遠くの近い国
 

【偏見との戦い―アラブからの歩み寄り】


中東はその名の通り西洋と東洋の間に位置している。言ってみればどちらからも近い。それにも拘らずその生活や文化は意外と知られてこなかった気がする。そんな中で新しい動きが見うけられる。それは世界に血生臭い出来事が続く中で平和への願いと共に起こった中東地域への関心である。興味の発端が何であれ、私はアラブを内側から理解しようとする動きが出てきた事は世界が新しい時代を生きている証だと思う。

ではアラブを取り囲む環境が変わりつつある中で世界が現実に打ち溶け合ったかというと、そこには次の課題があるように思える。それはアラブから世界への歩み寄りだ。私は戦いを仕掛ける側を正当化はしない。国際世論の操作に関しても否定はしない。しかし、中東に対する偏見がエスカレートした理由の一つにはアラブが自分達を表現する術を磨かなかったから、裏を返せば世界との協調性に欠けていたからだと思う。

それでは今の彼らに必要なのは何だろう?それは教育の強化だと私は思う。ここシリアの教育水準は高いと言われているが、今こそ彼らに必要なのは数学的思考、自己表現力、対人を意識した読解力と協調性を養う教育だと私は信じている。私が外国人としてシリアに住んでいて往々にして感じるのは一般の人々の民主的な考え方の低さだ。例えば、彼らは世界に住む人種が多様であれば生き方も考え方も多様だということを知らない。頭では分かっていても実際に理解できていない。まるで鎖国時代の日本のよう。シリアは保守的な国だし外国人との接点も異常に少ないから理解が遅れるのは分かる。しかし、多様化された価値観の存在を知ることすら今の彼らには必要で、更にその先それらと共存する作業が必要な気がする。

「発展はいらない。自由も民主化もいらない。欲しいのは安心して住める国とシンプルな生活だけだ。」とシリア人に言われてしまえば返す言葉はない。しかし、アラブの世界参加は避けて通れない気がする。それは彼らが望もうと望まずと、世界がアラブを放っておかないと思うからだ。教育は発展や民主化のためだけにあるのではないと私は思う。それはむしろ自分達の在り方を主張するためのものであり防衛である。だからアラブはアラブの為にも他国と協力し、良いものは外から学び、積極的に世界参加をして欲しいと思う。


執筆:白石美紗緒
アラブ イスラーム学院卒業生


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