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ハディースの理解とそれが導くこと |
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1 禁じられているのは「害」であって「刑罰」や「正当な報復」ではない。
このハディースで述べられている「害」あるいは「危害」とはイスラームで正当な理由とされるものなしに行われるものです。自分が誰かに不正を為し、それによって与えられた罰などはここでいう「害」には含まれません。それはその罰により個人の権利や社会の安全が守られるからです。
アルバカラ章179節『この報復(の掟)には、あなたがたへの生命(の救助)がある。思慮ある者たちよ、恐らくあなたがたは主を畏れるであろう。』
2 イスラームは害があることを課さず、また有益なことを禁ずることはない。
至高のアッラーは彼のしもべに害になることは課しません。またしもべのためになることを禁じません。アッラーが私たちに命じたことは私たちの現世と来世のために有益なことであり、アッラーが私たちに禁じたことは私たちの現世と来世にとって有害なものなのです。
アルアアラーフ章29節『言ってやるがいい。「わたしの主は、公正であることを命じられる…」』
アルアアラーフ章33節『言ってやるがいい。「本当にわたしの主が禁じられたことは、あからさまな、また隠れた淫らな行いや罪…」』
公正さはすべての善と有益なものの源ですし、淫らな行いは悪の源です。理性をもってアッラーが定めた法について考える者はアッラーはしもべに彼らの理性と健康を守る物事を許可し、彼らの感覚・能力・財産または健康に害をなすもの以外は禁じていないことがわかります。
アルアアラーフ章32節『言ってやるがいい。「アッラーがしもべたちに与えられた、かれからの(賜物)や、食料として(与えられた)清浄なものを、誰が禁じたのか。」言ってやるがいい。「これらのものは、現世の信仰する者たちのためのものであり、特に審判の日には完全に信者の専有するものとなる。」…』
つまり現世ではアッラーが人間にとって善いとしたものは、アッラーを信仰する者たちと不信仰者たちに与えられるが、来世におけるよいものは信仰する者のみに与えられるということです。
アルアヌアーム章145節『言ってやるがいい。「わたしに啓示されたものには、食べものとしてふさわしいもので食べることを禁じられたものはない。ただ不浄である死肉、流れ出る血、豚肉とアッラー以外の名が唱えられたものは除かれる…」』
3 困難(窮屈さ)の除外
イスラームにおける害の禁止に含まれるものが通常ではない困難なものを除外していることです。イスラームは容易い宗教ですからこれは不思議なことではありません。
アルハッジ章78節『…この教えは、あなたがたに苦業を押しつけない…』
アルバカラ章286節『アッラーは誰にも、その能力以上のものを負わせられない…』
以下にイスラームにおいて困難なことを容易化しているものの例を挙げます。
- タヤンムム(病人または水を入手することが困難な者に対して)
アルマーイダ章6節『またあなたがたが病気にかかり、または旅路にあり、また誰か厠から来た者、または女と交わった者で、水を見つけられない場合は、清浄な土に触れ、あなたがたの顔と両手を撫でなさい。アッラーは困難を、あなたがたに課すことを望まれない。ただし、あなたがたを清めることを望み、またあなたがたへの恩恵を果される。恐らくあなたがたは感謝するであろう。』
- 断食を解くこと(病人・旅人に対して)
アルバカラ章185節『ラマダーンの月こそは、人類の導きとして、また導きと(正邪の)識別の明証としてクルアーンが下された月である。それであなたがたの中、この月(家に)いる者は、この月中、斎戒しなければならない。病気にかかっている者、または旅路にある者は、後の日に、同じ日数を(斎戒する)。アッラーはあなたがたに易きを求め、困難を求めない。』
- イフラーム中に避けなければならないことをやむを得ず避け続けられなくなっても罪を犯したことには数えられないこと。
アルバカラ章196節『そして供物が犠牲を捧げる場に到着するまで、あなたの頭を剃ってはならない。あなたがたの中に病人、または頭(の皮膚)に患いのある者は、斎戒をするか施しをなし、または犠牲を捧げて(頭を剃る)償いとしなさい。』
- 合法な状態で借金をした者が借金返済の時期に返済困難だった場合貸した者はその者の状態が改善されるまで待たなければならない。
アルバカラ章280節『また債務者がもし窮境にあるならば、そのめどのつくまで待て。もしあなたがたが分っているならば、(帳消しにして)喜捨することがあなたがたのために最もよい。』
(*貸した者の商売・生活に響かない場合)
4 害の様相
* 詳細は授業で説明します。
5 双方が悪口を言い合ったり名誉を傷つけあった場合にはそれぞれ罪を犯したことになり、相手から受けた害に対する権利は裁判官などが施行する。勝手におたがいの権利を施行してはいけません。
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