アラブを見つめて
 

【月曜の夢】



 数年前には、ラマダーンがやって来ても、その時期には学校の授業は行われま せんでした。そのため家族は子供たちを昼間好きなように寝させ、夜は好きなよ うに起きさせておいたものでした。

 ですから、子供たちは昼間は断食をしながら寝てすごし、夕方から翌朝まで ‐時には翌日の昼ごろまで‐は、断食明けの食事を取りながら寝ないで過ごして いたのです。そしてその世代は、ラマダーンの余暇と眠りに慣れ親しみ、彼らに とってラマダーン月の断食は、休みと結びついたものとなったのです。

 しかし近年になって、学校の授業がラマダーン中にも行われるようになり、授 業の期間がラマダーン月4週間のうちの3週間を下回らないようになりました。 いえ、それだけではなく、ここ何年かは学校のカリキュラムや授業が、失われる ことなくきちんと固定されるよう、ラマダーン月に試験の時期を設定するように なったのです。

 つまり、前期試験のことです。それは、ラマダーン中でも学生は欠席できない ということを意味しているのです。

 その上今年は、試験期間がラマダーンの最終日までに及ぶように設定され、そ れにより、登校期間の最終日まで、学生が欠席できるチャンスは全くなくなりま した。

 数年前までは、ラマダーンの最後の時期になると、学生も家族も朝寝て過ごし たり、勉強のことを気に留めなかったり、あるいはラマダーン中の概念‐つま り、ラマダーンは昼間に寝て、夜中起きていて食べるもの、という概念‐ゆえ に、多くの学生たちが授業をサボったものでしたが。

 それに、ラマダーンの最終日(*つまりイード休暇の前日)やイード休暇明け の最初の数日も、学校を欠席しないよう、厳しく指導されるようになりました。

 しかし問題は、状況が変わった今でも、昼寝と夜明かしと怠慢な習慣に慣れた 人々が、毎年決まってある噂を流すことです。文部相や政府が、ラマダーンは体 力的に疲れるという理由で、今年からまた、ラマダーン中は学校の授業を取りや めにするのだ、という噂です。毎年繰り返されるこの根も葉もない噂は、これま でそれが実現したことがないことなど気に留めず、毎年必ず現れるのです。

 ある私の同僚は‐彼女はそのような噂についての私の意見をよく知っているの ですが‐、恥じらいながら私に言いました。月曜日に閣僚会議が開かれ、国民へ の恩寵(*ラマダーン中の学校休暇や職場休暇)が発表されるはずだ、と。

 それに対して私が、「あなたはどうしてそれを知り得たの?」と訊ねると、彼 女はこう言いました。

「ほとんどの人たちがそれについて話していて、高校の私の生徒たちでさえそう 話しているわ。今日、女学生の一人なんか、私にしばらくのお別れだと言って、 挨拶までしにきたのよ。」

 私はその学生の「お別れの挨拶」に驚きました。その学生は強いてその噂に飛 び込んだのですから。しかし同僚はこう言ったのです。

「もしも恩寵が実現すれば、その学生はもう明日から学校に来ないのだし、テレ ビでそれが公表されるまでに、もう数時間しかないのだから。」

 私はそれを聞いて、思わず彼女にこう言いました。

「一体、いつからあなたはそんなことに関心を持つようになったの?」

 すると彼女はこう答えました。

「閣僚会議が招集されて、ラマダーン中の学校の授業は1週間に短縮されると、 中継で発表されるはずなのよ。だって、政府も人々がラマダーン中には体力的に 疲れて、仕事や勉強が良くできないことを知っているんだもの。

 それにラマダーン中にウムラ(小巡礼)の行をしたい人たちだっているし、勉 強ではなく、イバーダ(信仰行為)に没頭したい人たちだっているってことも ね。」

 そこで私は彼女にこう訊ねました。

「でも、今までにそんな発表があったことがあるかしら?」

 すると彼女はこう答えました。

「いいえ、なかったわ。でも政府は私たちの状態をよく知っているの。ここサウ ジでは、私たちはラマダーン中に勉強をするべきではないのよ。」

 ここでの問題は、噂が夢と合わさり、その夢を現実とすることに没頭すること です。私は、数日前に新聞で読者の投稿欄を読みました。そこには、文部相に対 して、ラマダーン中の授業を取りやめ、その代わりに夏休みを短くしてほしい、 と求めている意見が出ていました。人々はみな、聖なるラマダーン月を静かに楽 しみたいと思っているし、またイバーダ(信仰行為)に没頭したいとも思ってい る、と。

 しかしその数日後、私は新聞で文部相のこのような声明文を読んだのです。

<ラマダーン中の授業日数を短縮することで、これ以上学校の授業を損失する必 要ありません。ラマダーンは努力の月であり、怠慢の月ではないのです。>

 しかし、文部相の声明が出て、既に扉は閉じられたにもかかわらず、噂はまだ 流れ続けています。それは、有意義でないことのために扉を叩き続けることだと いうのに。閣僚会議が行われる月曜日が終わっても、噂は必ず続くのです。次週 の月曜日に開かれる閣僚会議への夢がまだ残っているのですから。

 楽天家の私の同僚がこう言ったように。

「今に決定が出されて、私たちはラマダーン中の勉強や仕事から解放されるわ。 そしてその時、政府は私たち国民の体力的な疲れや心配を感じてくれているん だって、私たちは思うことができるのよ……。」



筆者:ナジュワ ハーシム
サウジアラビア女性作家 

(2008年1月29日更新)

                

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