アラブ社会
 

【サウジアラビア王国における現代麻薬事情2】


この問題において、マスメディアの影響は無視できないものになっている。特に アラブのマスメディアは麻薬中毒問題を助長し、それどころか麻薬取引を推進し ているように思える。マスメディアはこの危険な現象に対して立ち上がり、反対 キャンペーンを行ったが、社会学の研究はこの媒体―特にテレビ―による麻薬中 毒問題反対運動の中に危険な欠陥を発見した。アラブ、欧米に関わらず、テレビ が麻薬中毒者増加に大きな役割を果たしていることを発見したのである。その理 由は沢山あり、かつ多岐に渡っている:

(1)その番組の中に、社会問題を誘発する明白な原因を認めることが出来る。 その筆頭は社会階層を高い壁で区切り、社会における貧困層に挫折感や欲求不満 を植え付けてしまうことである。つまり若者の番組においては高い社会階層の若 者しかカメラの前に映らず、他の階層とは無関係な、彼ら特有の問題を話すだけ である。貧困層の若者といえば、このような番組において気張らし的な役目を与 えられるだけで、彼らはカメラに映る若者たちと自分たちとを一線で分ける社会 的圧力と物質的力の実感を募らせるだけなのである。そして彼らの社会への復讐 心は募り、そこから孤立しようとする傾向が生まれるのだ。

(2)アラブの若者向けテレビ番組には模範となるべき真面目で良い番組がな く、その代わりに欧米社会的な向きのある番組が多く、悪影響も多い。それは現 実から背いて反抗することを誘発するものであったり、様々な種類の麻薬を使用 して空想上の新しい世界を探求するものであったりする。これらの筆頭が196 0年代のヒッピーなどである。

(3)連続ドラマや映画、演劇などの中の場面には、麻薬の摂取を促すようなも のが多くある。その内のいくつかを取り上げてみよう。

A.困難を克服するための手段として麻薬が多く取りざたされている。主人公は どうにもならない問題に直面した時、バーに入って酒を飲んだり、麻薬の注射を 打つことによってそこから逃れようとする。主の御許に御加護を求めたり、知者 に助言を求めたりすることもなく。

B.麻薬常用者が麻薬を手に入れた際の幸福な気分の状態の描き方に、誇張があ る。それゆえ苦境にある者たちの多くは、麻薬こそが彼の苦痛や心配を乗り越 え、幸福と快楽の世界へと彼を導く唯一の手段ではないかと誤解してしまう。例 を挙げれば、麻薬を手に入れる場面は映画やドラマにおいて非現実的な悦楽や安 堵と結び付けられており、視聴者は例え常用者でなくても、それを味わってみた いという欲求に駆られてしまう。

C.多くのドラマの場面において、麻薬摂取と性描写がともに現れる。これによ り多くの若者は麻薬の世界へと強く刺激付けられる。それは、ありとあらゆる種 類の禁じられた快楽の世界の入り口を意味しているので。

D.多くの映画やドラマは麻薬常用者を主人公とし、一般大衆が彼と一身になっ て彼の体験を味わう。時にはそれはスーパーマンに近い姿で描かれ、社会的・個 人的に罪深い彼の人となりに対しては何の批判も向けられない。人々の彼への同 情は、彼の歩んだ道を歩ませる動機となり得ないとも限らない。

E.麻薬の道に足を踏み入れた者の多くが麻薬中毒者の道を歩むという結果にな るにも関わらず、その末路は麻薬摂取のシーンで視聴者が目にした酩酊と快楽の 時間に比べて刹那的なものに映る可能性がある。このことは主人公が味わった快 楽のみに注目した視聴者に、麻薬を常用することで行き着く先の結果を忘れさせ てしまうかもしれない。そして麻薬中毒者が直面する社会・精神・仕事上の悪影 響について深くえぐり、数分の快楽と引き換えに失うものの大きさを実感させる ような描写というのはまず見られない。

F.上記に挙げたもの全てに優って危険なもの。ドラマのある場面では、若者た ちに家族や社会、権力の監視を逃れて麻薬を手に入れる新しい手段を提供してい る。そし多くの麻薬中毒者たちが、逃亡や身を隠す方法をドラマから学んだ、と 告白している。

(4)最後の感想は、テレビの真面目な番組の制作が脆弱かつ劣悪なもので、若 者たちの口には合いそうにもないものであること。訓戒や福音といったテーマの 番組は、訓戒など聴かずに自ら体験したい若者たちの本性には合わず、ごく特別 な人たちだけが視聴する番組になってしまっている。本来の対象であるはずの若 者たちは、全く別の場所にいるわけだ。これは宗教番組、健康番組、教養番組、 社会番組などについてもあてはまる。

これらアラブ世界、そして全世界をとりまく憂慮すべき事実とは別に、喜ばしく もサウジにおける麻薬の密輸・流通の成長割合は他国に比べて非常に低い。そも そも麻薬の被害はサウジにおいて現代において初めて認められたものである。こ のことは、1975年にジュネーブで犯罪防止のために開かれた国連会議の文書 の中でも取り上げられている。そこにはこう述べられている:「サウジ社会はご く最近までカート(訳者注:噛みタバコの一種)以外、麻薬らしいものを知らな かった・・・」

サウジ政府はこの現象に大きな注意を払い、その撲滅・防止キャンペーンに多大 な努力を払った。そしてその抑制のための法律を敷き、専門機関を設置し、キャ ンペーンを成功に導くべく最新の設備で継続的な発展を試みた。そしてサウジア ラビア宗教学者評議会の合議のもと、内閣はその決定を実践に移すことを決め た。それは主が「地上に腐敗を広める輩」とクルアーンで語ったところの者への 刑法を、麻薬密輸者たちにも当てはめるという合議であり、つまりは死刑であっ た。そして麻薬売買人にも同じ決定が下された。この懲罰の実践は、麻薬の密輸 及び流通の減少に少なからぬ影響を与えた。

サウジ政府の努力はこれだけに留まらなかった。つまり現行している問題の撲滅 に関して果たすべき義務を施行すると同時に、確実な結果をものにするためにア ラブ世界との連携を強化した。この分野におけるサウジの重要な実績として次に 上げるような点がある:

* 麻薬撲滅のための国連基金への寄付。

* 麻薬撲滅運動機関の総会にアラブ連盟の最高監査として継続的に参加。

* サウジ麻薬撲滅運動本部を運営し、世界中にあるその支部を通じて他国の機関と相互援助し、麻薬の密輸や流通業者の計画を壊滅させる。

* 麻薬撲滅運動に関して近隣諸国と相互協定を結び、継続的な会合と情報交換を実施するなど・・・。

このようにサウジは麻薬の害悪と拡散を強い関心をもってとらえ、まずその原因 と影響、問題の根本的解決法などについて専門的に研究し、それからこの疫病駆 除に対しての政府機関を設置した。サウジの麻薬中毒者に対しての介護治療など における努力については、主の思し召しならば次回お話することになるだろう。

最後に。私はアッラーに、青年たちを悪事から守って下さるよう祈る。そして全 ての国をこの害悪から守り、私たちに常なる心身の健康を与えて下さるよう、 アーミーン。そして私たちの長ムハンマドに祝福と平安あれ。


筆者:ラシャー マンスーリー
アブドルアジーズ国王大学元研究員

                

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2006年 アラブ イスラーム学院