アラブを見つめて
 

【探求の危機は続く(1)】


 わが国で、詐欺師やペテン師の商売が盛んになったのは、近年この国の社会を 著しく侵している珍奇な文化の出現によるものに他なりません。彼らのそのよう な所業は、人々の助けを求める意識を媒介として、困難な現実や痛みへの処方と いう形で行われています。そしてその意識により、非現実的な夢が描かれ、時に は、現実の不安を追いやりたいという欲求を作り出すのです。

 一部の人々の終わりなき探求の危機が珍奇な文化を創り出し、現実逃避や現実 の厳しさからの解放を求めて、彼らはそこへと逃げ込みます。しかし問題の根本 は、この危機が、無学な人々や日々の暮らしに困窮する人々にかぎられてはいな いということです。医者が治せない病気を抱えたり、現実に立ち向かう気力がな い場合、そのような詐欺師たちが理想的な解決法を持っているのだと思い込む 人々が、他にも大勢いるのです。

 今も継続して実施されている警察の集中取締りでは、王国各地で数百人の詐欺 師が捕らえられ、彼らと共に数百万リヤルも見つかりました。彼らはみなサウジ 人ではなく、不法滞在の外国人です。彼らの顧客のほとんどが女性で、全体の 95パーセントにも及ぶと供述した者たちもおり、金銭目的で夫婦仲を裂く魔術 や詐欺行為を行う者たちもいれば、また、癌や不妊といった難病治療を騙る者た ちもいました。その上、治療の一環だとして、女性の顧客たちに醜悪な行為をし た者たちもいました。

 すべての災難において、私たちが詐欺師やペテン師を必要にするようになった ことが危機なのです。作家のイーサー・アル=ヒルヤーン氏は、ウカーズ誌のあ る記事の中でこう言っています;
「ある研究によれば、1000人のアラブ人に一人の割合で詐欺師が存在しま す。そして、50万人ものアラブ人が詐欺を生業にしており、この分野で費やさ れる金額は、年間で総額50億ドルにも上ることが確認されているのです。」

 この莫大な収益の主たちは、多くの場合、自分たちの生業を公に宣伝していま す。
 新聞や雑誌の広告によって、あるいは、アラブ諸国の人々の間ですばやく広ま る口コミや、彼らの生業を好み、救いを求める人々の後押しによって。また、い くつかの衛星放送局でも多くの詐欺師たちの宣伝に協力してきました。最近で は、薬草を扱う詐欺師、アル=ハーシミーのケースがあります。かつて、衛星放 送局のアル=ムスタクバルは、紹介者ザーヒー・ワハビーを通じてこの詐欺師を 招いてその詐欺行為を宣伝するべく番組を設けたことについて、謝罪をしまし た。この番組は希望を持ちたい人々が求める情報を紹介してきたのですが、その 事件以後、誰も番組の情報を聞かなくなったことも、災難でした。

 救いを求めて無為な探求に没頭する人々の数は増えており、その現象の増加に 伴い、被害者の数も増えています。
 最近では、私の友人でサウジアラビア人権協会の家族部門部長、アル=ジャウ ハラ・モハンマド・アル=アンカリー女史が紹介した若い娘のケースがありまし た。
その娘は病気治療をしていて、主治医の治療を受けて快方に向かっていたのです が、途中でその治療をやめてしまい、詐欺師の一人の許へ行ったのです。その詐 欺師はいくつかの薬草を彼女に処方したのですが、その薬は彼女の病状を完全に 悪化させてしまいました。それで彼女の主治医は、彼女についての調査を協会に 依頼し、助けを求めたのです。至高なるアッラーのご好意による彼女の治癒を望 みつつ。しかし、アル=ジャウハラ女史が以前記事の中で書いたように、詐欺師 の劣悪な治療と無学のせいで、その娘の状態は、筆舌に尽くしがたいものだった といいます。

 多くの人々がこのような詐欺師を探し求めてその門を叩く現実を考えれば、詐 欺師の側だけを責めるわけにはいかないことも多々あります。そのような治療行 為はみな詐欺行為であり、病状改善に無関係なのだといくら説明しても、それを 認めない人々もいるからです。それどころか、すべての困難な現実からの脱出は その人物と、彼に従ったことによってもたらされたものだと思い込む人も多いの です。

 また、鬱に襲われると、シャイフ(宗教の師や長老)の許へ行き、クルアーンを 自分に向けて詠んでもらうことだけが、唯一の治療だと思っている人たちもお り、彼らはシャイフの許へと通います。そして、鬱々とした気持ちの実際の原因 が消えて回復すると、その回復をシャイフと直結させて考え、彼こそ自分の治癒 や通常の生活への復帰をもたらしてくれたのだ、と考えるのです。

 高い教育を受けた男女の中にも、習慣として毎月シャイフの許へ行き、クル アーンを自分に向けて詠んでもらわない限り、安心できないという人々がいま す。
 試験を間近に控えた学生もシャイフの許へ行って助けを求め、痛みに苦しむ娘 もシャイフにクルアーンを詠んでくれるよう求め、結婚が遅れている娘も、夫が 他の女性に奪われるのではないかと懸念する女性も、より良い未来を探し求める 女性も、みなシャイフの許へ行き、彼からタミーマ(まじないの言葉を書いたも のなど)をもらいます。

 大勢の人々の求めに手が足りないシャイフたちと、薬草を扱う詐欺師たちとの 間で、私たちは、今尚学問の発展の外に取り残されたまま、この社会の扉の前に 立たされているのです。


筆者:ナジュワ ハーシム
サウジアラビア女性作家 

(2007年2月13日更新)

                

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