預言者たち
 

【預言者ムーサーとハールーン】
 

預言者ムーサーとハールーンは、正しいことを嫌いそのようなことを避けることこの上ない民のもとに遣わされました。そのため二人の人生は様々な出来事と場面に満ちていたのです。当時エジプトを治めていたのはエジプト人たちによって崇拝された強大な王(ファラオ)でした。ファラオはアースィヤ ビント マザーヒムという誠実な女性を欲しました。アースィヤは最初ファラオを拒絶しましたが、最後には彼女の家族がファラオから酷い仕打ちを受けることを恐れてファラオに同意しました。

ファラオは人々を階層に分け、そのうちもっともその数が少なかったのがイスラエルの民でした。ファラオはこのイスラエルの民が増加し財産を所有しだしたのに気がつきました。また彼らが預言者について噂し、イスラエルの民のある者がエジプトのファラオをその王座から引き落とすだろうと噂しているのを耳にしました。そこでファラオはイスラエルの民は男児を生んではならないという令、つまり生まれてきた男児を殺害するという命令を下したのでした。この政令は実行され始めました。その後ファラオの側近のものたちはファラオに次のように言いました。「イスラエルの民の大人たちはそのうち寿命が来れば死に、子供たちも殺されています。このままいくとイスラエルの民は滅び、その結果エジプトは労働者の減少により弱体化してしまうでしょう。ですから男児を殺害するという政令を1年後とに実施した方が良いのではないでしょうか?1年は殺害し、1年は放っておくのです。」ファラオはこの案を良い考えだと感じました。

ムーサーの母は子供たちを殺害しない年にハールーンを身籠りました。しばらくして彼女は公に安全にハールーンを生みました。その翌年、子供たちを殺害する年にムーサーは生まれたため、ムーサーの母は激しい恐怖の中で彼を身籠り、生まれたばかりの息子の殺害を恐れ誰にも気付かれないように授乳しに行くのでした。それから暫くしてムーサーの母にアッラーのお告げがあった祝福された夜がやってきました。アッラーはムーサーの母にムーサーのために小さな箱を作り、彼に母乳をやってその箱の中に入れ川に流しなさいと命じました。

この世の中で最も慈悲深い心は母の心ですからムーサーの母はナイル川に息子を流すことに心が締め付けられそうになりました。しかし彼女はアッラーは自分以上にムーサーに慈悲深く、アッラーこそムーサーの主であり、ナイル川の主でもあるということを知っていました。そして箱がナイルの水に晒されるや否や創造者アッラーはナイルの波に命令し静かに穏やかにさせ、こうしてアッラーが預言者イブラーヒームのために火を冷たく安全なものにしたように後に預言者となる乳飲み子をナイルの波に運ばせました。こうして波は箱をファラオの城まで運び、そこで箱を川岸に打ち上げさせました。

翌朝、ファラオの妃は城の庭を散歩しに出かけました。この妃はファラオとは多くの点でことなり、ファラオが不信仰者であったにもかかわらず彼女は信仰を持っていました。また彼が固い頭の持ち主であったにもかかわらず彼女は慈悲深い人でした。ファラオは横暴でしたが妃は繊細で優しい人でした。そして彼女には子供がいないためにそれを悲しみ、自分に子供が出来ることを心から願っていたのでした。

女の召使たちが川の水を水がめに満たすために川へ行き、箱を見つけました。彼女たちは箱をそのままファラオの妃のもとへ運んでいきました。妃は彼女たちに箱を開けるように命じ、箱が開けられました。そして妃はその箱の中にムーサーを見つけるとその乳飲み子への愛を感じました。アッラーこそ彼女の心にムーサーへの愛情を彼女の心に芽生えさせたのです。こうして彼女は箱からムーサーを抱き上げました。するとムーサーは目を醒まし泣き始めました。ムーサーはお腹が空いていたのです。そこへファラオがやってきて自分の妃が乳飲み子を抱いているのを見ると「その子はどこから来たのだ?」と尋ねました。すると周りの者たちは川岸に流れついていた箱のことを話して聞かせました。ファラオは「おそらくこの子はイスラエルの民の子供に違いない。今年は男児殺害の年ではなかったか?」と言いました。するとファラオの妃がムーサーを抱きしめ言いました。「この子は私を喜ばせ、またあなたをも喜ばせてくれるでしょう。」ファラオは「いや、そなただけを喜ばせるだろう。」と言い、妃がこの子を育てるのを許しました。

ムーサーは空腹のため再び泣き始めました。妃は乳母たちを連れてくるよう命じ、城の乳母たちがやって来ました。彼女たちはムーサーを抱き、乳を飲ませようとしましたがムーサーは拒否しました。こうして乳母たちが2人、3人、10人とやって来ましたがムーサーは泣き彼女たちからは乳を飲もうとはしませんでした。妃は途方にくれ、どうしたらよいのかわからなくなりました。

さてここにもう一人悲しみから泣き崩れる者がいました。ムーサーの母です。彼女はナイル川にムーサーを流す時にあたかも自分の心を捨てるかのごとく感じました。箱がナイルの波によって見えなくなり、朝がやってくると息子を手放した悲しみのため彼女の心は空っぽになってしまいました。ムーサーの母はファラオの城に行き、自分の息子のことを伝えに行こうと思いましたが、アッラーが彼女の心を鎮め、彼女は自分の息子をアッラーにお任せしムーサーの姉でもある自分の娘に言いました。「静かに町へ行き、ムーサーに何が起こったのか調べてきておくれ。」

ムーサーの姉はこっそりとファラオの城に近付き、そこで話の最初から最後までを聞き、遠目ながらムーサーを見つけ、彼の鳴き声を聞きました。そしてどうやってムーサーに乳を飲ませられるのか分からずに途方にくれる女たちを発見したのでした。そしてムーサーが乳母たち全員を拒絶したことを聞きました。ムーサーの姉はファラオの守衛に言いました。「彼に乳をやり、彼の面倒を注意深くみる私の家の者たちを紹介しましょうか?」するとファラオの妃はこのことに大変喜び、その乳母を連れてくるようムーサーの姉に頼みました。こうして姉が母を連れてくると母はムーサーに乳をやり、ムーサーは母乳を飲んだのでした。ファラオの妃はアッラーを称え、彼に乳をやるために城に来るよう求めました。彼女は夫や子供がいるからと言い、すると周りにいた者たちは彼を連れて行くことに同意しました。そこでファラオの妃はムーサーの母に「授乳が終わる頃まで彼を連れて行きなさい、そしてその後彼を私たちのもとへ戻しなさい。私たちは彼を育ててくれる褒美として大金をあなたに授けましょう。」こうして至高のアッラーはムーサーを彼の母のもとに戻したのでした。これは彼女が喜び、悲しまないように、そして彼女にアッラーは約束を破ることなく、彼の御言葉はどのような状況であれ実現するのだということを知らせるためでした。

ムーサーの母は授乳を終え、彼をファラオの城に戻しました。ムーサーはみんなの愛情が寄せられるところで、彼を見た者で好きにならない者はいないほどでした。こうして現世における最も偉大な城でアッラーの庇護のもとにムーサーはすくすくと育ち、当世の偉大な教育者たちを包括していたファラオの城でムーサーは教育されることになりました。当時のエジプトは世界中でもっとも繁栄していた国で、ファラオはもっとも強大な王でした。最高の教育者のもとでムーサーが教育を受けるということ、そしてそれが創造者であるアッラーの命令を実行した後に彼の最大の敵となる者の城ですべてが行われたということは至高のアッラーの英知によるものでした。ムーサーは自分がファラオの息子ではなく、イスラエルの民の一員であり、ファラオやその家来たちがどのようにイスラエルの民を迫害していたかを見ていたのでした。

そしてムーサーは成人しました。

『(ある時)かれは、人が注意していない隙に町に入り…』(アルカサス章15節)

そして町の中を歩いていきました。するとあるファラオの従者がイスラエルの民の男を殺害しようとしているところに出くわしました。弱々しい男はムーサーに助けを求め、ムーサーはこれに介入し、相手の男の手を振り払い彼を殺してしまいました。ムーサーはとても力が強く、この男を殺そうと思っていたわけではありませんでした。彼を振り払うことだけを望んだのでしたがムーサーの一撃が男を殺してしまったのです。ムーサーはびっくりして独り言を言いました。

『「これは悪魔の仕業である。本当にかれは、人を惑わす公然の敵である。」』(アルカサス章15節)

そして自分の主に祈りました。

『かれは(祈って)言った。「主よ、本当にわたしは自ら不義を犯しました。どうかわたしを御赦し下さい。」』(アルカサス章16節)

そして至高のアッラーはムーサーをお赦しになられました。

『本当にかれは覚容にして慈悲深くあられる。』(アルカサス章16節)

ムーサーは町の中で恐ろしくなりました。誰にも見られていなかったというにもかかわらず自分の罪を恐れる人間の状態だったのです。翌日ムーサーは偶然昨日助けた男に出くわしました。この日、彼はムーサーを呼び叫んでいました。この男はあるエジプト人と小競り合いをしていました。ムーサーはこのイスラエルの男が厄介者で喧嘩っ早いことを悟り、男に向かって厳しく言いました。

『「あなたはよくよく間違いをしでかす男だ」。』(アルカサス章18節)

ムーサーはこう言い、エジプト人を強打するために二人に向かっていきました。するとこのイスラエルの男はムーサーが自分に向かってくると勘違いし、助けを求めて叫びました。そして昨日ムーサーが殺したエジプト人のことを思い出させました。するとムーサーは立ち止まり、怒りを抑えながら昨日自分がしたことを思い出しました。そしていかに自分がアッラーに赦しを請い、もう二度と罪人を助けることはしないと心に決めたのか思い出しました。このためイスラエルの男ともみ合っていたエジプト人はムーサーが昨日収集されたエジプト人の遺体の殺人犯だということを知りました。エジプト人たちは誰が自分たちの仲間を殺したのか誰一人として知らなかったのです。こうしてこのエジプト人は町の隅々までこのことを広め、ムーサーの秘密がばれてしまいました。すると町外れの方から急いで信者であるエジプト人がやってきてムーサーにエジプト人たちはあなたを殺そうとしているからエジプトから出て行くようにと忠告しました。


執筆:ヌーラ アッダハマシ


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