ハディース学習
 

40のハディース(31)
『清貧の本質と効果』

 

このハディースはイブン マージャ、アッタバラーニー、イブン ヒッバーン、アルハーキム、アブー ヌアイム、アルバイハキーによって伝承されています。

このハディースの重要性

このハディースは預言者による二つの偉大な助言を含んでいます。一つは現世において清貧であることです。これによりアッラーのしもべへの愛を獲得することができます。もう一つは人々が所有する物事に関しての清貧で、これにより人々の愛を得ることができます。
人間ははかない現世より来世を優先してアッラーからの愛を、そして人々が所有する物に必要以上に関心をもたないことによりまわりの人々から愛を得て初めて幸福になることができます。


単語の意味

أحبّني الله و أحبّني الناس
アハッバニッラーフ ワ アハッバニンナース
「アッラーが私を愛する」アッラーの愛とは報奨を与えることと自分がおこなった善行以上のもので報いてくださることを指しています。「人々が自分を愛する」とは自然な自分への好意を指します。人々からの愛はアッラーからのその者への愛に由来してます。アッラーがその者を愛するとき、アッラーは人々の心にその者への愛を投げ入れます。

マルヤム章96節『信仰して善行に励む者には、慈悲深い御方は、かれらに慈しみを与えるであろう。』
ازهد
イズハド
「ズフド」とは言語的には「物事を卑下してそのものを遠ざけること」です。イスラーム的な意味では「確実にハラール(合法)であるものから必要最小限のものを得ること」です。
في الدنيا
フィッドニヤー
現世において。つまり「アッラーが現世より来世に重きをおいているように、現世に心を奪われないようにしなさい」との意味。

ルクマーン章33節『…あなたがたは現世の生活に欺かれてはならない

アルハディード章20節『あなたがたの現世の生活は遊び戯れに過ぎず、また虚飾と、たがいの間の誇示であり、財産と子女の張り合いに過ぎないことを知れ。』
يحبّك الله
ユヒッバカッラー
アッラーからしもべへの愛はその者への満足とさらなるイフサーンです。ここでいうアッラーの愛とは人間のもとにある感情とは異なります。




ハディースの理解とそれが導くこと

1 ズフド(清貧)の意味

現世における「ズフド」とはハラール(イスラームで合法とされたもの)を自ら禁じることや財産を手放すことではありません。本当のズフドとは「自分の所有しているものよりもアッラーに頼ること」です。また「災難があったときにはその災難後の状況が以前よりもよい状況だと確信していること」です。
イスラーム初期の時代から多くの学者たちが「ズフド」の解説を行っていますが、ズフドとは肉体的・物質的なものではなく、心の中の状態によるものです。

  1. 自分の所有する物以上にアッラーによる采配を信頼すること。

    フード章6節『地上の凡ての生きもので、その御恵みをアッラーからいただいていない者はない…』

    アッザーリヤートゥ章22節『天には、あなたがたへの糧と、あなたがたに約束されたものがある。』

  2. 災難が起こり自分の財産や子供などを失ったときに現状がアッラーが自分に与えた最上の状態だと信じ、災難に耐えることによる報奨を求めること。

  3. 自分のことを誉める人、正当な権利で自分を責める人との間を平等に接すること。

    「現世に対するズフド」とは自分から去っていった物事を悲しまず、自分のもとにもたらされた物事にも必要以上に喜ばないことです。ぼろぼろの古着をわざと着たり、古いものや品質の悪いものをたべることではありません。

 

2 ズフドの種類

  1. アッラーと同等に他のものを崇拝することに関するズフド…つまりアッラーだけを崇拝すること。

  2. ハラームに関するズフド…つまりアッラーへの反抗につながるすべてのことを避けること。

  3. ハラールに関するズフド。

  4. 自分をアッラーから遠ざけるものに関するズフド。

@とAに関しては義務です。Bに関しては信仰心の高い者が行うズフドです。
Cはアッラーの偉大さをよく知る者たちのズフドです。

 

3 ズフドをもたらすもの

  1. 来世、審判と報奨の日にアッラーの御前に立たされることを思い起こすこと。これにより人々は自分を支配しようとする欲望やシャイターンを打ち負かすことができます。

  2. 現世で自分を楽しませることは自分の心をアッラーから遠ざけるものであると思い起こすこと。

    アッタカースル章8節『その日あなたがたは、(現を抜かしていた)享楽に就いて、必ず問われるであろう。』

  3. 現世を求めることに関する疲労と損失、その儚さ、現世のアッラーのもとにおける卑小さを思い起こすこと。

 

4 現世を卑しいものとし、現世に心を奪われることの警戒

ズフドを実行する者は現世を卑しいものとし、現世に心を奪われることに警戒を促す内容のアルクルアーンの一説、またハディースを読む時に自分の行うことの正当性をさらに感じるようになり信仰心を強くしていきます。

アルアアラー章16−17節『いや、あなたがたは現世の生活の方を好む。来世がもっと優れ、またもっと永遠なものであるのに。』

アンニサー章77節『…言ってやるがいい。「現世の歓楽は些細なものである。来世こそは、(アッラーを)畏れる者にとっては最も優れている」…』

ルクマーン章33節『…あなたがたは現世の生活に欺かれてはならない。アッラーのことに就いて欺く者に、あなたがたは欺かれてはならない。』

アッラアド章26節『…彼らは現世の生活を楽しむ。だが現世の生活は、来世では、(はかない)享楽に過ぎない。』

 

5 現世を非難しているアルクルアーンの節やハディースは時代や場所にとらわれないものである。

アルクルアーンやハディースに書かれていることはこの現世の生活において人間が行う行為に基づいています。つまりそれらの多くのことは預言者たちがアッラーから伝えるように命じられた教えに反することで、害を与えることこそあれ、なにも利益をもたらしません。

アルハディード章20節『あなたがたの現世の生活は遊び戯れに過ぎず、また虚飾と、たがいの間の誇示であり、財産と子女の張り合いに過ぎないことを知れ。(現世の生活を)例えれば慈雨のようなもので、(作物は)長生きして不信人者(農夫)を喜ばせる。やがてそれは枯れて黄色に変り、次いで粉々になり果てるのをあなたがたは見るであろう…』

学者イブン ラジャブ アルハンバリーはこの世には2通りの人間がいると言いました。

  1. 報奨と罰が与えられる来世の存在を信じない者たち。

    ユーヌス章7−8節『本当にわれとの会見を期待しない者、また現世の生活に満足してこれに安心している者、そしてわれの印を疎かにする者、これらの者の住まいは、その(悪い)行いのために地獄である。』

    これらの人々の関心事は、自分が死ぬ前に現世で得られうる享楽を得ることです。

    ムハンマド章12節『そして信仰しない者には、(現世の生活を)楽しませ、家畜が食うように大食いさせて、業火をかれらの住まいとする。』

    来世を信じない者たちの中にもズフドを人々に説く者がいました。それは現世の享楽に伴いさまざまな心配事が増えるためです。またいかに享楽を極めようとも、死ぬときには自分が現世で集めたすべてのものを手放さなければならないので、それに伴う痛みもそれだけ大きくなるからでした。

  2. 来世を信じ死後自分の行為に対する報奨や罰を受けることを信じるものたち。
    これらの者たちはアッラーの使徒たちの律法にのっとって生きている者たちです。これらの者たちはさらに3通りのグループにわかれます。

    来世を信じてはいるものの現世に存在するものの使用意図を理解せず、現世にうつつを抜かし、信仰者としての行為が伴わない者。
    現世に存在するものの使用意図を理解してはいるが、合法とされている物事を必要以上にする者。来世において罰を受けることはないが、来世でのより良い地位を逃す者。
    ムスリムの伝承によると預言者は言いました。『現世は信者にとって牢獄のようなものであり不信仰者にとっては天国のようなものである。』
    アッラーが現世を存在させた理由を正しく理解している者。
      アッラーは現世を信者を試すために存在させました。
    アルムルク章2節『(かれは)死と生を創られた方である。それは、あなたがたの中誰の行いが優れているのかを試みられるためで、かれは偉力ならびなく寛容であられる。』

     

6 至高のアッラーのご満悦をどのように手に入れるのか

現世におけるズフドによってアッラーからのご満悦をえることができます。なぜならアッラーは彼に服従するものを愛します。そしてアッラーの愛と現世への執着が同時に存在することは不可能とされています。

預言者は言いました。『現世への愛(執着)はすべての過ちのもとである。』

アッラーは過ちもそれを犯す者も好みません。また心はアッラーの場所ともいわれ、現世への愛や執着であれそれ以外であれ、アッラーはそこにご自身以外のものがいることを好まれません。
ここで禁じられている現世への愛とは自分の欲望をみたすためにそれらのことをアッラーから命じられていることよりも優先することです。

また善行やアッラーに近付くための好意を好むことも称賛される行為とされています。

 

7 どのように人々の愛を手に入れるのか

このハディースには、人々から愛されるために何をすべきかということが述べられています。それは人々が所有しているものに対するズフドです。人々は一般に現世を愛しています。ですから現世から手を引けば人々はその者を愛するようになります。特にこれは支配者や宗教的な指導者に対して如実に現れます。人々は支配者や指導者がズフドを行っていればこれらの人々を敬愛し、その者たちが説く道を自ら進んで歩んでいきます。

 

8 アッラーの使徒(アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ)と教友たちのズフド

私たちはこのズフドを実行するための最良の模範者として預言者ムハンマドの行動をみることができます。預言者は彼のその生活の中で実際にどのようにズフドを身に付けるべきかを言葉と行動でもって私たちに教えてくれています。これは「来世での安楽を現世の享楽に優先させる」というアッラーの教育の成果でした。

ターハー章131節『またわれが、かれらのある部類の者に与えたこの世の生活の栄華に、あなたの目を見張ってはならない。われは、それによってかれらを試みた。あなたの主の賜物こそ至上でまた永続する。』

預言者はヒジュラ(アルマディーナへの移住)以前も以後も、また困難な時期も安楽な時期も現世の享楽を避け来世での成功を求めアッラーを真摯に崇拝し続けました。

また彼に続く教友たちは同じくズフドを行い来世を求めるものたちの先駆者でした。

ある時イブン ウマルはある男が「現世にとらわれず来世を求めるものたちはどこにいるのか?」というのを聞き、預言者とアブーバクルとウマルの墓を指差しました。そして「この者たちに尋ねなさい。」と言いました。

またイブン マスウードは彼と供にいるものたちに言いました。「あなたたちは預言者ムハンマドの教友たち以上に礼拝や断食やジハードを行っているが、彼らのほうがあなたがたよりもたくさんハイル(善いもの)をもっていた。」すると彼らは言いました。「それはどのように?」するとイブン マスウードは言いました。「彼らはあなたがよりも現世に現を抜かさず来世を求めました。彼らのもとにはハラールの財産による現世がやってきましたが、それらをアッラーに近付くために我慢し、イスラームのために費やしました。

またアブー スライマーンは言いました。「ウスマーンとアブドゥッラハマーンは地上におけるアッラーの数ある金庫の中の二つの金庫でした。

 

9 ムスリム以外のズフド

ムスリム以外の行うズフドとはアッラーからの恵みすべてから自分を遠ざけようとしたり、その恵みを過小評価あるいは卑下します。そしてそれらによる楽しみの一部を禁じました。
ムスリムでも彼らの考えに影響を受け、アッバース朝時代末期にはぼろぼろの服を身にまとい、働くことをやめ、人々から得られる施しによって生活をし、自分たちはズフドを行う者たちだという者たちが出てきました。

これはイスラームの説くものとは正反対の状態です。イスラームでは働かないことを禁じていますし、他人から卑下されるような状態に自分をあえて置くこと、また自分ではまったく努力せず他人の力にすがることを禁じています。





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2004年 アラブ イスラーム学院