アッラーがムハンマド(アッラーの祝福と平安あれ)を遣わされたのは、全世 界への慈悲の使いとしてであった。聖クルアーンに言う。「われは只万有への慈 悲として、あなたを遣わしただけである。」(預言者章107)
慈悲であるという意味は、人々が彼のもたらしたアッラーの教えとその規則に 従うならば彼らを地獄の劫火から助け、また彼は被創造者全体へ情けをかける大 きな存在であり、被創造者に同情を持つものであるということだ。さらに彼は感 覚に素直で、その繊細さは被創造者の痛みを感じ、その痛みを減少させ貧者を助 け、不義を正すためにあらゆることを行う。
そして被創造者には人間、動物、鉱物を含み、それらの大小を問わず、また信 者、非信者を問わない。小さな子供にも親しげに優しくし、また冗談を言ったり 接吻したり抱いてあげたりし、居なくなったら悲しんだりした。婦人にも情け深 く助言を行い、優しさを教諭し、「女性には善行を助言せよ」と言われた。
弱者や僕(しもべ)たちにも親切で、僕も助言を得ていた。「僕もあなた方の 兄弟で、アッラーはあなた方の手中に置かれたのだ。そして手中にある兄弟へ は、自分が食べるものから分け与えよ。また自分が着るものから分け与えよ。き つすぎる仕事をさせてはいけないし、もし言いつけたならば手助けしてあげなさ い。」こうして弱者への情けは、勝利と利得の原因にも挙げられた。
動物への情けと慈悲を大いに勧められた。また過酷な作業をさせないように言 われた。鉱物にも情けは及んだ。預言者(平安を)は説教台が設けられてその方 へ移動されたので、それまでもたれ用に使用されていた樹木の幹が悲しんだの で、静まるまでそれを抱いておられた。その言葉として、「私がそれを抱かなけ れば、それは最後の日まで悲しんでいただろう」と言われたそうだ。(アハマド の伝承)
さらには敵対する者へも情けは及んだ。信者に挑戦し被害を与えたターイフや 初期のマッカの人々には、報復されなかった。つまり山の諸王がアフシャバイン という名前の山でターイフ市民を圧迫してはどうかと進言したのに、それは好ま れなかった。またマッカで勝利して入城するまで一切の処罰はなかったし、それ も結局お赦しになった。その際のよく知られた言葉が、「あなた方は自由の身 (アットラカーゥ)だから行きなさい」であった。(本章は次に続く)
筆者:ムハンマド・ハサン・アルジール
アラブ イスラーム学院長
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