預言者たち
 

【預言者ユースフ】
 

アッラーはユースフの物語をクルアーンの中で1回述べました。ユースフの名前はイブン ヤアクーブ ビン イスハーク ビン イブラーヒームです。彼にはそれぞれが同一の母を持つ6人の兄弟、二人の女奴隷を母とする4人の兄弟、そしてユースフの母親から生まれたベンヤミンという兄弟一人の計11人の兄弟がありました。

ユースフの物語は彼が見た夢の物語から始まります。幼い少年ユースフは父親のもとへ行き、見た夢のことを話し、11の星と太陽と月が自分に平伏しているのを見たと伝えました。父は息子の夢の話を注意深く聞き、その話を兄弟たちに話さないよう忠告したのでした。ヤアクーブは彼の推測と先見の明により、この夢の裏にはこの少年にとって偉大なことが隠されているということを悟ったのです。そのためヤアクーブは、異母兄弟である彼らがこの小さな弟の後ろにある偉大なことを感じてしまうことを恐れ、ユースフに夢の話を兄弟たちに話さないよう忠告したのです。ヤアクーブは二人目の妻を娶り彼女はユースフとその弟を生みました。ヤアクーブはシャイターン(悪魔)が兄弟たちの心の中の亀裂を見つけ、彼らの心に憎しみを満たしユースフに悪事を為す事を恐れていたのです。ユースフは父親の警告を聞き、見たことを兄弟たちに話しませんでした。

ユースフの10人の兄弟たちは話し合いました。

『かれら(兄たち)がこう言った時を思え。「ユースフとその弟は,わたしたちよりも父に寵愛されている。だがわたしたちは多勢の仲間である。父は明らかに間違っている。」』(ユースフ章8節)

つまり、彼らはこう言ったのです。「私たちのほうが強く、父を守り、彼の役に立つことができる。だから父が役立つ男たちの一団よりこの二人の子供に関心を持つことは断じて間違っている!」すると彼らのうちの一人がこの問題の解決策を提案しました。

『(1人が言った。)「ユースフを殺すか,それともかれを何処か外の地に追え。」』(ユースフ章9節)

これこそ憎しみであり、また彼らの父親に対し、彼らを除いたユースフだけへの愛情を増大させ、とうとうこの仕打ちには殺害が相応しいと思わせたシャイターンの仕業でした。
地上における罪のうち、アッラー以外を崇拝することの次に最も酷い犯罪である殺害、またそれとほぼ同じことを意味する遠い地へのユースフの追放、つまりユースフはその遠い地で死ぬことが免れることができない、という残酷な仕打ちです。何故このようなことになってしまったのでしょうか?すべてはユースフの父親が彼を見ないようにし、いずれユースフを忘れ、父の愛情すべてが自分たちへと向けられるようにという想いからだったのです。

彼らのうち、アッラーがその者の心の奥深くのわずかな慈悲を動かした、あるいはアッラーが心の奥で殺害に対する彼の恐怖を優先させた者が言いました。「何も彼を殺す必要はない。もしあなたたちがユースフが自分たちのもとからいなくなることを望むのならば、ユースフを隊商隊の通り道にある井戸に投げ込んでしまえばいい。どこかの隊商がユースフを見つけ、彼を連れて遠くへ行ってしまうだろうから。そうすればユースフは父のもとには現れなくなり、ユースフを遠ざけたいという私たちの目的が達成される。」こうして彼らは殺害というアイディアを捨て、ユースフを隠し、遠ざけるというアイディアを選んだのでした。

狩への旅にユースフを連れて行く許可を求めるため、息子たちは父のところへ向かいました。すると父はそれを拒み、軽い非難をこめた、また彼らの感情を逆撫でした次のような会話が彼らの間で交わされました。

『かれらは言った。「父よ,何故あなたはユースフを,わたしたちに御任せにならないのですか」』(ユースフ章11節)

「ユースフは私たちの弟ではありませんか?あなたはユースフが私たちのもとにいるのを恐れ、彼を私たちに任せてはくれないのですか?私たちが彼を愛し、面倒を見るのに?なぜ彼を私たちとともに行かせ、彼が楽しみ遊ぶようにさせてくれないのですか?」と。ヤアクーブは間接的に自分がユースフを彼らに任せられないことを否定し、自分がユースフと離れるのが辛く、また狼が幼い息子を襲うのではと心配なのだと説明しました。

『かれ(ヤアコーブ)は言った。「あなたがたがかれを連れて行くのは,わたしにはどうも心配である。あなたがたがかれに気を付けない間に,狼がかれを食いはしないかと恐れている。」』(ユースフ章13節)

すると彼らはユースフを食べてしまうのではないかと父が恐れている狼に関する考えが誤まりだとし、自分たちが10人からなる男たちであり、この大人数で自分たちがユースフを気をつけて見れないことはない、万が一の時には自分たちは全員お終いなのだと説明しました。そして改めて狼がユースフを喰らうことはなく、彼のことを心配する必要はないと言ったのです。そこで父は息子たちの圧力のもと、しぶしぶ承知したのでした。こうしてアッラーが決定された運命が実現し、物語がアッラーの望むとおりに完成されたのです!

兄弟はユースフを連れて出かけ、彼を砂漠に連れて行きました。そして隊商隊の通行が途切れることない井戸を選び、ユースフを抱き上げて井戸に放り投げようとしました。するとアッラーがユースフにそこからの救出を伝え、怖がることはなく、将来彼らに会い、彼らが自分に行ったことを伝えるだろうということを霊感として感じさせたのでした。

夜になり、息子たちは父に凶悪な狼の話を話すために泣きながらやって来ました。そして父に彼らがユースフを保護しながら出かけ、しかし気づかないうちに狼がやってきてユースフを食べてしまったのだと伝えました。激しい憎しみが彼らに嘘をつかせたのです。ヤアクーブが彼らにユースフを同伴する許可を与えた時の様に彼らの気が落ち着いていたのなら良かったのに!しかし彼らはことを急ぎ耐えることができませんでした。次の機会がやってこないことを恐れたのです。彼らが狼の話しを持ち出したのも性急な気持ちの表れでした。なぜなら昨日彼らの父は彼らに狼のことを心配しているといい、彼らこそその心配を否定したのですから。それにもかかわらずユースフを狼のところへ放置すること自体がすでに正当な言い訳からかけ離れているのです!こうした性急さから彼らはユースフの服に嘘の血を塗りつけましたが、気が動転していたため服を破くのを忘れ、血を付けたものの、そのままの服を持ってきてしまったのです。彼らが次のように言った時、彼らの嘘に対する有力な証拠でもって彼らの言葉は終わったのでした。

『「わたしたちは真実を報告しても,あなたはわたしたちを信じては下さらないでしょう。」』(ユースフ章13節)

つまり「なぜならあなたは私たちを疑っているのだから、私たちの言うことには安堵しないでしょう。」ということです。

ヤアクーブはその場の状況から、そして心の声から、また明らかな嘘からユースフは狼には食われていないということを、そして彼らがユースフに何か策謀したのだと、そして起こってもいない話を自分に対してでっち上げているのだと悟りました。そこでヤアクーブは彼らが悪事を大したことではないと自分たち自身に思わせ、それを犯してしまったのだと彼らに言い、自分は悲しみも怒りも不平も言わず、ただよく耐え忍び、事件に関してはただアッラーの助けを請うだけだと言いました。

『かれ(ヤアコーブ)は言った。「いや,いや,あなたがたが自分たちのために(大変なことを安易に考えて),こんなことにしたのである。それで(わたしとしては)耐え忍ぶのが美徳だ。あなたがたの述べることに就いては,(只)アッラーに御助けを御願いする。」』(ユースフ章18節)

さて、ユースフが井戸の中にいると、エジプトへ向かう大きな隊商が井戸を通りかかりました。彼らは水を補給するために足を止め、彼らの一人を井戸へ送り、その者はバケツを井戸に下ろしました。そこでユースフはそれにつかまりました。男はバケツに水が満たされたものと思いましたが、それを引き上げてみて喜びました。最初はバケツに少年がつかまっているのを見て喜んだのです。こうして彼はユースフを、拾った者の奴隷となる落とし物の規則の上に捕虜としました。それからこの男は頭痛の種とその責任について考え嫌になりました。というのも彼が幼い子供を見つけてしまったために嫌になったのです。そこで彼はエジプトに着き次第この子供を売ってしまおうと決心しました。そしてエジプトに着くや否や奴隷市場でユースフを小額で売り払ってしまいました。そこからユースフをエジプトの支配階級の男「アズィーズ ミスル」が買い取ったのです。彼は財務大臣でユースフに愛情を抱き、妻にこう告げたのです。

『「優しくかれを待遇しなさい。多分かれはわたしたちを益することになろう。それとも養子に取り立ててもよい。」』(ユースフ章21節)

このアズィーズは性的に不能でした。こうしてユースフはアズィーズの城で彼の息子のように育ち、好きなように城の中で行動するようになりました。 (続く)


執筆:ヌーラ アッダハマシ


(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

 

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2005年 アラブ イスラーム学院