日本のシンドバッド
 

【エジプト篇 その2】
 

私はカイロ滞在中、市内の中心部といえるタハリール広場から少し離れた「スーク・タウフィキーヤ」にある安宿に泊まるのが常である。個室、相部屋とで値段は違うが、一泊6〜15ギニーくらい。お世辞にもきれいとは言えないが、共同のキッチン・シャワー・トイレがあり慣れてしまえばなかなか快適な生活を送ることができる。まあ5年も連続で行っていると宿の従業員、スークの店の親父さんなんかともすっかり顔馴染みであり、ひょっこり顔を見せると「今度はいつまでいるんだ?」など世間話がえんえん続く。このスークの中には野菜やら果物やらを売っている24時間営業の店もあり、そういう店は家族ぐるみで店番をしていることが多い。しかし買い物する上で定価が無いのは大きな問題である。メーカー希望小売価格というのが、どうも存在しないみたいなのだ。しかもここ最近、為替相場におけるエジプト通貨の価値はどんどん下がっていて、それに伴い物価が徐々に上昇している。そういった中では店により値段が違うということもしばしば。まあ中には観光客相手だからと、悪徳ぼったくり商店もあるようだが。

また八百屋などでは野菜をキロ単位での販売をしているものの、私のように1人で滞在している者は「バラエティーパック」ということで欲しい物を必要なだけ袋に詰め込み、店の親父さんに渡して値段を決めてもらう。しかしこれまたどうも値段の決め方がアバウト。いくら野菜は時価だといっても、1日や2日でそうそう値上がりするものではない。なのに、なんだか今日は高い…とか、安い…などと思うことがある。でも仲良くなってしまえば「トウガラシ1本ちょうだい」なんて気軽に頼めたり、ニンジンをおまけにつけてくれたりなど、まるで昔の日本の下町のような光景ではなかろうか。私はこのスークのとある八百屋の若旦那、フセインからしきりに「一緒に仕事をしないか?」と誘われ、「朝の7時から12時間、1日3ポンドでどうだ?」と条件を提示された……3ポンドとは日本円で約60円、つまり時給換算するとたったの5円である。「いやいや。アラビア語の勉強が忙しいから…」とその場を離れようとすると、「それじゃ4ポンド、いや5ポンド出す!」といった具合にまくしたててきた上、私にガラベーヤまで着せようとするので、しまいには逃げるようにその場を立ち去ったものだが。その後、顔を合わせるたびに「仕事をしないか?」と声を掛けられるのは言うまでもない。それにしてもエジプトの野菜はどれも出来がいい。おそらく農薬たっぷりの化学肥料たっぷりといったところなのだろう。国で厳しく規制しているとは思えない上、エジプシャン達がそういったことを気にしているとも思えない。しかしまあ細かいことを気にしてはエジプトでは生きていけないのだ。さて、先述の買い物に関してだが、カイロ随一のスーク、ハーン・ハリーリの土産物屋でのバトルはなかなか根気がいるものである。最初の言い値が相場の5倍、6倍などということは当り前。私の場合はムスリムだからということで、かなり安くしてもらえたこともある。

執筆:石和田 宏志
アラブ・イスラーム学院卒業生

                

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