トピック:『天国はお母さんの足の下にある!』
「天国はお母さんの足の下にある!」それはサウジアラビアをはじめ、アラブ世界でよく言われる台詞です。天国に行くには親孝行が欠かせない条件だということです。アラブ社会が安定している要因の一つは、社会を構成する家族が強い絆で結ばれていることだと考えられています。子供たちが熱心に親孝行をすることは、立派な責任感のある大人に育つことに繋がるでしょう。筆者も子供の頃、ショッピングに行ったら、自分が召使であるかのようにお母さんには何も持たせずに、すべての荷物を一人で持っていました。家事に関しても、弟と仕事を分担し、洗濯をしたり、皿を洗ったり、掃除をしたりしていました。お母さんが喜ぶためなら何でもするという気持ちでした。また年が上になるにつれて、弟達や妹達の面倒をみて、一緒に勉強するのが責任の一つになりました。
なぜアラブ人はそこまで親孝行をするのかと疑問に思う方がいるかもしれませんが、それはまさに愛の力(ザ パワー オブ ラブ)だと思います。今回紹介している童謡のタイトルを「お母さん」にしましたが、アラビア語から直訳すると「愛の泉」になります。エジプトでもお母さんがセット アルハバイェブ「愛する者たちのご主人さま」と呼ばれているほど、アラブ人の頭の中では愛とお母さんが連結しています。そして、毎朝子供は両親の頭と手にキスをして、「学校に行ってくるから、私のために祈ってね!」と言って、親に抱きしめられ、祈りを聞かされます。子供が成長する過程において、そう言ったスキンシップと愛されているという安心感は欠かせません。
日本ではアラビアと同じく親孝行が大切にされていますが、愛情と親孝行が必ずしも連結しているとは言えません。そこで、この背景を紹介したいということもあって、今回の童謡のタイトルを「お母さん」にしました。
翻訳するときも、日本ではあまり使われていない表現が沢山あって、翻訳担当者が大変悩まされました。「私の魂」、「私の目より高価な」、「心にあなたの名前が書かれている!」などなどアラビア語の独特な台詞が日本語だと変に聞こえてしまいます。今回は直訳よりもなるべく日本人に分かりやすい文章になるように心がけました。そのため、単語リストに登場する単語が歌詞に出なかったりすることもあります。
最後に、親孝行、客のもてなし、お見合い結婚及び同じ家の中に住む3世代など日本とアラブの間に多くの共通点が存在しています。今まで文化交流が十分ではなかったせいかお互い遠い文化に見えていました。しかし、我々アラブ人も日本人も同じ東洋人であることを忘れてはいけないのではないでしょうか。
ブカーリ イサム
早稲田大学 大学院理工学研究科
アラブ・イスラーム学院文化・広報担当
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