預言者たち
 

【預言者ムーサーとハールーン その7】
 


ムーサーはついに魚が逃げ出した場所へたどり着きました。そしてムーサーと従 者が以前そこで休み、かごから魚が逃げ出した岩のところまで戻ると、そこでヒ ドル(ハディル)と出会ったのです。ムーサーはヒドルに、彼から学ぶためにお 供をさせてほしいと申し出ました。

『ムーサーはかれに、「あなたに師事させてください。あなたが授かっておられ る正しい知識を、私にお教え下さい。」と言った。』(聖クルアーン・洞窟章 66節より)

しかしヒドルは、「あなたは、私と一緒には到底耐えられないであろう。」(洞 窟章67節より)と言うのです。そこでムーサーが、「もしアッラーが御好みに なられるなら、わたしがよく忍び、またどんな事にも、あなたに背かないことが わかりましょう。」と言うと、ヒドルは同意しました。

ムーサーがヒドルと一緒に海岸を歩いて行くと、1艘の船のそばを通りかかりま した。ヒドルとムーサーは船の持ち主たちに自分たちを乗せてくれるよう頼みま した。彼らはヒドルのことを知っていたので、ヒドルへの敬意から、彼とムー サーを船賃なしで乗せていってくれました。

やがて船が岸に着き、船の所有者や乗客たちは降りていきましたが、ヒドルは船 に残り、彼らが離れるや否や船に穴を開け始めたので、ムーサーはとても驚い て、ヒドルのしたことを非難しました。船の所有者たちは親切にも船賃なしで私 たちを乗せてくれたというのに、彼はこうして船に穴を開けて壊している!!

ムーサーの考えではその振る舞いは責められるべきものでした。ムーサーは自分 の早急な性質に支配され、また真実を守ろうとする激しい心に動かされて、自分 の師に話しました。師が条件付けたことをすっかり忘れて。

『それでかれ(ムーサー)は言った。「あなたがそれに穴を開けるのは、人々を 溺れさすためですか。あなたは本当に嘆かわしいことをなさいました。」』(洞 窟章71節)

するとヒドルは、ムーサーが耐えられないだろうということを彼に思い起こさせ ました。

『かれは言った。「あなたは、わたしと一緒では耐えられないと、告げなかった か。」』(洞窟章72節より)

そこでムーサーは約束を忘れてしまったことを謝り、自分を咎めたり、困難で悩 ませたりしないでほしいと願いました。

『かれ(ムーサー)は言った。「わたしが忘れたことを責めないで下さい。また 事を、難しくして悩ませないで下さい。」』(洞窟章73節より)

こうして2人はまた歩き出しました。彼らがある庭園に差し掛かると、そこで一 人の少年が遊んでいました。するとヒドルは突然その少年を殺してしまったの で、ムーサーはとても驚き、興奮して、一体何の罪で少年はこのように殺されな ければならなかったのか、とヒドルに問いただしました。するとヒドルは、ムー サーが到底耐えられないと自分が言ったことを再び彼に思い出させました。

『かれは答えて言った。「あなたは、わたしと一緒には耐えられないと、告げな かったか。」』(洞窟章75節より)

そこでムーサーは約束を忘れたことを謝り、自分はもう二度と尋ねないだろう、 もしもう一度尋ねたら、自分をもう連れて行くことはないと言いました。

『彼(ムーサー)は言った。「今後わたしが、何かに就いてあなたに尋ねたなら ば、わたしを道連れにしないで下さい。(既に)あなたはわたしからの御許しの 願いを、(凡て)御受け入れ下さいました。」』(洞窟章76節)

ムーサーはヒドルとまた歩き始め、やがて2人はある村へ入りました。持ってき た食べ物が尽きてしまったので、彼らは村人たちに食べ物を求めましたが、彼ら は2人に食べ物をふるまうのを拒みました。それから夜が来たので、彼らは倒れ かけた壁のある空き地を見つけ、そこで休むことにしました。その壁は本当に今 にも崩れ落ちそうでした。

するとヒドルが起き上がり、壁を修理して建て直したので、ムーサーは驚かされ ました。自分の連れの、また自分の師の行いにびっくりした彼はこう言いまし た。「もし望んだならば、それに対してきっと報酬がとれたでしょう。(洞窟章 77節より) それによって食べ物を得るために。」

しかしその一言で事は終わりを告げ、ヒドルはムーサーにこう言ったのです。

『「これでわたしとあなたは御別れである。」』(洞窟章78節より)

そしてムーサーに今までの行いの訳を説明し始めました。

―あの船の所有者たちは貧しい人たちでした。彼らが船に穴が開いたことを災難 だと思ったとしても、逆にそれは彼らにもたらされた恩恵だったのです。あの地 には、すべての船を強奪する不義の王がいたのですが、あの壊れた船は放置する ので、家族の糧を得る手段はそのまま残され、飢えて死ぬことはありません。

そしてあの少年ですが、彼の両親は信者であり、少年は将来大きくなると彼らを 大変苦しめることを我々は知っていて、そのために彼を殺したのです。殺された 子の父親も母親も、罪もない小さな一人児が殺されて大惨事に見舞われたと思う でしょうが、実は彼らにとってあの子の死は大きな御慈悲だったのでした。

アッラーはあの子の代わりに、彼らが年老いた時には彼らを世話し、殺された少 年のように傲慢さや不信心で彼らを苦しめるようなことをしない息子を、いずれ 彼らにお与えになるのです。―

またヒドルが報酬を求めないで苦労して建て直した壁についてですが、実はあの 壁の下には、町に住む、まだ力のない2人の孤児の少年たちの財宝が隠されてい て、壁があのまま崩れ落ちていれば、その下から財宝が現われ、村人たちがそれ を支配してしまうところだったのです。小さなその少年たちにはまだそれを守る 事ができません。

彼らの父親は正しい人物だったので、アッラーは2人がまだ小さくて力のない 間、その正しさによって彼らを助けられ、二人が成長して強くなり、財宝を守れ るようになってから、それを掘り出すようにと望まれたのでした。

それからヒドルはアッラーの御慈悲を示し、彼がしたことはすべて至高至大なる アッラーからの啓示によるものであり、アッラーが彼にお教えになったことであ ると言いました。そしてこれが、ムーサーがよく耐えられなかった事柄だったの でした。

ハールーンはムーサーより少し前に亡くなり、ムーサーにも定められた最期の時 が近付きました。しかし彼はまだ、アッラーがイスラエルの民にお定めになった 40年のさまよいの中にいました。そのため彼は主に祈って言いました。「主 よ、聖地へ私を近付けて下さい。」

彼は、自分がめざした地であり、自分の民をも向かわせたその地の近くで死にた かったのです。

しかしながらそれは叶わず、彼はさまよいの中で亡くなり、エルサレムの近くの 赤い砂地に埋められました。地上最後のアッラーの預言者モハンマドはそのこと について、夜間飛行の奇跡を体験した時、このように話しました。

《夜間飛行の夜に赤い砂地のところで、私はムーサーのそばを通りました。その 時彼は、彼の墓の中で礼拝をしていました。》(ムスリムによる伝承)

・・・・終わり。


執筆:ヌーラ アッダハマシ


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