声と像
 

【声と像 6】



 私の娘は政治家と外交官の性質についてもっとよく知りたいようで、政治家や 外交官になるためには、どんな資格が要るのか、と私に訊ねました。

 政治の仕事につきたい者は就職希望申請書を出さなければならないのか? そ れは誰に、どのようにして出すのか?

 外交の仕事に就くには希望者の学位が求められ、それから他の希望者と共に空 きポストを得るための競争に入っていかなければならないことを、娘はよく知っ ているからです。

 そこで私は、政治の世界はすべての人々に開かれており、政治の仕事がしたい 者は、特定の公的機関へ申請する必要はなく、また特定の学位を持っていなけれ ばならないということもないのだ、と言いました。

 ただ、そこには満たされなければならない条件があるのです。それは、指導的 資質、志、社会問題についての知識、そして、自分の考えや意見で国民からの信 頼を得るべく、人々を納得させる力です。

 政治家は時に学者であったり、思想家であったり、エコノミストであったり、 メディア関係者であったり、また社会活動家であったりし、彼らは、国民や国の 地位向上への望みや強い意志、そして国の人的能力を向上させる取り組みのイ メージを持っています。

 また政治家は国民により良い暮らしを保障し、自国と世界の国々との間での公 正な経済取引を実現するため、国家の人的資源と天然資源との融合を促進する考 えや意見を持っています。そして、自国にその実行力や影響力を強める国際的役 割を望む冒険家でもあるかもしれません。

 ですから、政治家にとって最も重要なことは、自分の考えや意見によって他の 人々を納得させる力であり、人々がその考えを受け入れ、彼の指導下で働いてく れることです。自分の考えを実践の場に置くために。

 つまり、教育、社会、経済、安全保障といった国政を司る最高行政機関に自分 の考えを到達させるために、です。

 それによって、彼と彼の支援者たちは、政党制の国―つまり議会選挙や国家代 表選挙が行われる国―であれば、政権交代競争に参加する資格を得られるわけで あり、また単一思想国家であるなら、統治責任者に進言したりアドバイスを与え たりするために彼らに近づけるようになるのです。

 一方、外交官は、国外での祖国の代表者であり、自国の政府の代弁者であり、 政府の考えを国際的な催しで示す表現者です。

 ですから外交官には、自国政府に反したり、政策に反対したりする権利はな く、もしも自分に求められた仕事の実行が意に沿わないのであれば、退職しなけ ればなりません。そしてその後自分の力で、同じ意見を持つ政治家と共に働く か、または別の分野の仕事を選びます。

 それを聞いた娘は、かつてある私的なパーティーで出会った、定年退職後のア ラブの元大使のようではないか、と言いました。

 その人物はその席で、自国の大統領の政策を激しく批判しました。そこで招待 主が、以前その人物が国際的な集まりで大統領を支援して声高に演説し、大統領 を批判する者たちに異を唱えていたではないか、と当時のことを指摘すると、そ の元大使はにっこりと微笑み、こう言ったのです。

 かつて自分は政府に仕える身であり、自分の舌は大統領のものであったのだ が、退職した今では自分の舌は自分のもの、だから健正だと思うことを話し、 アッラー以外に畏れるものは何もないのだ、と。

 また娘は、彼女が注視してきたアメリカ合衆国の大統領選挙のキャンペーンに ついて触れました。

 前政権下の大使たちは、当選した新大統領政権下ではみな辞任し、新大統領が 自分の考えや意見に協賛する者たちの中から新しい大使を選んだことに気がつい たのだ、と。そして新大使の中には、元大臣や、各分野で責任ある地位にある政 治家たちが含まれていたことも。

 私は娘が国際的な出来事を注視していることを評価し、こう言いました。

「大統領の全権大使に任命されるような大臣や主要な政治家たちは、政治と外交 の仕事の両方を併せ持っており、大統領が彼らをその権威に任命している限りに おいてはその仕事を続け、大統領の政権が終われば、彼らのその任務も終わるの だ。

 それでも彼らは、自分たちの政治的帰属には目をつぶり、国民全体の利益を保 護しなければならないのだよ。

 それに、大統領がすべての全権大使を自分の支持者の中から任命する必要はな いのだ。大部分の大使は職業的外交官なのだよ。彼らは最初から外交の仕事を選 び、それから外交官としての階段を上り、最後に使節長の地位についたにすぎな いのだから。」

 娘は、政治家は政治パスポートを持ち、外交官は外交パスポートを持つのか、 と訊ねました。そこで私は、現在政治パスポートは存在しないと言いました。 すると今度は、外交能力を持つ人物が外交パスポートを持つことはできるのか、 と訊ねました。

 私はそれを否定し、例外として私が知るいくつかの王国の特例を挙げました。 それらの王国は、将来的に高位を用意されている特定の王族に対しては外交パス ポートを発行しており、彼らは公の仕事で海外渡航する場合には、それを所持す るのです。

 そして私的な旅行の時には通常のパスポートを持ち、仮名によるパスポートは 観光旅行などの時に用いられます。それは、マスコミ関係者たちの迷惑な好奇心 を避けるためのものです。王族の名を汚すようなセンセーショナルなニュースを 広めようと、彼らが王族の行動を追い回すことがないように。

 今夜の真面目な話は、就寝時間までの時を早めてしまったようです。イン シャーアッラー、またの夜に話ができることを願って、娘はいとまごいをしたの でした。


筆者:モハンマド バシール クルディー
前駐日サウジアラビア大使       

(2007年9月25日更新)

                

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2007年 アラブ イスラーム学院