シリアには携帯電話を期待してこなかったが性能はまあまあだし大きさも手頃 だ。街を見ると殆どの若者が持っている。私が一緒に住んでいる50代のおば ちゃんも最近購入した。サービスの使い方は2通りで、日本の様に毎月定額の基 本料を払う方法と、プリペイドカードをチャージしていく方法がある。私はプリ ペイド式を使っているが、ネックなのは使用期限が短いという点。おまけに使用 期限内に次のカードを買ってリチャージしないと電話番号そのものも無効になっ てしまう。しかし、携帯電話は特に若者の間でステイタスになっていて、普及速 度も素早い。
シリアにはもう一つ期待していなかった文明がある。インターネット電話だ。プ ロバイダーは色々で接続も良いし、どこのネット屋にも大概はあるので中々使え る。通話料も日本まで1分8円程とお手頃。祖国から離れて暮らす留学生にとっ ては有難いサービス。この点は日本よりも進んでいる。
シリアのファックス事情は期待したよりも悪かった。一般の人が使えるファック スは街の商店にも文房具屋にもなく、大手ホテルと中央電話局にしかない。更に ホテルでは1枚を送信するのに何と800円も掛かり、便利さからは程遠い。
シリアには住所も郵便制度も無い。言ってみれば手紙を配って回る郵便屋さんが いない。シリア人が自分の住所を示すときは「ダマスカスの▲▲地区の▲▲公園 前の4番目のビルの6階」といった感じ。日本人は郵便の受け取りに大使館の私 書箱を使わせてもらう。シリアでは公式な書類でも住所は適当で通るくらいだか ら、初めての場所に行くときやタクシーに乗ったときが大変。結局、近くまで行 ったら電話をして相手に迎えに来てもらう、なんてことが何回かあった。きっと そのうち住所はないままカーナビが出てくるのだろう。
シリアでは新しいものから普及して私達が「基本」とするものがない。こんな逆 さまな順番も古い(または予定された)仕事より飛び込んできた新しい仕事を優 先するシリア人らしい。シリアの構造は一体どうなっているのだろう?それが理 解できたらこの世は怖いものなしのような気さえしてきた。
(→バックナンバー)
(→週刊アラブマガジンのトップ)
|