アラブを見つめて
 

【まだ休暇は残っている】



 休暇中の人々の姿を見て楽しみ、彼らがどのように過ごしているか知りたいと 思うならば、旅行者の顔であふれる空港へ足を運び、彼らがどんな風に旅立って いくのか見てみるといいでしょう。

 彼らはまるで、地獄から逃げ出すかのように旅立っていきます。その顔は喜び で笑いにあふれ、みな口をそろえて待ち焦がれていたという休息を求めて旅立ち の瞬間へと急ぎ、空港の通路を足早に行き過ぎます。そして飛行機が離陸し、疲 れるばかりだと思っているこの地を離れると、深く息をつくのです。

 一方、休暇に旅行をしない人々はどうかといえば、その間、睡眠がその細胞の 大半を支配します。子供も若者も、みな朝7時ごろからマグリブ前まで眠り、本 来眠るべき夜中じゅう起きています。

 彼らの中には、休暇中は長い勤務時間に苛まれた睡眠や休息を楽しむのだ、と いう人がいます。6〜7時間の勤務時間中、実質的に「生産的な時間」がもしあ るとするならば、ほんの1〜2時間にすぎないという実情でありながら。

 また、休暇を望まず、仕事に戻ることを夢見るような人は、国民全体の1パー セントしかいないと言います。そしてそのような人々は、仕事に取り付かれた病 人だとか、休暇に何もすることがない者なのだとか、休暇が暮らしの色を変える ことを知らない者なのだとか、悪し様に言われるのです。

 多くの人々が仕事中に感じる倦怠感こそ、彼らをそのような強さで休暇にしが みつかせています。しかし本来は、気持ちを変えたり休息を取ったりするのに は、木曜日と金曜日の2日間の週休で充分なのです。

 また私たちは、1年52週365日のうち、104日間は木・金曜の週休を過 ごしており、それに加えて35日間の公式な休暇、5日間の急用のための休暇、 そして30日間のイード休暇(*イード=ル=フィトル:断食明け祭り、イード= ル=アドハー:犠牲祭)……。

 要するに私たちの社会は、病欠のための休暇以外に、174日間も公式な休日 があり、働くのは191日だけです。つまり、だいたい半年だけ働き、残りの半 年は休んでいるということです。

 新しい勤務者も古い勤務者も、同じように休暇を取ることに熱心で、休みを取 らずに長い期間勤務することを苦痛に思うことも、両者とも変わりありません。 そのため、彼らの中には、自分の休日を犠牲にし、たとえば2年間も欠勤しない ような模範的な人について、馬鹿にする者たちもいるのです。

 彼らはそのような人のことを、まず、それは想像の世界の人間に過ぎないと言 い、次には尋常じゃないと言い、時にはそのような人を偽善者だと言ったり、何 か特定な昇進を狙っているに違いない、と言ったりします。

 先週私は、「アーサー・ウィンストン」という98歳になるアメリカ人男性の ことについての記事を読みました。彼は今でもバス会社で働いており、クリント ン前大統領は、彼に「アメリカにおける21世紀最善の勤労者」の称号を授けま した。もちろん、彼は特別なケースだとは思いますが、彼は妻の埋葬の日以外、 一日も休まずに、70年間も働いたのです。

 この老人が住むロスアンジェルスでは彼はとても有名になり、床屋も彼からは 散髪料金を決して取ろうとせず、人々は彼が街に夕食をとりにやってくると、賞 賛の言葉をささやき合い、彼が行くところはどこでも、称賛の場となるのだそう です。今でも彼を褒め称える言葉は絶えず、称賛のまなざしは彼のいるところど こにでも向けられているのです。

 彼の組織の女性社長は、彼についてこのように言いました。

「彼は私たちすべての者にとっての見本です。ここ南支部の勤労者だけに留まら ず、組織全体にとっての。ウィンストン氏は、安全における素晴らしい記録だけ ではなく、その誠実さや仕事へのひたむきさ、組織への愛着、同僚への誠意など によって、人々が見習うべき伝説の人になったのです。」

 私は、この誠実な老人に対する称賛の言葉の前に立ち止まりました。それは、 働いて歳を重ね、長い年月を仕事に捧げ、他者に伝達するべき貴重な経験を得た 人々に対して、私たちが失ってしまった賛辞です。

 女性の中でも今、60歳になるか、または30年間仕事をしてきた人には、強 制的であれ、自発的であれ、早期退職への勧告がなされるべきであり、大卒者や 仕事がない女性たちに道を開くべきだ、と唱えられているのですから。それは新 聞紙面上だけのことではなく、多くの都市でよく人々が交している会話なので す。

 私は去年、ある女性に会ったのですが、彼女は私に、長く働く古参者たちを早 く退職させ、若い女性たちを代わりに雇うべきだ、と新聞に書いてくれと言いま した。

 この時代はもう古参女性たちの時代ではなく、大学を出た我々の娘たちの時代 であり、仕事のない若い女性たちの時代なのだから、と。古参者たちは、もう既 に充分な給料を受け取ってきたはずだというのです。

 これが古い勤労者に対する私たちの社会の見方です。しかもここで言う「古参 者」とは、伝説の人、アーサー・ウィンストン氏の半分の年齢でしかないので す。

 ともあれ、大学を出た若者たちには働く権利がありますが、それは、彼らの仕 事が今現在働いている人々の犠牲によってもたらされるのであってはなりませ ん。強制や圧力によるものではなく、古参者が自ら職を辞したいという場合の外 は。



筆者:ナジュワ ハーシム
サウジアラビア女性作家 

(2008年4月22日更新)

                

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