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ダントツに素晴らしい言語 = アラビア語

 

                           佐野 千遥博士*

 ヨーロッパの言語学会には、人類は昔、サンスクリット語やギリシャ語やラテン語等の素晴らしい文法構造の言語を喋っていたが、時代が下るにつれて「堕落」し、堕落の最たるものが英語であるという認識が有る。英語は動詞活用も名詞、形容詞の格活用もしないまま、ただ知っている言葉を並べれば済むからである。

 アラビア語を知る前、仏語、英語、露語、独語、西語、中国語をマスターした私は次のように認識していた。英語(その他、デンマーク語、オランダ語等も第二次大戦後、動詞活用も名詞、形容詞の格活用も殆ど無くなった)以外の西洋語の殆どはその動詞活用変化の形がそれぞれの動詞につき約100有る。名詞、形容詞に男性/女性(/中性)の語尾変化が有る。格活用をするスラブ語やゲルマン語は凄まじい組み合わせ論的爆発が起こる。格活用とは日本語で云えば「てにをは」に当るが、日本語のように主格は「は」か「が」、所有格は「の」、与格は「に」、対格は「を」、造格は「をもって」、前置格は「において」のように一律に簡素化されておらず、例えばロシア語では男性/女性/中性の名詞が単数主格の20通りの語尾の形それぞれが6つの格の計 通りの語尾変化を起こし、それがその名詞の複数についても同様に120通りの語尾変化を起こし、単複総計で240通りの語尾変化を起こし、男性/女性/中性の形容詞が単数/複数の28通りの語尾の形それぞれが6つの格の計 通りの語尾変化を起こす。よって形容詞一つと名詞から成る主語を動詞で単純な形容詞一つと名詞から成る目的語に結んで下記のような単純素朴な文を構成するだけで (千六百億)通りの格変化/動詞活用の中から一つを正しく取り出さねばならない作業となる。

 以上述べたようにヨーロッパ語と中国語までしか知らなかった頃には、私にとって文法的に最複雑な言語はロシア語であった。

 ところが、アラビア語を見て唖然とした。その上を行くのである。これは素晴らしい言葉である。先ず動詞の活用は各人称につき(1人称は別として)男性形、女性形の両方が存在する。このような言語は私の知る限り世界中に他に存在しない。ペルシャ語系は格活用が無く、動詞活用のみで、文法的には西欧のラテン系言語程度の複雑さでしかない。アラビア語は格は3つだが、全ての単語は3つの子音を基礎に作られおり、その音節の音を組替えることによって名詞の男性形、女性形、複数形、duel形を形成し、動詞のmansuwb, majzuwn, masdar や能動分詞、受動分詞、受動態、命令形を作るという、ダントツに素晴らしく魅力的な言語である。よくぞここまで整理されたしかし文法的にこの上なく複雑な美的言語を創れたものだと感心し、このアラビア語を創ったのは人間業ではないのではないかとすら感じる。

 また音声学的な高度さの点でもアラビア語は抜きん出ている。つまり、アラビア語を知る以前の段階で、私にとって音声学的に一番高度な言語と映ったのはリエゾン(前の単語の語尾の子音と次の語の語頭の母音が合体し連続的に発音される)の有るフランス語であったが、このリエゾンにおいてもアラビア語はフランス語を遥かに凌ぐことを知った。

 特に人称に基づく動詞活用に注目した時、最近次のような仮説に気付いた。人称に基づく動詞活用が高度で有ればあるほど、その言語を喋る人達は論理的なのではないか、と。つまり人称に基づいて活用する動詞を使う度に、その動作、行為、作用の責任者は誰かに思いを馳せるのだから、論理的になるのは当然ではないか。だからアラビア語を喋る人達は世界一論理的ではなかろうか?

*Professor of physics at St.-Clements University, U.K.:
Board member of International Club of Scientists (= Smirnov's school of physics in Russian Academy of Sciences), Russia:
Ph.D. in mathematical physics, Ph.D. in computer science (focus on artificial intelligence), license of interpreter at the doctoral level.


 

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