声と像
 

【声と像 2】



 「子は育つ……」、私の小さな娘は、私と一緒に私が書いたものを読み返し、 それについてコメントをしては、時折更に詳しい説明を求めるようになりまし た。

 以前私は―娘に求められて―、外交官の仕事についての記事を書き、新聞に 送ったのですが、その後、彼女は、それについて更なる情報を求めて私のところ へやって来るようになりました。

 娘は以前、パスポートを更新するために、また、昨夏ある国への入国ビザを取 得しに推薦状をもらうために、何度も大使館に行ったことに触れ、そのような領 事部の仕事も外交官の仕事の一部なのか、そしてその仕事に携わる人たちもま た、外務省に所属しているのか、と訊ねました。

 娘が外交官の仕事について知ろうとするのは良いことだと私は思いました。そ こで私は、前回の記事の内容は派遣先国に関わる部分であり、それは外交の仕事 の一部である、と答えました。領事部の仕事は外交の仕事の別の側面で、それは 先の側面を補い、活性化するものなのだ、と。

 何故なら、領事部の仕事は、両国間の商業・文化交流に重きを置いており、そ の職員は、ビジネスや勉強や観光目的でその接受国を訪れる自国の人々に優先的 便宜を与え、その国での彼らの滞在や訪問が、有益で実りあるものとなるように 手助けをするからです。

『ここで私はある若者のことを思い出しました。その若者は、大学の授業に参加 するための条件を補いに、「素行優良」の証明書を求めて大使館にやって来たの です。その時、領事部の仕事を担当していた私の同僚はそれを断りました。何故 なら彼はその青年のことを知りませんでしたし、彼の過去についても何も知らな かったからです。

 すると青年はこう言いました。
「では、私が国王陛下の推薦状を持っているとしたらどうですか?」

 そこで同僚が、「その推薦状はどこですか?どうやってそれを入手したのです か?」と訊ねると、青年はパスポートを出し、その最初のページの下に記されて いるこの文章を読み上げたのでした:

<偉大なる国王陛下の名において、私(外務大臣または関係省庁の長)は、サウ ジアラビア王国国内で国務および軍務に従事する職員、また国外勤務の職員に対 し、また国王陛下の名の許に働くその他の権威、および外国権威に対し、この旅 券を所有する者に通行の自由を許可し、かつ同人に必要な保護扶助を与えられる よう、要請する。>』

 領事部に所属する者は、両国間の商業・文化交流を進める仕事をします。その 中には、接受国の人々に対し、自国への訪問を奨励したり、両国に利益をもたら す実りある協力のための機会を彼らに紹介することも含まれます。

 大使は接受国における自国の領事を任命し、全権大使としてその人物への信任 状を接受国の国家主席に提出します。そしてそれは、領事部の仕事の重要性を示 すもので、接受国における自国民の利益の保護権と、両国間の商業交流を促進す る自由を領事に与えるものなのです。大使は大使館員の中で、領事部の仕事に相 応しいと思われる人物を任命します。

 領事部の外交官は求められる形でその業務をこなさなければならず、自国民に 適切なアドバイスや助けを提供できるように、その国の外国人に関する法律や制 度、そして商業・文化・投資・所有に関する法律や制度に精通していなければな りません。

 また、サウジアラビア領事部の外交官には、更にもう一つ名誉ある仕事があり ます。それは、慈悲深きアッラーの客人(ムスリム巡礼者)に、接受国からの ハッジ(大巡礼)やオムラ(小巡礼)の旅を可能にし、そのために必要なビザ取 得を容易にして、巡礼の行の宗教儀礼についてのガイダンスを提供することで す。

 ここで娘は、「他にもまだしなければならないことがあるの?」と訊ねるの で、私はこう言いました。
「そう、あるんだよ。外交官は赴任先のすべての国で、一軒かそれ以上の家を持 つ努力をしなければならないのだ。」

 それを聞くと娘はこう言いました。
「それはものすごいお金持ちにしかできないことだし、第一、贅沢で無駄使いだ わ。だって外交官が前に勤務していた国にもう一度戻ることなんて滅多にないこ とだし、もし訪問したとしても、限られた日数にすぎないのだから。」

 そこで私はこう言ったのです。
「それはそうだね。でもその家々には費用は1リヤルだってかからないし、その ための使用人も警備員も管理人も要らないんだ。そこにはいつでも出迎えてくれ る開かれた門があるんだよ。どうやってだって?」

 それはごく簡単なことだ、と私は答えました。赴任先で多くの友人を得ること だ、と。友人たちの家はみな私たちの家であり、友人が増えれば増えるほど、私 たちは多くの家を持つことになるのだから。まさにそれを表している詩がありま す:

隣人よ   来るたびにあなたは我々を見出すだろう
我々は客人   そしてあなたはこの家の主人なのだから


マドリードにて―ヒジュラ暦1426年ラマダーン月21日



筆者:モハンマド バシール クルディー
前駐日サウジアラビア大使       

(2007年7月31日更新)

                

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2007年 アラブ イスラーム学院