巡礼物語
 

【マッカの呼称】



 イスラームの歴史全体を通じて、マッカの町は他のあらゆる都市とは全く別格 に扱われてきました。そのことはマッカを呼ぶ際には通常、形容詞の「尊崇の (アルムカッルラマ)」が付けられて、「マッカ・ルムカッルラマ」とされるこ とからも明らかです。

 そこで今回は、マッカの呼び名を色々集めてみます。細かな話になりますが、 少し突っ込んだ本を読もうとするときには、いつもマッカとは呼ばれていないの で参考資料として役立つかと思います。

 現在60以上も記録にある中でも一般に最も広く使用されるマッカの別称は、 ウンム・アルクラー(諸都市の母親)です。以下はアルファースィー(ヒジュラ 暦832年没)の書で『聖地情報の飢えを癒すこと』という、名実共に充実した この分野の百科事典的な文献に拠って整理しまとめました。

ア.クルアーンには次の八個の呼称が出てくる。

  • 「マッカ」:この動詞形(マッカ)は「(異教徒を)追い出す」、「(人々 に)仕事させる」、「(人々を)惹き付ける」、「水が少ない」などの異なる語 義が元来はあった。

  • 「バッカ」:この動詞形(バッカ)は、「叩く(ダッカ)」、「(人が)混雑 する」などの語義が元来はあった。あるいはカアバ聖殿の守護のために、そこに 住まわせられた蛇が侵入者の首を絞めた(バッカ)ところから来ているとも言 う。

  •  バッカとマッカの区別については次の通り説明される。
    『両者は地名として同義であるとするものと、異なるとするものがいる。前者の 同義だとするものの中には、ただそのように言うもの(アッダッハーク、アルム ヒッブ・アッタバリー、アルマーワルディー)もいれば、バ音とマ音は交換可能 だからだと言うものもいる(イブン・クタイバ)。

     両者は異なるという後者の説を取る学者の中にもまた幾つも異説がある。バッ カはカアバ聖殿を指しマッカは町全体を指す(イブラーヒーム・アンナフ イー)、バッカはカアバ聖殿を指しマッカは聖地全体を指す(ヤハヤー・ビン・ アビー・アニーサ)、あるいはバッカは山の間を指しマッカは聖地全体を指す、 とする者がいる。

     またバッカはカアバ聖殿と聖マスジドを指しマッカは近隣のズー・トワーの地 点を指す(ザイド・ビン・アスラム)、あるいはバッカはカアバ聖殿を指し、 マッカはその周辺全体を指す(ムジャーヒド)などの見解に分かれる。
     以上についての定説はなく、アッラーのみがご存知だ。』(注1)

  • 「ウンム・アルクラー(諸都市の母)」:この語義は、マッカが一番偉大だか ら、あるいは、それが一番進んでいるから、さらには、それが礼拝の時に向く (ウンム)方向だから、と言った説に分かれている。

  • 「アルカルヤ(村)」:この語根のカラーには人が集まるという意味がある。

  • 「アルバラド(町)」:バラドには筆頭という意味がある。

  • 「アルバルダ(一つのこの町)」はマッカを指すとするものと、クルアーン解 説上、これはミナー(注:マッカの東約10キロ地点にある巡礼の際の逗留地) を指すとする説もある。

  • 「アルバラド・アルアミーン(安全な町)」

  • 「マアード(帰る場所)」
イ.次にクルアーンには出てこないマッカの呼称をいくつか見てみる。
  • 偶像崇拝者や聖殿の侵入者を追いやる意味から来たもの - アルバーッサ(潰 される)、アンナーッサ(追放する)、アンナッサーサ(追放する)、アルハー ティマ(破壊する)など。

  • マッカが不浄でなく清浄であることから来たもの - アルカーディス(聖的)、 アルカーディサ(聖的)、アルムカッダサ(聖なる)。

  • 命名の理由が分かりやすいもの - サラーフ(安全)、アッサラーム(平安)、 アルアルシュ(玉座)、アルアリーシュ(小屋、注:預言者イブラーヒームが妻 ハージャルと一緒にマッカに到着した時、彼女に聖殿の崩れた後の土の盛り上が りを指してそれを小屋のようにして休むようにと言ったとされる)、クースィー (ミナーにある山)、ウンム・アルクースィ(クースィー山の母)、アルハラム (聖地、あるいは禁忌の地)、ウンム・ルフム(慈悲の母)、ウンム・アッラハ マーン(最大の慈悲の母)、ウンム・アッラウフ(新鮮さの母)、ウンム・ザハ ム(混雑の母)、ウンム・スブフ(朝の母)、アッラアス(頭)、アルマッカ ターニ(町の高所と低所と言う意味で二つのマッカ)、アンナービヤ(遠い)、 アッリタージュ(門)、アルワーディー(峡谷)、タイイバ(薫り高い)、アル マスジド・アルハラーム(聖マスジド)など。

  • アルバイト・アルアティーク《太古殿、古来の家、あるいは(強者から)解放 された家》:これはカアバ聖殿の呼称と混同されている。

  • バッラ:これの元の意義は不明。

注1:アルファースィー(H.832年没)『聖地情報の飢えを癒すこと』、ベ イルート、2000年。全2巻。第1巻66―67ページ。ここに出てくる人物 は以下のとおり。H.ハヒジュラ暦を指す。アッダーハーク・ビン・マザーヒ ム・アルヒラーリー(H.100没、教友に従った人)、アルムヒッブ・アッタ バリー(H.694没、マッカ史を著す)、ムハンマド・アルマーワルディー (H.429年没、法学者)、イブン・クタイバ(H.286年没、クルアーン 解説学など)、イブラーヒーム・アンナフイー、ヤハヤー・ビン・アビー・ア ニーサ、ザイド・ビン・アスラム、ムジャーヒドらの四人は第1世代で預言者 伝承の伝承者。アブー・アルワリード・アルアズラキーはH.250年没、マッ カ史を著す。


筆者:アミーン 水谷
アラブ イスラーム学院研究者

(2007年10月16日更新)

                

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