アラブ社会
 

【サウジアラビア王国におけるテロリズム実情シリーズ4】


4.妻に対する夫の権利:

 アッラーがイスラーム教において夫と妻のそれぞれに定めた権利を考察する人 は、そこにアッラーの知識と英知、公正さと慈悲の完璧さを見出すであろう。至 高なるアッラーは最も完全な形で夫婦の生活が、また最良の状態で家族の生活が 営まれるべく、夫と妻それぞれに権利をお与えになった。私は前回の記事の最後 に、今回は夫に対する妻の権利から始めることを読者の皆さんに約束したが、夫 と妻の両者の権利を比較した後、考えを変えた。それは夫側の権利が、少ない ページの中の限られた項目の中で紹介ができるほど簡単だからである。それに比 べて詳細や正確さが求められる妻側の権利は、1つの記事の中では完全に述べる ことは出来ないと悟ったのだ。妻の権利の保護をイスラーム法が重要視している ことを見出す時、読者の皆さんは驚くであろう。夫の権利は結婚契約で始まり、 死か離婚という別離で終わるが、妻の権利は結婚による両者の結びつきの前に始 まり、離婚による別離後まで続く。これらの理由全てからまず夫の権利の紹介か ら初め、それから終わりの無い妻の権利に関する話に専念するとしよう。

 妻に対する夫の権利は11の権利に要約することができ、それらは以下の通りで ある。

1−妻に対する夫の権利の重要視:

 これは、妻は夫に対する義務の履行と彼の満足のために最大限の努力を費やさ なければならないという意味である。つまり夫こそ彼女に栄誉を与え、妻を夫の 家の主婦とし、女主人とし、家族の中での地位を彼女に与え、また彼の財産や子 供や名誉を彼女に預け、彼女と彼女の子供たちのための財産取得に奔走し、出来 る限り彼女と子供たちを悪事から守り、それ以外にも女性の本質として彼と共に あることで安らぎや安全や安堵を感じる人物だからということである。

2−至高のアッラーに反抗しない範囲において妻が夫に服従すること:

 妻は夫に服従しなければならないが、これは彼女を卑下しているわけではな い。また、もちろんこれは妻が夫と協議したり、彼女の意見や考えを述べること を否定するものでもない。しかし自分の要求を通すことを好むことはそのように 創造された男性の本質なので、賢い妻はまず最初に夫に服従し、彼の意見への同 意を示す。そして夫こそ決定権を持つ者で彼の言葉がより上であるということを 確定させ、夫の心の中で「男の威厳の嵐」が静まれば、妻は英知によって、夫へ の意見の押し付けではなく、参加・提供という意味で、彼女の意見を述べ始める ことが出来るのである。
 皆さんに正直に言おう。私が自らの経験と多くの夫婦生活の問題、そして夫婦 間の長い議論の後、親愛なる夫の愛情を得、それから彼の満足する決定にともに 到達するためには、この規則を実践すること以上に良い解決法を見出さなかった ことを。

3−夫を害することを避ける妻の義務:

 この中には人々の間でよく知られていること全てが含まれる。彼の権利として は、例えば、綺麗な格好や良い香りの妻を目にすること、家が清潔で快適な状態 であること、食欲をそそる食事ができあがっていること…などがある。そして私 はこの権利が夫婦間に共通の権利であると読者のみなさんに明らかにする義務が ある。だから夫も妻を害することを避けなければならない。女性たちに義務であ るように男性たちにも女性たちへの義務があるわけである。

4−妻が夫の家に滞在し、夫の許可無しに外出しない義務:

 夫への義務や子供たちへの教育や面倒を見ることなどの義務を果たすために家 に留まることは、妻の義務の基本である。もちろん彼女には必要なことや気分転 換のため、時として必要に応じて外出することが許される。しかし不道徳なこと を避け、彼女に降りかかるだろう問題を回避するため、夫に報告した後で外出す ることが妻の義務である。これは妻の個性の軽視や自由の妨害ではない。なぜな ら夫は家から遠いところで常に仕事に追われているのだ。ある日次のようなこと が起こったとしよう。夫が普段とは違う時間に病気か何か他の理由で家に戻った が、妻は家の中にいなかった。もしこの時この一家を嫉妬する者や憎む者と遭遇 し、彼が夫の妻への疑惑や彼女が不道徳なことのために外出したのだと言う疑惑 を煽ろうとしたら、一体どうなることであろう?二人の間の信頼がどんなに大き なものであってもこのような疑惑や、あるいは離婚にいたる状況は免れないの だ。だから妻が外出の許可を取ることや、夫が妻の行動を把握することはこのよ うな状況において賢い方法である。そうではないだろうか!?

5−妻が夫の好まない者を家に入れないこと:

 これは妻の親戚であろうと夫の親戚であろうと同じである。イスラーム教徒の 女性がこの預言者の導き―つまり妻が夫のベッドの上に誰も横たわらせず、彼の 家に彼が好まないいかなる者をも入れないこと―と、彼女が履行すべき他の権利 を守るならば、家族の安全は頂点に達するであろう。

6−妻が子供の教育を行うこと:

 この項目は夫の家における妻の最も重要な仕事である。家族生活はこの仕事無 しでは安全で安心ではありえない。この仕事における母親の役割は父親のそれよ りも重要である。これに関し、預言者は次のように語っている。「女性は彼女の 夫の家の者と子供の責任者である」

7−妻が夫の良いところを認め、彼による恩恵を否認しないこと:

 夫の仕事には、家の外で生活の糧を得ることや家の中での家族の監督や様々な 家族の要望の調整の試み、生活上の物事で妻に十分なものを与えることなどがあ るが、もし夫が不在であれば、これらのことは彼女を大いに疲れさせるし、重荷 となる。同様に夫が妻に対して行う良いことには妻は感謝すべきであり、その恩 恵を認めるべきである。

8−夫の財産を守りそれを浪費しないこと:

 夫が彼の財産を預けるのにより相応しい人々は彼の家族である。だからもし妻 が彼の財産をしっかりと守り、浪費や必要外の物に費やさなければ、夫は彼のも とにある物全てに関して安堵する。もし彼女がそうではなく、夫が苦労して手に 入れた財産を彼女の愚かさから浪費してしまうならば希望はなくなり、最も安全 で安堵できるべき場所にある彼の財産を心配しなければならなくなるのだ。

9−法的に妻との結婚可能な者と二人きりにならないこと:

 妻は彼女を安全であり、彼女の尊厳や高貴さを守るマハーリム(夫・親兄弟・ 叔父・伯父など)以外の者が自分と二人きりになることを許してはならない。特 に疑いや腐敗や禁じられた行為を導く恐れのある彼女の親戚たちや彼女の夫の親 戚たちに対しては尚更である。預言者はそれについて次のように警告した。「義 兄弟たちは死である。」

10−夫への同情と彼を喜ばすこと:

 夫は家の外で苦労や困難に遭遇し、人々との接触で疲労する。また仕事で困難 に遭ったり、その処理に追われ、怒り、悲しんだりしているかもしれない。そし て疲れ、あるいは憂鬱な気持ちで家に帰るかもしれない。だから妻は夫を微笑み と愛情で彼を迎え、遭遇した困難や問題に対して彼をいたわり、家に安らぎと愛 情と慈悲が生じるべく、彼が安堵と静けさを得られるよう助け、その時々に応じ て相応しい方法で彼と接すべきである。妻の夫への同情と彼への配慮の素晴らし い例の一つに、ウンム・スライムがアブー・タルハ(訳者注:いずれも預言者時 代の教友)に、彼らの息子が亡くなった時にこう言ったことがあげられる。以下 はアナス(訳者注:預言者時代の教友)が伝えた通りの二人の物語である。『ア ブー・タルハとウンム・スライムの間に生まれた息子が亡くなった。するとウン ム・スライムは、自分からアブー・タルハに息子の死を告げるために、彼女の家 族に彼にそのことを告げないように言った。』アナスは言った。『アブー・タル ハがやって来たので彼女は夕食を出した。アブー・タルハは食べ、飲んだ。それ から彼女は今まで以上に彼に尽くし、一緒に寝た。彼が満足したのを見ると、彼 女は言った。「アブー・タルハよ、ある者たちが家族から物を借り、家族がそれ を返すよう求めた場合、彼らはそれを禁じることができますか?」アブー・タル ハは言った。「いいや。」そこで彼女は言った。「あなたの息子にそれを当ては めて下さい。」すると彼は怒った。アブー・タルハは言った。「彼女は私が落ち 着くまで私を放っておいた。それから私の息子の死を知らせた。」そこで彼は預 言者のところへ急ぎ、彼に起こったことを知らせた。すると預言者はこう言っ た。「あなた方二人の夜に起こったことに関してあなた方に祝福あれ。」』

11−アッラーが定めた範囲において彼が家族の長であることに妻が満足すること:

 すべての集団には相互の結びつきがあり、そのメンバーは、忠言や指導を必要 とすることが彼らに起こった時に彼に助言を求めたり、意見の相違時には秩序が 失われたり、相違がそのまま根付き、物事が正しくなくならないようにするため にも、彼らの争いを解決する後見人を必要とする。そのため滞在時や旅行時にお いて彼らの生活を整えるために、メンバーたちはリーダーの存在が必要となるわ けだ。旅行者たちが例え彼らが3人であってもリーダーを必要とするならば、家 族は旅行者以上に、長期間1つの家で互いに暮らすために、必要時には各人が頼 るところのリーダーを必要とする。そして女性にはおそらくない、あるいは大抵 余り認められないところの特徴において男性が優れ、女性は男性が持っていな い、あるいは大抵認められないところの特徴に関し優れているため、アッラーの 英知はそれぞれに相応しい立場を与え、それぞれに可能な役割を与えたのであ る。

 女性は、イスラーム法と慣習において求められる出産のための肥沃な土地であ り、また家族や子孫がそこに安らぎを求めるところのオアシスでもあり、子供た ちが教育される保育園でもあり、また、家の小さなあるいは大きな子供の必要に 素早く答えるところの、愛情深い母でもある。またもともと、女性は家の清掃や 整理の監督・家族全員が快適であるための準備のため、家に残るよう創造されて いる。それゆえ彼女の仕事は妊娠・出産・授乳・子育て・彼らにとって必要なこ とを行うこと・家族の他のメンバーと協力しながら掃除や食事や看病などの様々 な家事をすること、などと彼女に相応しいものとなっているのだ。

 彼女の理性や愛情や肉体的な能力は、大抵これらの仕事に適していることは周 知の事実である。そのため彼女には「主婦」という呼び名がつけられたのだ。

 男性に関して言えば、困難に対する忍耐・敵との闘争・家族の保護・家族の請 願への応答・旅行や大地を歩く困難への忍耐とともにアッラーから肉体的・理性 的な強さを与えられ、他の仕事を行うよう創造された。それゆえアッラーの英知 は、家の外から家族の必要な物を手に入れてくること・糧を得る努力・大地の耕 作や道具の製作や商業や売買のための取引・住居の建設や、諸道具や設備の維持 など、大抵困難がつきもので、彼に相応しいところのものを彼に課すことを要求 したのである。

 女性には一般的に女性の特徴があり、男性には一般的に男性の特徴があるた め、アッラーは男性に家長の地位と家族の一般的な指導権を与えた。それは男性 が女性より適しているからであり、より家族の心において威厳があるからであ る。彼こそが浪費することなく家族を養う者であり、命令か禁止かの必要に迫ら れた時にその決断を下す者である。また彼こそが家への人の出入りを取り仕切る 者であり、掟を犯す者に対して法的あるいは慣習的見地から対処する者である。 そして彼は、彼の欲望や支配欲によってこれらの事々を取り仕切るのではない。 アッラーはこう仰られた:「男性はアッラーが彼らを女性より優らせた物事にお いて、そしてまた彼らの(扶養などの)尽力において、女性より上なのであ る。」(女人章:34)

 しかしこの男性の指導権、地位というものは、決して彼が家族の他の者に足か せをはめ、彼らを専制的・圧制的・強権的に支配するという風には理解されな い。特に女性は家庭において活発であり、彼はそこにおいて単なる指導的立場に あるだけである。そして例え女性が指導を受ける立場にあったとしても、男性は 彼女の意見に耳を傾けなければならないし、時にはそれを認めなければならな い。そして家庭の福利のために彼女と協議し、そこに到達するために英知をもっ て互いに助け合わなくてはならない。また男性は女性の仕事全てに口を出すべき ではなく、彼女は彼の地位が及ぶことのないこの境界線に満足しなければならな い。もし男性と女性がこのやり方に則って人生をともに歩むならば、家庭生活は 正しいものとなり、議論によって分裂や崩壊へと導かれることはなくなるであろ う。しかしもし夫婦間で家庭内の指導権をめぐって競争が起きたら、あるいは片 方がその権限もなくしてもう片方の諸事に割り込んで来たら、それは分裂や反 発、混乱や不安定などをもたらすことになる。

 ここに挙げたことが、夫の妻に対する権利のうちの主たるものである。そして それは大方のところ、サウジアラビア王国の女性の心の中に幼少の頃から植えつ けられるものである。彼女らは成長し、結婚し、それらのことを可能な限り実践 する。そしてそれは彼女らの結婚の安寧と安定、そして夫婦どちらも落ち着きと 愛情と慈悲の念を感じていられることへの保障となる。ここから全ての家庭の平 安は始まり、そしてこのような家族から社会が成り立つのである。

 次回は妻の夫に対する権利についてお話しよう。もし読者の皆さんがここで読 まれた夫の妻に対する権利が余りに多く、困難なものに思えたとしても、次回の 文章を数行お読みになれば、サウジ・イスラーム社会において女性がいかに多く の素晴らしい権利を与えられているか目の当たりにすることであろう。それでは その時まで、アッラーが皆様をお守りになられるよう。


筆者:ラシャー マンスーリー
アブドルアジーズ国王大学元研究員

                

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