アラブ社会
 

【ある日本人女性との対話】


 イラクで3人の日本人が拘束されたとのニュースが流れた時、日本全国を混乱 が埋め尽くした。そしてこの混乱の大海の中、ある出来事が起こった。ある日本 語教師の日本人女性がある日の午後、私を彼女の家にお茶に招待してくれたの だ。そして色々な事について話すうちに、拘束された日本人たちのことが当然の ことながら話題に上がった。そしてこの話題に入るや否や、女性教師は多くの 人々の頭の中を巡っているであろう質問を私にぶつけた。彼女は言った:「テレ ビでイスラームは戦争や殺人を引き起こすと聞いたけど、それは本当なの?」

 私は言った。「どうしてそんな風に思うの?」彼女は言った。「テレビの ニュースで兵士たちが“アッラー”の名を唱えていたし、イスラームのために彼 らを殺すって言ってたわよ。」私は言った。「偉大なるアッラーは殺人や破壊な どをお悦びにはならないし、アッラーが天から下されたイスラームの教えは、 人々を抑圧したり権利を蹂躙したりすることなどから無実なのよ。でもそこには ちょっと紛らわしい事があるから、それを2点に分けて説明してあげる。まず第 一点:全ての人の言う事が正しいとは限らないっていうこと。だからイスラーム を標榜したり、イスラームの名の下に戦う人たちがいても、彼らの全員が正しい とは限らないの。彼らの中にはイスラームを名前でしか知らない人もいるし、義 務も殆ど果たしていない人もいるけど、例えにあるように“一石二鳥”を狙って いるある種の人々の根も葉もない話や陰謀を含んだ言葉に騙されているのよ。彼 らはイスラームの力を若者たちや無知な者たちを笑い嘲るための手段にしている の。そうして彼らを過酷な場所で利用して望む者を殺し、また一方では一般人の イスラームのイメージを矮小化しようとしているのよ。私はそいつらに言ってや るわ。“おめでとう、あなたたちは成功しているわよ。”そして彼ら若者や無知 な人たちにはこう言ってやるわ。“恥さらし。ムスリムに不名誉を着せて、無知 と軽率さでイスラームを貶めるようなことをして。”」

 女性教師はここで私を遮った。そして半ば躊躇した様子で慎重に、こう言っ た。「そう思ってた。イスラームが戦争や殺人を引き起こすはずなんてないと 思ってたわ。」私は言った。「失礼、でもそういうわけでもないのよ。答えはい らないから1つ質問をさせて。国に敵が攻め込んで来たら、どう対応する?敵は 土地や子供や資源、ひいては人間にとって最も大事な“平和と安寧”を略奪して いるのよ?“降伏”なんて答えなんてありえる?母国を敵の望むままに国を放棄 するなんて、理性や論理に合ってると思う?そんなはずないわ。」(女性教師は ここで頷いた。)

 さて、これが理性と論理の回答なら、イスラームという教えは論理と正義に最 も適った教えである。前回に述べた諸権利を個人に保障し、その問題を仔細に 渡って配慮する教えなのである。それゆえいかなる場合においても、敵にその権 利を渡してしまってはいけないのだ。

 この状況においてイスラームは戦争と戦いを命じ、生命と土地と宗教など全て のものを防衛する義務に駆り立てる。アッラーはクルアーンの中でこう言ってい る:「アッラーとあなた方の敵を恐れさせる(タルハブーン)軍馬と戦力を もって、彼らに対して可能な限りの準備をせよ。」つまりアッラーのこの命令は 戦争だけに限らず、軍隊や武器を準備することによって、敵が戦争を仕掛けてこ ないように“恐れさせる(タルハブーン)”事も含んでいる。そしてテロリズム (イルハーブ)という言葉こそは、この啓典クルアーンにも言及された“恐れさ せる(タルハブーン)”という言葉の語源なのである。しかしその意味は、イス ラームに害悪を望んだ者たちが広めたところの意味ではない。

 こうして見れば、迫害されたイラクの民が侵された権利を防衛することは当然 のことではないか?20年も前から占領され放逐されたパレスチナの民が、10 万人もの死者のために反旗を翻すのは、彼らの権利ではないか?」
ここに書いたのは会話の一部分で、少しの付け足しもした。付け足しは文章のあ やによるものだが、読者には誠意を尽くしたつもりだ。

 さて最後に、親愛なる読者よ。お別れの前に・・・私が望むのは私の努力と労 力があなたによって評価を受けることだ。私が一字一句に誠意を尽くしたことを 知ってもらうことだ。そしてまた、私がここで特定の個人や集団を弁護する気も ないことを知ってもらいたい。私は敵から抑圧されている社会のために、ただ本 当に激しく心を動かされているのだ。そして無知な者たちが破滅に導こうとして いる宗教を、命をかけて守りたいのだ。繰り返し言おう。私の貴い祖国サウジア ラビアはこれらの流血からは無実であり、これまでもそしてこれからも、テロリ ズムを扇動したり援助したりすることはない。正義の教えイスラームは、破壊さ れた家、焼かれた木々、占領された土地、流される無実の血などから無実なので ある。


筆者:ラシャー マンスーリー
アブドルアジーズ国王大学元研究員

                

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