単語の最後に来る文字とその読み方



アラビア語と格変化

 『アラビア語の仕組み』でも紹介したように、アラビア語には「格変化」というものがあります。それを示すため格単語の最後に来る文字には「a」「i」「u」いずれかの母音がつけられます(注:そうでない場合もあります)。

 また、アラビア語ではその名詞が非限定形であることを示すため、それら「a」、「i」、「u」の母音の後に加えて、「n」の音がつけられることもあります。

 ここれでは、「本」という単語を例として取り上げてみます。アラビア語では「本」のことを「キターブ(kitaab)」といいます。しかし、厳密にいうとこの単語の最後 では、以下のような音の変化が起こっています。
 

限定されていない単語「本(a book)」の場合
كِتَابًا كِتَابٍ كِتَابٌ
対格・目的格
(本を)
属格・所有格
(本の)
主格
(本は)
主格
(kitaab-un;本は)
「本(キターブ)」という単語が非限定形(*)で、主語などになった場合には、単語の最後に主格であることを示す母音の「u」、更には非限定形の名詞であることを示す「n」の音がつけられます。
属格・所有格
(kitaab-in;本の)
「本(キターブ)」という単語が非限定形で、所有格になった場合には、単語の最後に所有格であることを示す母音の「i」、更には非限定形の名詞であることを示す「n」の音がつけられます。
対格・目的格
(kitaab-an;本を)
「本(キターブ)」という単語が非限定形で、動詞の目的語になるなどした場合には、単語の最後に対格・目的格であることを示す母音の「a」、更には非限定形の名詞であることを示す「n」の音がつけられます。 通常は、単語の最後にアリフを書き足します。

 非限定形であることを示すためにつけられる「n」は、限定されている単語にはつきません。したがって、限定されている単語の最後には格を示すための「a」 、「i」、「u」のいずれかだけが追加されることになります。たとえば、定冠詞「al」のついた単語は以下のように格変化します。
 
限定されている単語「本」における格の変化
اَلْكِتَابَ اَلْكِتَابِ اَلْكِتَابُ
対格・目的格
(その本を)
属格・所有格
(その本の)
主格
(その本は)
主格
(al-kitaab-u;その本は)
「本(キターブ)」という単語が限定形で、主語などになった場合には、単語の最後に主格であることを示す母音の「u」がつけられます。
属格・所有格
(al-kitaab-i;その本の)
「本(キターブ)」という単語が限定形で、所有格になった場合には、単語の最後に所有格であることを示す母音の「i」がつけられます。
対格・目的格
(al-kitaab-a;その本を)
「本(キターブ)」という単語が非限定形で、動詞の目的語になるなどした場合には、単語の最後に対格・目的格であることを示す母音の「a」がつけられます。 この単語は限定されているので、アリフは書き足しません。
 
 それぞれの単語はその語末に文法的な役割を果たす「a」、「i」、「u」の音を持っていることが、これでお分かりいただけたと思います。
 

単語末の文字についているはずの音が省略される理由

 しかし、アラビア語を既に学んだことのある方であれば、このように重要な働きを持っている単語末の母音や、非限定名詞であることを示す「n」などが発音されないケースが多いことに気付いていると思います。たとえば、単語集のテープなどを聞いた際に、次のような問題にぶつかったことはありませんか?
 

كِتَابْ كِتَابٌ 教科書では表記上「キターブン」になっているはずなのに、実際の録音を聞いたら、「キターブ」となっていたことはありませんか?
キターブ キターブン
سَاعَه سَاعَةٌ

ターゥ・マルブータのついている単語を読んだはずのテープを聞いたら、「サーアトゥン」ではなく「サーア」と読まれていたことはありませんか?

また、アラブ人の書いた文章で、ターゥ・マルブータではなく、かわりに点の無い「ハーゥ」が使われていて、「おかしいな」と思ったことはありませんか?

サーア サーアトゥン

 これらの原因は、すべて「ワクフ」という仕組みによるものです。「ワクフ 」とは、単語の最後の部分で発音を切 って止め、その後に来る単語とは発音を続けないことを指します。「話し手がある単語を発音した時点で息継ぎをすると起きる 」と考えればわかりやすいと思います。

 「ワクフ」といっても、さまざまな変化がありますが、ここではその中でも一般的な方法を紹介します。 今後、アラビア語で吹き込まれたテープや、ラジオ放送を聞く際の参考にして下さい。

語末に来る文字の発音とその具体的な方法

ダンマ(u音)とカスラ(i音)で終わっている単語

 単語の最後についている「u」や「i」の音は消えます。単語の最後に非限定名詞であることを示す「n」の音がついて「-un」、「-in」 となっている場合には、「u」や「i」の音と共に、「n」の音も消えます。つまり、単語の最後に母音がつかない(=子音になる=スクーンがつく)ことになります。
 

文章の意味
(読み方←ワクフでない時の読み方)
アラビア語表記
(非ワクフ時の読み方)ワクフであることを示す場合の表記
ザイドが来ました
(jaa'a zayd←zaydun
جَاءَ زَيْدْ ( زَيْدٌ )
私はザイドに挨拶しました
(sallamtu `alaa zayd←zaydin
سَلَّمْتُ عَلَى زَيْدْ ( زَيْدٍ )
公正なる王が来ました
(jaa'a-l-maliku-l-`aadil←`aadilu
جَاءَ الْمَلِكُ الْعَادِلْ ( الْعَادِلُ )

 上に、いくつかの例文を示してみました。上の例文をそれぞれ息継ぎせずに読んだと仮定すると、表のように、書く文章の最期に来る単語末にワクフが起きることになります。
 

ファトハ(a音)で終わっている単語

 単語の最後についている「a」の音は消えます。単語の最後に非限定名詞であることを示す「n」の音がついて「-an」となっている場合には、「n」は発音されず、かわりに「aa(アー)」という発音になります。

文章の意味
(読み方←ワクフでない時の読み方)
アラビア語表記
(非ワクフ時の読み方)ワクフであることを示す場合の表記
私はザイドを見ました
(ra'aytu zaydaa←zaydan

رَأَيْتُ زَيْدَا ( زَيْدًا )

 上の例を見て下さい。目的語であることを示すために「a」の音が、更には非限定名詞であることを示すために「n」の音がつけられていて「zaydan」(ザイダン)となっている単語が、ワクフによって「zaydaa」(ザイダー)となっています。
 

ターゥ・マルブータで終わっている場合

 単語がターゥ・マルブータ(ة )で終わっている場合、 ターゥ・マルブータについている母音は省略されます。更に、本来「t」の音が与えられるはずのターゥ・マルブータが、無母音(=スクーンのついた)の「h」に変わります。
 

文章の意味
(読み方←ワクフでない時の読み方)
アラビア語表記
(非ワクフ時の読み方)ワクフであることを示す場合の表記
時計
(saa`ah←saa`atun
سَاعَهْ ( سَاعَةٌ )
彼は部屋で眠っています
(yanaamu fii ghurfah←ghurfatin
يَنَامُ فِي غُرْفَهْ ( غُرْفَةٍ )
かれはある部屋に入りました
(dakhala ghurfah←ghurfatan
دَخَلَ غُرْفَهْ ( غُرْفَةً )

 しかし、実際には、この「h」の音ははっきりと聞こえません。通常は、ターゥ・マルブータの前に来る母音「a(ア)」の部分で発音を止めて、息継ぎをしているように聞こえます。
 
 



↑UP↑

前に戻る


アラビア語カフェへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2003年 アラブ イスラーム学院