一緒に学習していきましょう。
1)礼拝の効果
礼拝により、人間は本来の自分たちの立場に気付くことができます。
つまり、人間は至高のアッラーのしもべであり、彼に支配されている存在だということです。現世における様々なことがらがそれを私たちに忘れさせ,、来世との関係を忘れさせたとき、サラートは、わたしたちがアッラーのしもべであり、支配されている存在だということを思い出させてくれるのです。
礼拝は、人間の心の中に、「私たちに援助し、恵みを与えてくれる者はアッラー以外にいない。」ということをしっかりと植え付けてくれます。表向き、わたしたちは、現世において多くの執り成しや、原因を目にすることができますが、じつはそれらすべて、アッラーがわれわれのために用意してくださったものなのです。
私たちはこの真実を忘れたり、現世の目に見える原因だけに気をとられてしまうことがあります。そんなとき、サラートは私たちに原因をおつくりになられるのはアッラーだけであり、援助者、恵みをあたえてくれるおかたであり、役に立たせ、害を成すおかたであり、生かせ、死なすおかたである、ということを思い出させてくれるのです。
それから人間は、礼拝から、犯してしまった罪のタウバ(悔悟)のためのひと時を得ます。人間は昼も夜も罪を犯す危険にさらされており、時に、罪を犯したという自覚をもち、時に無自覚でいるのです。
そんなとき、少なくとも1日5回繰り返される礼拝はその罪をわたしたちから取り除く役目をしてくれるのです。
そして礼拝はアッラーを信仰するための絶え間なく与えられる栄養のようなものです。人間は現世でのいろいろな仕事やシャイターンからの囁きにより、アッラーへの信仰を忘れそうになることが多々あります。それはあたかも、水を与えられない植物がしおれ、しだいに枯れていき、しまいには燃やされるための薪などになるようなことなのです。しかしながら、もしもムスリムが礼拝を続けていれば、それが彼の信仰心への栄養となり、現世におこる様々な出来事はかれの信仰心を弱らせることも、滅ぼしてしまうこともなくなるでしょう。
2)義務の礼拝の名前
義務の礼拝は1日5回です。朝から順に、ファジュル(2ルクア)、ズフル(4ルクア)、アスル(4ルクア)、マグリブ(3ルクア)、イシャー(4ルクア)となります。それぞれの礼拝の開始可能時刻は諸イスラーム機関発行の礼拝の時刻表を参考にしてください。それぞれの礼拝は、次の礼拝の時刻に入る前に行わなければなりません。
*礼拝をすべきではない時間
・ファジュルの礼拝の後から日の出までの間
・日の出の時
・ズフルの時間に入る前の3〜4分前
・アスルの礼拝のあとから日没までの間
この時間内に礼拝を忘れた人、またはしなかった人はすぐに礼拝をしなければなりません。(これはカダーの礼拝と呼ばれます。礼拝の仕方は同じですが、ニーヤ(意図)が異なります)
3)礼拝を行う義務がある人
ムスリムの成人男女(*注参照)で、正気の者、清浄な者に、礼拝が義務付けられます。
年の小さい子供、正気でない者には礼拝は義務ではありません。また、生理中・出産後の出血が続いている女性は礼拝をすることができません。(清浄な状態でないため)
注:15歳以上が成人とみなされます。それ以下の年齢でも、射精・生理があった男児・女児は成人同様の扱いとなります。
*女性はアザーンをしません。 *イカーマは女性が集団で礼拝をする時は行うのが好ましいとされています。
4)礼拝の条件
・礼拝をする人の状態、からだ、衣服、場所はタハーラの状態(清浄)でなければなりません。
・礼拝可能時刻に入ったことを知ること。
・アウラ(隠すべきところ、見ることが禁じられるところという意味)を隠すこと。
1-礼拝時のアウラ:男性は臍から膝まで。女性は顔と両手以外。
2-その他のときのアウラ(後日説明予定)
3-アウラを見せてもよい、また見てもよい時(後日説明予定)
・キブラの方角を向くこと。
5)礼拝の仕方
1:ニーヤをする
この時、行う礼拝が義務なのかスンナなのか、また、どの礼拝を行うのかを意図する(例:ウサッリー ファルダ ッズフル)。ニーヤはタクビーラトゥルイフラームと同時に行われなければならない。ニーヤのときに何ルクアの礼拝をするということを意図しないほうがいい。
2:タクビーラトゥルイフラーム
ニーヤと同時に行う。キブラの方角を向き立った状態で、両手を上げ、最低限自分自身に聞こえる声でアッラーフアクバルという。両手は親指を両耳に平行させ、手のひらをキブラの方へむける。
اَللهُ أَكْبَرُ アッラーフアクバル
3:ウクーフ(起立)の姿勢
両手を胸の少し下におく。このとき左手の上に右手を置き、右手の指で左手首をつかむ。礼拝の時の目線はタシャッフドの時以外はサジダする場所に置く。
4:イフティターフッサラート
「ワッジャハト ワジュヒー リッラズィー ファタラ ッサマーワーティ ワルアルダ ハニーファン ワ マー アナーミナルムシュリキーン、インナ サラーティー ワ ヌスキー ワ マハヤーヤ ワ ママーティー リッラーヒ ラッビルアーラミーン 、ラー シャリーカ ラフ ワ ビザーリカ ウミルトゥ ワ アナー ミナルムスリミーン。」というドゥアーを唱える。
وَجَّهْتُ وَجْهِي لِلَّذِي فَطَرَ السَّمَوَاتِ وَالأَرْضِ حَنِيفًا وَمَا أَنَا مِنَ الْمُشْرِكِينَ ، إِنَّ صَلاَتِي ، وَنُسُكِي ، وَمَحْيَايَ ، وَمَمَاتِي للهِ رَبِّ الْعَالَمِينَ ، لاَ شَرِيكَ لَهُ وَبِذَلِكَ أُمْرْتُ وَأَنَا مِنَ الْمُسِلِمِينَ .
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「ワッジャハト ワジュヒー リッラズィー ファタラ ッサマーワーティ ワルアルダ ハニーファン ワ マー アナーミナルムシュリキーン、インナ サラーティー ワ ヌスキー ワ マハヤーヤ ワ ママーティー リッラーヒ ラッビルアーラミーン 、ラー シャリーカ ラフ ワ ビザーリカ ウミルトゥ ワ アナー ミナルムスリミーン。」 |
5:イスティアーザ
アウーズ ビッラーヒ ミナッシャイターニ ッラジームと唱える。
أَعُوذُ بِاللهِ مِنَ الشَّيْطَانِ الرَّجِيمِ アウーズ ビッラーヒ ミナッシャイターニ ッラジーム
6:キラーアトゥルファーティハ
ファーティハ章を自分自身に聞こえる声で読む。(ここをクリックすると朗誦とテキストが一緒になった 『対訳 クルアーンビジュアル学習』を見ることができます。)
7:タアミーン(アーミーンと言うこと)
ファーティハ章を読み終えた後にアーミーンと言う。
آمِين アーミーン
8:クルアーンの章またはアーヤを読む
それぞれの礼拝の最初の2ラカートで短いクルアーンの章、またはつづいている3節(アーヤ)を読む。
9:ルクーウの姿勢へ移る
両手を上げアッラーフアクバルと言い、ルクーウの姿勢へ移る。この時ルクーウ以外のことを意図しないこと。
اَللهُ أَكْبَرُ アッラーフアクバル
10:ルクーウ(お辞儀の姿勢)
両手は指をひろげ両膝を掴むようにし、背、膝は曲げないようにする。腰を直角に曲げた姿勢で「スブハーナ ラッビヤルアズィーム」と3回言う。
سُبْحَانَ رَبِّيَ الْعَظِيمِ スブハーナ ラッビヤルアズィーム
11:アルイウティダール(ルクーウから戻ること)
サミアッラーフ リマン ハミダ と言い両手を上げながらルクーウの前の姿勢に戻る。この時イウティダール以外のことを意図しない。手を下ろしながらラッバナ− ワラカルハムド ワッシュクル と言う。一呼吸置く。
سَمِعَ اللهُ لِمَنْ حِمِدَه サミアッラーフ リマンハミダ
رَبَّنا وَ لَكَ الحَمْدُ وَ الشُكْرُ ラッバナ− ワ ラカルハムド ワッシュクル
12:アッラーフアクバルと言い、サジダ(平伏)を行う
この時サジダ以外を意図しない。額、両手、両膝、両足をきちんと床につける。両肘は床に着かないようにする。女性はサジダの時に両脇をしめる。「スブハーナ ラッビヤルアアラー」と3回言う。
سُبْحَانَ رَبِّيَ الأَعْلَى スブハーナ ラッビヤルアアラー
13:アルジュルース
アッラーフアクバルと言いながらジュルースの姿勢をとる。この時ジュルース以外を意図しない。一呼吸置く。
اَللهُ أَكْبَرُ アッラーフアクバル
14:2回目のサジダ
アッラーフアクバルと言い2回目のサジダをする。
اَللهُ أَكْبَرُ アッラーフアクバル
ここまでで1ルクア行ったことになります。2ルクアの礼拝を行う時は、この後にタシャッフドを行います。
15:タシャッフドを行う
この時両手は両腿のうえに置く。「アッタヒーヤート リッラーヒ 、アッサラーム アライカ アイユハンナビーユ ワ ラハマトゥ ッラーヒ ワ バラカートゥフ、サラームン アライナー ワ アラー イバーディッラーヒ ッサーリヒーン、アシュハド アッラー イラーハ イッラッラーハ ワ アシュハド アンナ ムハンマダン ラスールッラーヒ」と唱える。
3ルクア礼拝の場合はこのあと3ルクア目に続けます。その後タシャッフドをもう一度行います。4ルクアの場合は4ルクア目のあとにもう一度タシャッフドを行います。
16:サラートアランナビーとサラートイブラーヒーミーヤを唱える
タシャッフドのあと、サラートアランナビーとサラートイブラーヒーミーヤを唱える。
اَللَّهُمَّ صَلِّ عَلَى مُحَمَّدٍ وَعَلَى آلِ مُحَمَّدٍ ، كَمَا صَلَّيْتَ عَلَى إِبْرَاهِيمَ وَعَلَى آلِ إِبْرَاهِيمَ ، إِنَّكَ حَمِيدٌ مَجِيدٌ ، اللَّهُمَّ بَارِكْ عَلَى مُحَمَّدٍ وَعَلَى آلِ مُحَمَّدٍ ، كَمَا بَارَكْتَ عَلَى إِبْرَاهِيمَ وَعَلَى آلِ إِبْرَاهِيمَ ، إِنَّكَ حَمِيدٌ مَجِيدٌ .
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「アッラーフンマ サッリ アラー ムハンマディン ワ アラー アーリ ムハンマディン、 カマー サッライタ アラー イブラーヒーマ ワ アラー アーリ イブラーヒーマ インナカ ハミードゥン マジード、アッラーフンマ バーリク アラー ムハンマディン ワ アラー アーリ ムハンマディン、カマー バーラクタ アラー イブラーヒーマ ワ アラー アーリ イブラーヒーマ、 インナカ ハミードゥン マジード」 |
17:タスリーム
右を向きながら「アッサラーム アライクム ワ ラハマトゥッラー」と言う。続けて左を向きながら「アッサラーム アライクム ワ ラハマトゥッラー」と言う。
اَلسَّلاَمُ عَلَيْكُمْ وَرَحْمَةُ اللهِ アッサラーム アライクム ワ ラハマトゥッラー
これで1回の礼拝が終わりました。礼拝後にズィクル、ドゥアーをおこなうことはスンナです。義務の礼拝のあとに続けて礼拝を行う時は立つ位置をかえて行うことが奨励されます。礼拝は上記に述べられた順序で行います。 ズィクルとドゥアーの一部を紹介します。
1-義務の礼拝の後
「スブハーナッラー」(×33回)、「アルハムドリッラー」(×33回)、「アッラーフアクバル」(×33回)、「ラー イラーハ イッラッラーハ ワハダフ ラー シャリーカ ラフ、ラフルムルク ワ ラフルハムド、ワ フワ アラー クッリ シャイイン カディール」(×1回)[ ムスリム ]
سُبْحَانَ اللهِ |
「スブハーナッラー(×33回)」
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اَلْحَمْدُ للهِ |
「アルハムドリッラー(×33回)」
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اَلله أَكْبَرُ |
「アッラーフアクバル(×33回)」
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لاَ إِلَهَ إِلاَّ اللهُ وَحْدَهُ لاَ شَرِيكَ لَهُ ، لَهُ الْمُلْكُ وَلَهُ الْحَمْدُ وَهُوَ عَلَى كُلِّ شَيْءٍ قَدِيرٌ .
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「ラー イラーハ イッラッラーハ ワハダフ ラー シャリーカ ラフ、ラフルムルク ワ ラフルハムド、ワ フワ アラー クッリ シャイイン カディール」(×1回)
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2-ファジュルの礼拝の後
「ラー イラーハ イッラッラーフ ワハダフ ラー シャリーカ ラフ、ラフルムルク ワ ラフルハムド ユフイー ワ ユミート ワ フワ アラー クッリ シャイイン カディール」(×10回)[ ティルミズィー ]
لاَ إِلَهَ إِلاَّ اللهُ وَحْدَهُ لاَ شَرِيكَ لَهُ ، لَهُ الْمُلْكُ وَلَهُ الْحَمْدُ يُحْيِي وَيُمِيتُ وَهُوَ عَلَى كُلِّ شَيْءٍ قَدِيرٌ .
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「ラー イラーハ イッラッラーフ ワハダフ ラー シャリーカ ラフ、ラフルムルク ワ ラフルハムド ユフイー ワ ユミート ワ フワ アラー クッリ シャイイン カディール」(×10回) |
3-礼拝の後
「アッラーフンマ アインニー アラー ズィクリカ ワ シュクリカ ワ フスニ イバーダティカ」[ アブー ダーウード ]
اَللَّهُمَّ أَعِنِّي عَلَى ذِكْرِكَ وَشُكْرِكَ وَحُسْنِ عِبَادَتِكَ.
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「アッラーフンマ アインニー アラー ズィクリカ ワ シュクリカ ワ フスニ イバーダティカ」
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