読者の声
 

【イスラームは女性を差別しているか(1)】
 

1.イスラームの一夫多妻制度について

私がイスラームとその世界について初めて学んだのは、おそらく高校の世界史の授業の時であったと思う。そこでイスラームは一夫多妻の宗教であるということを知った。一夫多妻は、かつての日本でも時の権力者に普通にみられた制度であり、私はこの制度は大嫌いであった。従って、その時点で私はイスラームに好感は持てず、私には全く関係のない宗教だと思い、それ以来ほとんど関心を持たなかった。それにつけ加えるならば、私はキリスト教も嫌いだった。何故なら、"女は男からつくられた"などという女があたかも男の附属物であるかのような教えには納得がいかなかったからである。しかも"唯一神を信じないと地獄に落ちる"という人をおどすような宗教は好きにはなれず、私はつい最近まで一神教は嫌いだったし、宗教について深く考えたこともなかった。何故なら、唯一神について考えなくとも、私は半世紀以上にわたって十分に幸せな人生を送ってきたのだから。

ここで、人間の婚姻関係について少し考えてみたいと思う。法的に認められているかどうかは別にして、およそ人間の婚姻関係として、一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫、さらに、同性婚、多妻多夫などが考えられる。その実態については私には分からないが、ここではこの文章のテーマでもある前二者について考えてみたい。これらの多様な人間の婚姻関係のうち、キリスト教は最初の関係のみを制度として認め他は認めないが、イスラームは前二者について制度として認めている、ということになろう。

まず前者について、この制度は広く一般的であり、男女対等の婚姻関係であると考えられている。しかしながら、現実の社会を見てみると、夫の家庭内暴力によっていためつけられ、女性の尊厳を奪われている妻たちが多数存在している。これは氷山の一角だろう。程度や質の違いこそあれ、一夫一妻制度のもとで妻が夫に差別され虐げられている家庭が実際にどれだけあるのか私には想像もつかない。つまり一夫一妻制度は、決して男女平等や女性の尊厳が守られることを保証するものではないのである。

一方、一夫多妻制度はどうだろうか。この制度はかつて私も大嫌いであったし、広く女性差別的な婚姻関係であると考えられている。しかしながら考えてみよう。ある一組の男女が結婚する。しばらくして夫がもう一人妻を持ちたいと考えたときに、妻は嫌ならばそれを拒否すれば良いのである。それでもなお夫が強引に結婚しようとするならば、そんな男には見切りをつけて妻は離婚してしまえばよい。一方、男性に妻がいるにも関わらず、それでもその男性と結婚したいと思う女性にとっては、一夫多妻は自分の望んだことである。結論として、現実に一夫多妻の家族が存在するということは、彼らはその制度を望んでいるのである。妻が離婚したくとも出来ない状況、あるいは女性が結婚したくないのにさせられてしまう状況があるとしたら、それこそが問題なのであり、女性の意思が尊重される限りに於て、一夫多妻制度は時代錯誤の差別的な制度として部外者に糾弾される筋合いはないのである。この制度を望み、その中で幸せに暮らしている人々の生活を非難、破壊する権利など誰にもないのである。

一夫多妻を容認しているイスラームは、女性差別の宗教と見られがちであるが、多様な人間の婚姻関係の実態を考えた場合に、むしろこれは、より多様なものを容認するというイスラームの寛容さを示していると見ることもできるのではないだろうか。

女性差別は、婚姻の制度に関わりなく、女性が"差別されている"と感じるところに存在するのである。

執筆:堀田史子

                

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