イスラーム社会
 

【女性の男性に対する権利2】


 前回から、結婚生活における妻の夫に対する権利のテーマに入った。今回はそ の権利の第5番目から再開しよう。

5.夫が彼の長い留守の後、夜間に帰宅しないこと:

 夫が長い期間家を留守にした場合、彼は妻に前もって知らせることなく、突然 帰宅するべきではない。そうした場合、もしかすると妻は夫を出迎えるにふさわ しい状態にはなかったり、しておくべき準備を整えていないかもしれないからで ある。妻が長い間留守にしていた夫を迎える準備というのは、つまり彼女が夫の 喜ぶ状態に全てを整えておくという意味である。そして前もって夫の到着を知っ ていれば、彼女は夫がいつ帰って来てもいい状態に家を準備しておくことができ る。そしてこの事は連絡手段が発達した現在、とても容易な事になった。

6.正当な理由もなく暴力を受けたり、遠ざけられたりしない権利:

 結婚の目的とはよい付き合い方と愛情、安定性と慈悲の念の継続であるから、 いかなる場合も夫が妻を遠ざけたり、妻が夫を遠ざけたりすることがあってはな らない。というのも夫婦間の断絶は、家庭全体に大きく悪影響を及ぼすからであ る。また正当な理由なくして夫が妻を殴ったりしてもならない。預言者ムハンマ ドは夫が妻を殴ることを、その醜悪さと低劣さを明確にした上で禁止した。彼は こう言った:「あなた方の妻を奴隷に対してするように打ち、同じ日の終わりに 彼女を求めるようなことをしてはならない。」
 しかしアッラーは、妻がアッラーが彼女に義務付けたことにおいて彼女が夫に 従わなかった場合、夫が彼女を遠ざけ、殴ることを許した。アッラーは仰られ た:「あなた方が不服従を恐れる妻たちにはまず戒め、それでも駄目なら褥を別 にし、それでも聞かなければ打ちなさい。そしてもしあなた方の言うことを聞く のなら、それ以上罰を継続してはならない。実にアッラーは高く、大きなお方で ある。」(女性章:34)それゆえ妻が夫の言う事を聞かない場合、彼はまず彼 女に訓戒を与え、それでも聞かないようだったら、褥を別に―つまり彼女を遠ざ け、彼女との性交渉を放棄する。もしそれでも彼女が夫の言う事を聞かないのな ら、夫は彼女に手を上げる権利を有する。しかしここで取り上げている打ち方と いうのは度を越さない、節度あるもので、骨折させるようなやり方や、ボクシン グのパンチのようなやり方ではない。というのもその目的は改善であり、それ以 外の何ものでもないからである。
 そして夫の妻に対するしつけに関して下った件の章「あなた方が不服従を恐れ る妻たちにはまず戒め、それでも駄目なら褥を別にし、それでも聞かなければ打 ちなさい。そしてもしあなた方の言うことを聞くのなら、それ以上罰を継続して はならない。実にアッラーは高く、大きなお方である。」(女性章:34)に は、アッラーが定めた段階的方法というものがある。そこには知と英知に溢れた お方の智慧が現れており、妻の不服従への解決策が含まれているのだ。というの も女性には様々な者がおり、前述の章に言及された「しつけ」の段階的方法の中 でも、各々にとって最も効果的なそれは異なってくるからである。

第1段階:
 よい形での訓戒。それは夫に逆らうことをやめて服従することで彼女が得る、 アッラーの報奨への希求を惹起することであったり、または夫への不服従行為を 継続することによるアッラーの懲罰への恐れを引き起こすことであったりする。 家庭内での何らかの罰をもって彼女に対すことは、彼女のためにも、夫のために も子供のためにも好ましくなく、多くの場合それは成功しない。妻は夫からの訓 戒を聞けば、彼への愛情と彼の元にあることの安寧、そして以前そうだった両者 間の良い関係の素晴らしさを思い出すものなのである。

第2段階:
 夫が妻と褥を別にし、彼女に背を向けて寝、以前そうだったような良い接し方 をしないこと。このような状況は女性にとって耐え難いものである。ゆえに彼女 は自分の不服従への罰に関して実感し始め、アッラーが命じた夫への服従という 正しい道に戻ることを考え始めるのだ。

第3段階:
 打つこと。この方法はその女性の性がどうにも悪く、アッラーへの報奨やアッ ラーの懲罰の訓戒を与えても効果がなく、彼女自身と家庭の福利も考慮すること なく、かつ褥を別にするという女性の心にとって強烈な罰を与えても、こたえな かったような者のためにある。この場合夫は妻に対し、アッラーが許された身体 的罰を行使することが出来る。これはそのようなタイプの女性を導くための、最 後の治療なのである。そして妻を打つことは離婚と比較すれば、非常に損害が少 ない行為である。もしこの方法でも妻がこたえなかったら、彼女はそもそも夫と 共に良い家族を築くのには適していなかったことになる。そして最後の薬という のは離婚という荒療治になるのだ。
 時に夫が度を越えて妻に対して暴力を振るい、傷害を与えるという話を聞く が、そこに正当な理由があるにせよないにせよ、そのようなことはイスラーム法 が定めたことではなく、むしろイスラームとは無関係なのである。そのようなこ とが出来るのは、人格的に欠陥のある悪い男だ。夫婦生活というのはそもそも安 寧と愛情、慈しみの念などというものから成り立っている。ゆえにもしそれらの 要素が失われれて両者の間に敵意や怨念、憎しみといった感情が生じ、それらを 解決するためのイスラームにおいて合法的な方法が成功しなかったら、最後の合 法的手段―つまり綺麗に離婚すること―が義務である。しかし夫が自らの肉体的 力と女性の弱さを利用したり、法を越えてまで妻の権利を犯したりすることは、 イスラームにおいて背反していることはおろか、サウジ社会における習慣におい ても到底受け入れられることではないのである。

7.妻の秘密を他人に明かさないこと:

 夫が妻の秘密を守ることは、妻の権利の1つである。彼は最も彼女から近い間 柄にあるのであるが、それを彼女の秘密を詮索する手段としてはならない。それ は妻もまた同じことである。預言者ムハンマドの教友アブー・サイード・アルフ ドゥリーによると、預言者はこう言った:「審判の日アッラーの御元で問われる 最も大きな信託は、男が自分の妻の元へ行き、そしてその後彼女の秘密を言いふ らすことである。」

8.妻を遠ざけることにおいて誓いを立てないこと:

 夫は誓いを立てて妻を遠ざけ、付き合いを断絶させてはならない。もしそうし たのなら4ヶ月以内には彼女の元に戻らなければならず、それ以上は許されな い。もし夫が4ヶ月以上そうすることに固執する場合、妻は離婚の申し出をする ことが出来る。夫が離婚しない場合、裁判官が彼女の離婚手続きを受け持つ。そ してこのことは、サウジのムスリム女性が権利を蹂躙され、単なる男性の所有物 でしかなく、意見や個性の尊重もないと主張する者たちへの十分な反論と答えで ある。

9.妻を嫌うがゆえに、夫が妻からの受け戻し金をせしめようと、彼女が嫌がるような害を与えてはならないこと:

 夫が妻を嫌い、そして彼女との夫婦生活を望まない場合、彼は彼女を離婚する べきである。そして彼女から何を奪ってもならない。また彼は婚資金の多く、あ るいは一部を返還させてせしめようと目論んで、彼女が彼に離婚を求めてくるよ うに仕向けさせるために、わざわざ彼女の嫌がることをしてもならない。アッ ラーはこう仰られている:「離婚は2回までである(3回目の離婚宣言までは、 まだ新たな契約や諸条件なしに復縁の機会がある)。その後は彼女を留め置いて よくしてやるか、綺麗に離婚してやるのだ。そして両者がアッラーの掟を守れな そうだと恐れる場合を除いて、彼女たちから何も取ってはならない。もしアッ ラーの掟を守れなそうだと恐れるなら、彼女が婚資金を返還してもよい。それが アッラーの掟、あなた方はその法を侵してはならない。アッラーの掟を破る者た ちこそ、罪悪者なのである。」(雌牛章:229)
 この章は夫婦が互いに上手くやっていくことにおいてアッラーの掟を守れそう だと思うのなら、互いに相手への権利を満足させなければならない、つまり夫婦 生活をよい付き合いをもって継続していく義務があることを意味している。また 夫が彼女と上手くやって行き、彼女の権利を満たしてやるという点においてアッ ラーの掟を守れなそうな場合は、彼女を綺麗に離婚しなければならない。そして 彼女の婚資金を返還させようとして、彼女に嫌がらせなどをしてはならない。
 またもし妻が夫に対してアッラーの掟を守る、つまり彼の権利を満たしつつ一 緒に暮らしていくことがどうしても無理に思われるなら、彼女は彼に婚資金のい くらかを返還して離婚してもらうべきだ。というのも彼との生活を疎んで離婚し たがっているのは、彼女だからである。このようにして彼女は嫌っている夫の元 に嫌々留まらずに済み、夫も嫌っている妻と嫌々一緒に暮らさなくても済むので ある。男性は離婚する権利があり、また両者、あるいは両者の内の一方が結婚に よってずっと憂き目を見ることはないのだ。このような規定は人間の性質と、心 地よい生活に調和する性質のものである。ある種の宗教は夫婦が嫌いあい、ある いは一方がもう一方を嫌っている状況でも、そこに付随するいくつかの問題ゆえ に離婚を認めない。しかしそのようなことでもっと悪い状況が生じる可能性もあ り、時にはそれがどうしても耐え切れない結婚からの脱却手段として、配偶者の 殺害事件にまで及ぶことすらあるのだ。

10.離婚の場合、定められた期間内に離婚すること:

 この権利について詳しく話す前に、イスラーム法に基いたサウジ社会における 離婚について、簡潔に話させて頂きたいと思う。
 離婚には完全離婚と、不完全離婚の2種類がある。完全離婚とは、夫が新規の 契約と婚資なしには、あるいは別の誰かと結婚した後でない限りは、彼女と2度 と復縁できないところの離婚方式である。その例としては、まだ肉体的に結ばれ ていない者たちの離婚、まだ生理の来ていない女性の離婚、既に生理の終わって しまった女性の離婚、3度離婚宣告をしたケース、などが挙げられる。一方不完 全離婚とは、新たな契約なしに夫が妻の元に戻る権利があるところの離婚方式で ある。
 さて離婚とは、修復不可能な程度にまで夫婦間の絆を断ち切ってしまうような ものではない。完全離婚ではなく、また妻が規定の期間内にある場合において、 夫は離婚後に彼女の元に戻る権利を有する。規定の期間とは第一、あるいは第二 の離婚宣告からで、その終了時期は離婚が起きた時の妻の状態に依拠する。つま り離婚された女性は生理がある者であったら、3度の生理を待つ。病気などの理 由によって生理がない者であったら、その期間は3ヶ月である。既に生理が終 わってしまった女性には、この規定期間は存在しない。また妊娠中の女性なら、 出産するまでが―例えそれが離婚後たったの1時間後であったとしても―彼女の 規定期間である。そして3ヶ月経過してまだ女性が出産していなければ、その時 点で完全離婚が確定する。ただ、彼女は出産を終えるまで他の男性と結婚するこ とは出来ない。
 ゆえに離婚された女性には規定期間があり、その間彼女は夫の家から出されて はならず、夫にはその間彼女への扶養と住居提供の義務がある。彼女はその間、 「前夫」以外の男性と結婚することは許されず、それは彼の方でも同様である。 このような理由から、この権利―夫が定められた期間内において妻を離婚するこ と―が定められたのである。その意味するところはつまり:夫は妻の離婚を決心 したら、彼女を定められた期間内において離婚しなければなない。もし妻が妊娠 中であったら、その期間は出産するまでである。また妻が生理のある女性だった ら、夫は彼女が清浄な状態にあり、かつ彼女と交わることなしに彼女への離婚宣 告をしなければならない。なぜなら彼女が生理中に離婚宣告したら、その期間は 長くなり、その期間に宣告したところの生理は期間のうちに計算されないからで ある。というのも規定の期間は清浄な状態によって計算されるのであり、生理に よって計算されるのではないからだ。こうして規定の期間は、最初の生理の後の 清浄な状態から始まる。また清浄な状態であっても交わった後で離婚宣告するな ら、それは彼女の子宮の保障にはならないことになる。預言者ムハンマドは妻の 生理中に離婚を宣告した者に対し、ひとまず彼女の元に戻り、そして彼女が清浄 な状態にある時に彼女と交わらずに離婚宣告するように命じた。この規定の秘密 は、2度目の生理が終わるまで彼女と一緒にいる時間を長くし、2人の間の嫌悪 感が消えてまた一緒に暮らしていく望みが出てくるように、ということではない だろうか。

 実際のところ離婚は、アッラーの定めた方の中でも忌避されるべき行いであ る。そこにはアッラーとその預言者の愛する結婚という契約の解消があり、また 結婚こそは人生における必要の中の必要であるからである。アッラーは結婚を推 奨し、その回避に対して警告した。そもそも結婚の目的というものは、その目的 を実現するための継続なのであり、離婚はその目的に反している。そしてこのよ うな状況と、離婚を忌避するサウジ社会の慣習が存在しながら、最近サウジ社会 における離婚率は高くなってきている。それは様々な深刻な原因の結果で、離婚 率は24%にまで上っている。

 離婚には、全世界に共通する様々な問題が付随する。そして“他者の不幸は自 らの不幸を和らげる”という諺ではないが、他国の離婚率はサウジのそれより遥 かに高く、また離婚後の常として起こる家族崩壊と妻や子供の権利の喪失も他国 において顕著である。一方サウジ社会では離婚が起こっても、個人の権利を保障 する法律と教育がまだ強く残っているのだ。

 さて次回は最後となる第4のテーマについて話そうと思う。それは離婚後の女 性の権利である。


執筆:ラシャー マンスーリー
アブドルアジーズ国王大学元研究員

                

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