キングダムタワー
 

‐第四回日本・サウジアラビア王国青年交流使節団に参加して‐

【リヤド滞在編1】

キングダムタワー




 「アラーフ アクバル アラーフ アクバル!」

 突然の大きな声で目が覚める。そうか、これがアザーンか。恐る恐る窓を開け ると、市内の至る所でアザーンがこだまし、大合唱となっている。てゆーか、ま だ四時半くらいだが……。礼拝は睡眠に勝るとは良く言ったものである(注1)。 これだけうるさければ起きる。私は当然のように二度寝。なぜなら到着した日か ら次の日の夕方まで自由時間という素晴らしいスケジュールだからだ。

 楽しい二度寝タイムも終わり、朝食会場へと赴く。すると見るからに豪華な朝 飯の数々。すると他の団員もご飯を食べている。

私  「おはようございます。」

団員A  「おはようございます。いやー豪華な朝食ですね。滞在中に太りそうですよ。」

団員T  「そう言えば、記者のIさんは今日も朝から大使館方向に隠し撮りに出かけたそ うですよ。ちなみに昨日はタクシーの運転手にお金を払おうとしたら足らなく て、今日 また取材に行くからホテルに迎えに来てくれ、その時払うと言ったら 快くOKしてくれたそうですよ。日本では考えられませんね。」

私  「た、確かに。そういえば、私もお金がないのですがどこかで両替はできましたか?」

団員W  「僕はドルで持ってきたし、最悪カードでキャッシングするから良いけど、昨日 何人かが銀行に行ったら、サウジ国内に口座を持っていないと日本円の両替は駄 目だと断られたらしいですよ。」

私、団員K  「そ、それはやばい……。現金がない……。」

 とりあえず、夕方まで予定が無いのでみんなで市内に出てみませんか?  ひょっとすると両替ができるところがあるかも知れませんし、H団長がいれば安 心ですし。

一同  「賛成!」

 一人を除く全ての団員が集結し、リヤド市内の探索へと出かけた。さて、最初 に目指すはリヤドの象徴とも言える建物、キングダムタワーである。このキング ダムタワー、実に巨大。夜は7色にライトアップされ、非常にえも言われぬ雰囲 気を出している。それにしても栓抜きに似ている……。

一同  「いやー、真下から見ると本当に大きいですね! しかもやっぱりサウジの日中 は暑い! キングダムタワーに太陽が反射してたまりませんな!」

 感激し、写真撮影に入る一同。その時、軍服を着たおじさんの叫び声。どうや ら我々を呼んでいるようだ。

H団長  「皆さん、写真を撮る時はくれぐれもあのような格好をした人達の前で撮らない ように。運が悪いとカメラを取られます。とりあえず無視しましょう。」

 すると、おじさんは怒った剣幕で追いかけてくる。

H団長  「しょうがないので話をしてみますがカメラの没収も覚悟してください。」

 3分ほどの討論であったであろうか、他の団員が心配する中、H団長が戻って きた。

H団長  「今回はなんとかなりましたが次回から気をつけてください。特に軍人さんや警 察官が付近にいる際は。また、軍や警察の施設に対しても。あと怖いのが女性が 被写体に入る事です。」

一同  「了解しました。」

 この一件でリヤド探索隊は3つに別れることになる。

1.とりあえずマイペースに目的に向けて行動チーム
2.恐れずに無計画に突き進む特攻チーム
3.やっぱり知らない国は怖いなぁ。チキンチーム

 無論私はチキンチーム。しかもリーダー格。とりあえず妥当そうなキングダム タワーのショッピングセンターに入る事にする。目的チームは本屋へ、特攻チー ムはとりあえずリヤドのもう一つの象徴であるファイサリーヤを目指すらしい。 しかも徒歩で。

 さて、簡単な手荷物検査を受け、「写真は撮るなよ!」と、きつく言われた後 キングダムタワー内部に潜入。すると早速私の目当てである旅行バック屋を発 見。しかし営業している気配は無い。しかもほとんどの店が。

 そう、今日は金曜日、しかも正午過ぎ。休日プラス合同礼拝に重なり、みんな 商売どころではない。人影さえまばらである。適当に唯一営業しているレストラ ン街が中華などの多国籍料理が並んでいる事に感心し、また買い物のフロアーが ファミリー用(男女混合)と女性専用に分かれているのも非常に興味を覚えた。

 それからチキンチームは両替(注2)ができるところなどを探し、キングダム タワーの周辺をうろちょろとするのだが、時折顔を強張らせる軍人さんやサウジ 伝統衣装に身を包む人達に怯え、気がつくとこんな意見にたどり着いた。

団員K  「暑いし、怖いし、店もやってないしそろそろ戻りませんか?」

私  「賛成! では優しそうなタクシーを捕まえましょう!」

 そしてタクシーに乗り込む我々。おそらくはインドかパキスタンからの労働者 であろうか? 愛想は良い。しかしながら大問題。道がわからないのだ。

私  「てゆーか、H団長もアブダッラーもホテルのカードを見せればわかると言って いましたよね? なのに彼は全くわからないようですよ。しかも英語も下手。 こりゃ最悪だ。しかも噂ではホリデーインは二つあるらしいので違う所に連れて 行かれたらピンチですな。しかも現金が……。」

一同  「とりあえずなんとか説明しましょう! てゆーか、この運転手メーターつけて ないけどひょっとして料金は適当? まさにインシャーアッラー(日本語訳する と“もしアッラーが望むならば”となる。)! ですな。」

 結局、ちょっと遠回りをしたが無事ホテルに到着。タクシー代金も非常に安 かった。小腹が空いたチキンチームは冒険をせずにホテルの料理を食べる事にす る。

団員K  「いやー、ビールが飲みたいですな。」

私  「無いのはわかっていますが冗談で言ってみましょうか? では、BLTサンド イッチとビールください。」
(無論、サウジでは豚肉は食べないので、BLTのB = ベーコンは羊や牛など で作られたもの)

ホテルのレストラン従業員 「OK。部屋番号は何番ですか?」

一同  「え? あるの?」

 3分後、我々の前に姿を現したのは日本でも御馴染みBudweiser。 しかしそこにはBudガールは存在しない。そして飲んでみるとそこにアルコー ルは存在しない。やはりノンアルコールビールであった。ただし、サンドイッチ は激ウマ! 皆で舌鼓を打つ。すると特攻チームの人たちが戻ってきた。

団員H  「いやー、三角形の巨大な建物の展望台に行ってきましたよ!」

団員M  「なんか、従業員が結構適当でタダで入れてくれましたよ。本当はお金を取るみ たいですが……。」

私  「てゆーか、結構歩いたんじゃないですか? そういえばH団長は?」

団員H  「本屋に行かれましたが後はわからないなぁ……。ところで、美味そうな物食べ てますね?」

 数分間の談笑をし、午後から予定されている沙漠(注3)ツアーにそなえる事 にした。


注1: アザーンを日本語訳すると「アッラーは偉大なり×4。アッラーの他に神 は無しと私は証言する×2。ムハンマドはアッラーの使徒であると私は証言する ×2。礼拝に来たれ×2。成功の為に来たれ×2。礼拝は睡眠に勝る×2。アッ ラーは偉大なり×2。アッラー以外に神はなし×1。」となる。なお、上記ア ザーンはファジュル(暁の礼拝)のみで、ファジュル以外のアザーンは「礼拝は 睡眠に勝る」と言う部分がカットされる。
注2: 結局、サウジ国内に銀行口座を持っていないと大手の銀行では両替でき ないとの事だった。結果、リヤド市内のスーク(日本でいう市場)の両替所で超 低レートで換金。
注3: 筆者は大学院時代の師であるA先生から@「さばく」は「砂漠ではなく 沙漠」と教えられた。その為、本文においてもあえて沙漠と記載している。


筆者:鈴木 健        
アラブ イスラーム学院 研究員

(2008年2月12日更新)

                

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2008年 アラブ イスラーム学院