日本のシンドバッド
 

【イエメン篇】
 

アラブといっても湾岸諸国には昔の面影は全く無い。高層ビルが立ち並び近代化された都市へと変化しているが、ここイエメンに関しては別で昔ながらの街並みや建造物がいくつも残っている。そういった面での「アラブらしさ」というものを見てみたいなら、やはりイエメンに行くしかないだろう。

私がイエメンに行って思ったのは、イエメン人の中でも出身地やら部族が違うと気質までがずいぶん異なるということだ。僻地の山岳部族などはどうも血の気が多かったりする。しかもこの国には銃刀の所持を規制する法律がないのか、腰にはジャンビーアという短剣をぶら下げ、また一部の人達は重たそうな古めかしい銃を携行しているという光景にしばしば遭遇した。まあジャンビーアはほとんど飾りのようなもので、あるスークでは果物ナイフのかわりにスイカを切るのに使われていたのを見掛けた。

銃にしても日常的に発砲することなどないが、ここ数年、外国人を狙った誘拐やら殺人事件が多発しているというのもよく聞く話で個人旅行には困難が伴う。そして大抵の場合パーミット取得という面倒なことをしなくてはならない。それは必要に応じてツーリストポリスで発行してもらうのだが、如何せんこの国の情報伝達のことである。ツーリストポリスでは「そこに行くのにパーミットは必要ない」と言われ、いざバスに乗ろうとすると「パーミットが必要だから、取ってこい!」とまあこのような具合になるのはしばしば。その度に怒ってもイラついてもどうにもならないので、状況の流れに任せるしかない。またパーミットを取らずに旅していた時などは乗り合いタクシーでの長距離の移動の際に検問で揉めないよう、アラブ服に身を包みゴトラを頭に巻きつけ布を半端に顔にかかるように垂らし、あたかも現地人のふりをしてやり過ごしたものだ。

また時には護衛のポリスを付けられたこともある。それもまあ口うるさいもので、一人でホテルから一歩も出るなと始まり、しまいには寝るときも一緒ということに……あぁ、どうしてこんなオヤジと寝なくてはいけないんだ。もしこのままイエメン滞在中、護衛という名の監視が続いたらどうしようかと思った時にはかなりげんなりした。これはアル・ガイダという町での出来事なのだが、別の町に移動すると言うとやはりバス乗り場まで付いてくる。観念してバスに乗り込んだら「じゃあ、マアッサラーマ〜」と送り出してくれ、ほっと胸を撫で下ろしたものだった。

物騒なことばかり書き散らしてしまったが、基本は皆親切なアラブ人。建物や町並みといった目に見えるものだけでなく、信仰やイフサーンといったものも大切に持ち続けているように思える。彼らにはそういったものを失ってもらいたくないものだ。

執筆:石和田 宏志
アラブ・イスラーム学院卒業生

                

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