イスラーム社会
 

【女性の男性に対する権利1】


 親愛なる読者の皆さん、私たちは引き続き「サウジアラビアにおけるテロの実 情」と銘打ったシリーズの中の「サウジ社会における個人の諸権利」一覧を見て いくことにしよう。私は初めに、まず現実のサウジ人像を明白にすることを御約 束した。それは読者が本当のサウジ人像を知り、それといわゆる「テロリスト」 像を比較できることが出来るようにするためである。そしてそれにより、両者の 実際の関係を知ることが出来ることだろう。こうした理由から、私は既に両親と 子供の関係について書き、それから夫の妻に対する権利について話した。そして 今日はこのテーマを続行し、女性の男性(夫・後見人を含む)に対する権利につ いて書いていきたい。女性の権利は非常に仔細に渡っており、かつ包括的である ことから、私はこのテーマを4つの主なセクションに分けて進めていくことにし た。それはつまり:「1.結婚前の女性の権利」「2.結婚する際の女性の権 利」「3.結婚生活における女性の権利」「4.離縁後の女性の権利」の4つで ある。

 セクション1:結婚前の女性の権利。5つの要点に分けて話すことにしよう。

1.満足のいく結婚相手の選択:

 女性を気に入らない相手に無理矢理結婚させることは、許されない。それは平 穏な生活や精神的な安らぎ、愛情、平静、慈悲の念などを失わせてしまうだろ う。そしてこれらは、イスラーム法における結婚生活の目的の中でも、最も重要 な要素なのである。それゆえ結婚に際しては女性の同意が条件付けられ、初婚の 女性の場合は「沈黙」が同意の証しとされる。というのも初婚の女性というのは 大方羞恥心が強く、はっきりと同意の言葉を言えないからだ。一方初婚でない場 合は、言葉によるはっきりとした結婚への同意が条件となる。そしてもし後見人 が成年女性を彼女の同意なしに結婚させ、彼女がそれを望んでいなかった場合 は、初婚であるないにかかわらず結婚は無効になる。イブン・アッバース(預言 者ムハンマドの教友の1人)はある時初婚の女奴隷が預言者のもとを訪れて、彼 女の父が彼女の望まない相手に結婚させた旨を告げたところ、それを聞いた預言 者が彼女に選択の権利を与えた伝承を伝えている。

2.女性の後見人が彼女のために良い夫を探し、縁談を作る権利:

 これはイスラーム法で認められていることであり、例えば預言者モーゼはある 善良な男から見初められ、彼の2人の娘の内の1人を結婚相手に勧められた。 アッラーはこう仰っている:「そして娘たちの1人は言った:“お父さん、彼を お雇いなさい。頑健で誠実な者ほど雇うのにふさわしい者はいないのですか ら。”(父親は)言った。“8年間お前が下働きしてくれたら、2人の娘の内の 1人をお前に嫁がせたい。”」(物語章:26-27)

3.花婿として問題ない者の申し出を拒否しないこと:

 花婿として問題のない者が女性に結婚の申し出をしてきた場合、その後見人は 彼女自身が拒否しない限り、それを拒否すべきではない。むしろ適当な男性が申 し込んできたら、それを受け入れなければならず、財産や地位などの理由で彼をはねのけてはならない。その「適当となる条件」についてここで詳しく立ち入る ことは出来ないが、宗教性が第一の目安であると言うことは出来よう。このよう にして第一と第三の権利により、女性は満足のいく適当な相手との結婚を阻まれ ることから保障される。また同時に、気に入らない相手に結婚を強制されること もないのだ。

4.男性は、相手の女性を気に入ったことを確認してから結婚の申し込みをする:

 それは結婚をして初めて、彼女への嫌悪感を募らさないためである。そしてそ れにより女性が不幸な人生を送り、離婚へと至る可能性を抑えるためである。そ してそうなってしまえば彼女の心は悲しみに覆われ、大きな被害を受け、少女期 に夢見ていた人生は喪失してしまうだろう。それゆえイスラーム法は、男性が結 婚の申し出をする前に相手の女性を見ることを定めている。そしてもし気に入る ようだったら申し込み、そうでなかったらアッラーが両者に別の縁を結んでくだ さるべく、辞退するのだ。これは男性女性両方への保険でもある。つまり結婚前 に相手を見ないで結婚してしまった者たちは、その後相手の容姿に何らかの気に 入らない部分を初めて見出すかもしれない。そして後悔し、それが結婚生活の継 続の障害となってくる場合すらありえるのだ。

5.可能な範囲での婚資金の譲渡:

 そして花婿は花嫁に婚資金を払う義務があるが、その金額は適度に控えるべき である。しかし花婿にそれだけの経済力があるならば、金額をそれに見合った高 額に設定してもよい。クルアーンにはこうある:「あなた方は花嫁たちに大金を 支払ったのだ。」(女性章:20)しかしそうでない場合、若者たちの結婚の障 害となるような高額の婚資金の設定は許されない。
 そして花嫁が花婿からの申し入れを受け入れ、婚資金において合意すれば、彼 女の全ての権利は彼女の父から花婿、つまり新郎の元へと移転する。そして彼女 はより一層の尊厳や配慮など、妻としての新しい権利を享受することになるの だ。

 セクション2:結婚する際の女性の権利:3つの主な権利にまとめられる。

1.婚姻のお披露目

 それは新郎新婦の両家族と隣人たちなどの、歓喜と幸福のお披露目である。そ こでは太鼓が叩かれたり、下品ではない出し物や余興などが行われる。この婚姻 のお披露目の規定は、合法的な男女の出会いの実現のためで、そこに何の汚れも ないことを示している。というのも合法的な結婚というものは醜聞などを呼ばな いためにも、人々に告知しなければならないのだ。その様なことが吹聴される結 婚というのは、アッラーとその預言者ムハンマドの手法に則ったものではない。 そしてこのような規定は、結婚関係にもない者たちの密通や非合法的行為を防ぐ 役割も果たしている。

2.晩餐への招待

 これもお披露目の一環として規定されていることであり、このよき日における 喜びやアッラーへの感謝の念などを意味している。そしてまたそれは、預言者ム ハンマドの行っていたことの実践でもある。

3.複数の妻がいる夫は、妻たちと一緒に過ごす日を特定しなければならない

 夫は花嫁が初婚であった場合は1週間、そうでない場合は3日間、彼女と一緒 に暮らさなければならない。その後はまた他の妻たちと代替制で定期的に過ご す。この新婚期の特別期間の規定の意味はアッラーこそがよくご存知だが、おそ らく新居地に移転してきた新妻が落ち着くようにとの取り計らいではないか。そ してこの期間新郎新婦が互いに満足し合うため、という意味も含まれているよう に思われる。新妻が初婚の場合、そうでない場合に比べて一緒に過ごさなければ ならない期間が長いのは、恐らく初婚の新妻は不安を抱えやすく、かつ新郎と早 く親しくなる必要性がより高いからではないか。

 セクション3:結婚生活における女性の権利

1.結婚・家庭生活において権利や義務とされる宗教的教えを、妻が学習する権利:

 そこには子供の権利と義務、両者の親類の権利、隣人の権利など、妻が知るべ き諸権利が含まれる。そして妻の教育は、家庭の各人の教育の基礎を意味する。 というのも母の教育は、その言葉やよき模範的行為をもって子供らへと受け継が れるからである。そして男性が最も重視すべきことは、家庭の幸福がそれによっ て成就するところの、妻の宗教教育である。そしてそれは特に彼女が若くして結 婚した場合、あるいは無教育である場合に留意しなければならない。無教育な妻 は夫や子供に対して迷惑をかけるだけでなく、自らの行為によって自らを害しえ る。というのも彼女自身、ある行為がどのような結果を導くのか分からないのだ から。
 そして夫は、彼の妻に教育があり、または彼より多くの知識を持っている場合 があることを心得ておく必要がある。それゆえ2人は宗教理解において互いに助 け合い、互いに学びあい、知識のない方が知識のある方から学ばなければならな い。というのも主たる目的はアッラーの教えの深い理解にあり、学ぶ先が男性で あるか女性であるかは重要ではないからだ。実際のところ、サウジにおける“幼 な妻”が現在希少になってきたと同時に、女性教師の数も増加してきている。こ のように夫婦どちらも生活における知識を備えてきている現在は、以前と比べて 物事が容易くなっていると言える。ゆえに夫婦は知識において共同作業すること も出来るし、知識だけでなく仕事すら分け合うことが出来るのだ。

2.妻が夫からよく扱われ、粗暴ではなく優しくされる権利:

 夫が妻とよい関係であり、彼女を優しくいたわりかつ優れた道徳をもって接す ることは、互いの愛情と親愛を結び、家庭の平安と妻の心の安らぎと静寂を生じ ることにつながる。そして夫婦は最も多く接触する者同志であるゆえ、2人の間 には沢山の問題が生まれ、時には視点の相違も生じることもある。それゆえ夫婦 は互いに辛抱し合い、互いの過ちを許し合わなければならず、そして互いの権利 をおろそかにしてはならないのである。そしてそうすることにより、夫婦生活に おける恒常的な分裂や不一致を防ぐことが出来るのである。
 妻の夫に対する服従と彼に対する義務の遂行、そしてそれをおろそかにせず彼 の権利を重んじることを命じられている一方、夫の方もまた妻の権利を遂行して それをおろそかにしないよう命じられている。それどころか、夫は妻のために自 らの権利を犠牲にすることすら求められることもある。彼は彼の気に入らない彼 女の短所を見出したら、彼の好きな彼女の長所を思い起こすべきである。そして 高徳を水とし、人の短所を火と見て、前者でもって後者を消し去るべきなのであ る。預言者ムハンマドは男性が女性に親切に接することと高徳を関連させて、こ う言った:「最も完成された信仰を持った信仰者は、最も高徳な者である。そし てあなた方の内で最もよき者は、あなた方の妻に対して最もよい形で接するもの である。」

3.必要なものを十分なだけ扶養される権利:

 妻に対する十分な扶養、そして彼女に回りの者と同じような程度の衣服を身に つけさせることは、夫の義務である。そしてもし夫が裕福であるなら、彼は吝嗇 と浪費をすることなく、妻に余裕をもった扶養をするべきである。預言者ムハン マドは、施しを始めるのは自らが扶養している者たちからであることを命じた が、妻こそは最もその優先権を持つ者であることに疑念はない。預言者ムハンマ ドは妻の権利について訊ねられ、こう言った:「あなたが食べる時に彼女にも食 べさせ、あなたが着る時に彼女にも着させなさい。彼女の顔を殴ってはならず、 不名誉を与えないようにしなさい。そして家の外まで彼女を追い出したりしては ならない。」

4.必要時に外出する権利:

 妻が夫の家に留まり、外出するのに夫の許可を要するというのは、夫の妻に対 する権利の1つであることは既に述べた。そしてアッラーは必要に応じ、女性が 外出することを認められた。また預言者ムハンマドの言葉もそれを裏づけしてい る。彼の妻アーイシャは言った:「ある夜、サウダ(預言者の妻の1人)が外出 した時、ウマル(預言者の教友の1人。第2代カリフ)が彼女を見つけ、そして 彼女と認識して言った。“サウダよ、私たちから身を隠さないのか?”するとサ ウダは預言者のもとに帰り、私(アーイシャ)の部屋で夕食をとっている彼にそ のことを告げた。すると彼は言った。“私はあなた方が用を足すために外出する ことを許した。”」
 これが女性が必要に応じて外出することへの、アッラーとその預言者からの許 可である。しかし妻はその際、夫の許可を得なければならない。

さて今日はこれ位にして、夫婦生活における妻の夫に対する権利の残りの10個 は、次回お話しすることにしよう。それでは。


執筆:ラシャー マンスーリー
アブドルアジーズ国王大学元研究員

                

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