帰路、夕日が沈みかけた頃、リヤド市内(注1)に入る少し手前の郊外レスト ランのようなところに立ち止まる。まあ、モスクもあるし礼拝をするのかと思い きや、何やらパイプのような大きな物体を運んできた。
私 |
「サウジは麻薬は極刑なはずなのでマリファナではないことは確かでしょうが、何ですかね?」 |
団員T |
「これが噂に聞くシーシャ(アラブの水タバコ。)って奴じゃないの? エジプトとかでは良くやるのは知ってるけどサウジも吸うんだ!」 |
私はというと楽しみでしかたがない。噂ではフルーツ味らしいし。さっそく吸 うとりんご味。煙草のように咽る感じはしないが、なんとなくリラックス気分が 味わえてよい感じ。しかしながら煙草を生涯一度も吸った事無い人には咽るよう だ。
団員W |
「僕はもう良いや。やっぱりこういう系は合わないな。」 |
団員K |
「いやー僕は好きですね。煙草は吸わないけどこれならいけます。」 |
団員T |
「ヘビースモーカーの僕は物足りない。煙草吸おうっと。」 |
団員A |
「僕はこれをお土産に買って帰りたいな。みんな喜びそうだ。」 |
と、感想は様々。そしてシーシャタイムも終わり、サウジ伝統料理店での会食 に向かう。
団長H |
「おそらくリヤド市内だと行く店は決まっているので私は何回か行った事があると思います。たまに食べるならなかなかですよ。」 |
団長H |
「つまり、毎日は食べれない、食べたくないけどたまに食べれば美味しくも感じると言う事です。」 |
そして外国人には超有名というサウジ伝統料理屋(注2)に到着。外見からも 高級感というか伝統的な感じが伝わってくる。
入り口を入るとすぐに「昔の家の中」風の作り。擦ればアラジンが出てきそう な装飾品が山のように飾ってある。店内は個室形式で食べるようだ。まあ、サウ ジだから当たり前の気がするが。すると絨毯が敷かれ、結構大きな個室に通され た。よく見ると「Family Section」と書いてあった気がする……。まあ、良い か。とりあえず乱雑にペプシやらセブンアップやらミネラルウオーターが置か れ、次々と料理が運ばれてきた。
団員の一番のお楽しみはラクダの肉である。日本ではまず食べられないだろう からだ。しかしながら、ラクダに到達するまでの料理の多いこと……。アブはも の凄い勢いで食べている。色々と説明をしてはくれるのだが、日本ではあまり食 べない物ばかりなのでいまいち良くわからない。とりあえずの印象は豆を使った 料理が多いということだ。
そしていよいよその時がきた。大皿に盛られた肉の塊が明らかに「獣」の雰囲 気を醸し出している。おそるおそるアブに聞いてみると、
アブ |
「お待ちかねのラクダの肉だよ。ちなみにこれはカプサという料理で本当は羊や鳥の肉を使うんだが、今日はラクダにしたよ。食べたそうだったからな。」 |
大変失礼なのだが、見た目は巨大な豚の肉と言った感じ。脂の乗りは羊っぽい 感じがする。なんともきつい味がしそうだがいざ食べてみると非常に柔らかく、 牛肉に近い。臭みもほとんどなく非常においしい。ただし、脂は非常に独特かつ 濃厚で、調子にのっていたら胸焼けをしてしまった。もう食べられない……。
見ると、サウジ人たちが偏っている席はあまり残っていないのだが、日本人比 率の高い席はどの料理も大量に余っている。
アブ |
「心配するな。最初から残すのを前提に頼んである。これがサウジ式のもてなしだ。」 |
私 |
「でも余ったのはもったいないのでは? しかも高いでしょ?」 |
アブ |
「大概のイスラームの国々では余ったのは貧しい人達に与えるから大丈夫だ。捨てたりはしない。アッラーや貧しい人達に失礼だし。」 |
という素敵な意見が返ってきた。残してしまった罪悪感があったのだが、それ を聞いて心もお腹も幸せな気分になった。
注1: シーシャは、リヤド市内では家庭での使用のみとなっている。飲食店などでの提供はリヤド郊外のみ。
注2: NAJD Villageと言うらしい。
筆者:鈴木 健
アラブ イスラーム学院 研究員
(2008年3月11日更新)
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