アラブを見つめて
 

【女性たちは何を読んでいる?】



 先日、ある若い女性が、旅行をするので飛行機の中で読む本がほしい、と私に 言いました。

 私は彼女が普段読書をしないことをよく知っていたので、私が知らない彼女の 好みに合いそうな本をあれこれと考え、彼女が20代の女性であることから、私 はイフサーン・アブド=ル=クッドゥースや、モハンマド・アブディルハリーム・ アブディッラーの短編や、ナジーブ・マハフーズのシンプルな物語を勧めてみま した。

 しかし彼女は気に入らないようで、「それらの物語はどんな種類なの?」と私 に訊ね、私が答える前に、「それは浪漫小説なの?」と言いました。そこで私 は、「ええ。でもヒューマニズムの分野でもあるわ。」と答えました。すると彼 女はこう言ったのです。

「いいえ、空しい言葉が連なる本はいらないわ。愛だとか恋だとか、作り話と か。私、本当のことを書いた本がほしいの。」

 その返答は、まるで台風のように私に衝撃を与えました。彼女は結構リーズナ ブルな女性に見えるのに。

 そして私は、今の若い世代の人たちが独自の見方を持ち、私たちが若い時に経 験した浪漫主義的な気持ちを超越してしまっていることに驚いたのです。新しい 世代の人々は、自分の時代と共に生きており、架空の物語の最後がどうなるのか 知るために、わくわくして読み進むような無駄な時間はないのだ、ということの ようです。

 それで、彼女は自分で書店に入り、彼女が主張する「実際のことを書いた本」 を探しました。そしてやがて、ヒラリー・クリントンの自伝<LIVING HISTORY> を手に取りました。それを見て私が、貴女は旅行中ずっと読む本がほしいのか、 あるいは飛行機の中で読む本がほしいのか、と訊ねると、彼女は飛行機の中だけ だ、と言い、その長さゆえに、結局その本から離れました。

 それから今度は、マーガレット・サッチャーの<THE DOWNING STREET YEARS> を手に取りました。そこで私は、それは純粋に政治についての本だからとても難 しいし、とても楽しめないだろう、と言ったのです。それを読むためには、充分 に背景を知っている必要があるからです。

 しかし彼女はどうしてもその本がいいのだと言い、やがて旅立っていきまし た。それからどうなったか知りませんが。彼女はニュースも聞かないし、政治に は全く関心がないというのに。

 この若い女性は、数ヶ月前にレバノンの新聞で読んだある記事を、私に思い起 こさせました。その記事は、ベルギー人の女性による調査を通して女性の読書に ついて語られており、女性の本の好みを概して紹介していたのです。それにはこ のように書いてありました:

<女性は、その生涯のある長い期間、ロマンチックなものを好み、繊細な言葉や 夢見るような文章を求め、現実と想像の世界の狭間でそれらと共に生きます。本 の中から主人公の女性を消し去り、その役を自分に置き換えて。そして大人にな ると、女性としての自分の性質を育て、自らの美や女らしさや家庭に関心を持た せてくれるような本を好みます。

しかし思秋期になると、女性は若者の暮らしや彼らの問題について書いたものを 読むようになるのです。自分の息子や娘たちがその将来に立ちふさがるような問 題に陥らないよう、心配してのことです。>

 国際本市を通し、この女性研究者は、インターネットやコンピューターが席巻 する今でも尚、本は多くの社会層で重要な地位を占めていると考えています。 そして彼女は、四半世紀前から今まで、書籍の購買についての統計を取ってお り、最も多く買われているのは子供の絵本で、次いでロマンチックな物語、それ から現代の新しいテクノロジーに関する本……という順番でした。

 そして、概して女性が読書から離れていることも驚きの結果でした。現代の生 活が、女性から最良の友(本)を遠ざけてしまっているのです。しかしそれでも なお、女性は男性よりもずっと、新しいものに関心を持っており、本を読もうと 決めれば、最小限の時間で吸収することが可能です。

 また、文化・社会レベルに関する女性研究者は、女性が読む本について語って おり、社会的地位の高い夫を持つ妻たちや、国家の重要な地位についている女性 たちは、注目を集めるべく自らの文化レベルを上げようと、常時読書をしている ということも示していました。

 一般人の妻たちが、男性の胃袋を満足させることこそ、その心をつかむ最短の 方法だと信じてお菓子作りに励む中で。また、働く女性の生活においては、忙し さも読書への関心を阻んでいるようです。

 文化センターの報告に基づいたドイツでの研究では、女性は、ロマンス小説や 人情物と同じぐらい、推理小説や観光・スポーツに関する読み物を好むことが示 されており、男性は、有名人やその人生について語られた新聞や雑誌の翻訳物を 好むことが示されています。

 そして、異なる国々の昨今の若い女性たちは、現代の人について書かれた実際 の話を好むと共に、アルベール・カミュやトルストイ、ヴィクトル・ユーゴー、 スタンダール、といった19世紀の作家の作品をも読んでいるのだそうです。

 さて、それでは私たちの国の若い女性たちは、一体誰の作品を読んでいるので しょうか? <アブー・アル=ハッシュ、ウナイザからベイルートへ(*訳注)> の女性作者のものだけを読んでいるのでしょうか? それとも、私たちが知らな い他の実際の話を読んでいるのでしょうか?

(*訳注:サウジアラビアの女性ジャーナリストの著書で、「スター・アカデミー」 というレバノン衛星放送の「スター誕生」のような歌番組で優勝したサウジアラ ビア人の男性スターについて書かれたドキュメンタリー本のようである。)



筆者:ナジュワ ハーシム
サウジアラビア女性作家 

(2008年5月7日更新)

                

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