イスラーム文化
 

【宗教が辿った諸問題】
 

自覚する、しないにかかわらず、「信仰を持つ」ということは古来より人間の本質の ひとつといえます。有史以来、人々が(形がどのようなものであれ)何らかの信仰心 を持っていたということは、今日までに世界中で発掘された遺跡の多くに神殿などの 宗教施設が存在していたことが確認されていることからみても明らかです。遺跡を発 掘し、このような事実を証明してきた考古学者たちが皆、熱心な宗教信仰者だったか らそういった証明がなされたのでしょうか? いいえ、違います。もちろん、熱心な ムスリム(イスラーム教徒)だったわけでもありません。あくまでも客観的な事実から導き出された結論なのです。

皆さんの中には「私は神というものをまったく信じていません」という人がいると思 います。でも、ちょっと考えてみてください。もし、あなたが自分の力の及ばない絶 体絶命の状況に陥ってしまったとき、どうしますか? 周りには、その窮地から救っ てくれる人は誰もなく、救ってくれる道具もなく、八方塞がりの状態です・・・あな たはその窮地から逃れることをあっさり諦めますか? 目には見えないある存在に、 「助けてくれ!」と願いませんか?

ムスリムたちはこの「ある存在」のことをアッラー(唯一無二の神)と呼びます。ク ルアーンのイスラー章、67節にはつぎのように書かれています。『あなた方が海上 で災難にあうと、かれ以外にあなたがたが祈るものは見捨てる。だがかれが陸に救っ て下さると、あなたがたは背き去る。人間はいつも恩を忘れる。』

● 宗教が辿った諸問題

アッラーが望んだ宗教は、本来の姿のまま純粋に残ることはありませんでした。それ どころか、健康な身体が病に侵された時にその本来の美しさが失われるのと同じよう に、時を経て、多くの人の手を経て、宗教はその本質と美しさを変化させてしまうこ とがあります。そして、その変化は、宗教本来の目的を達成させることを拒んでし まったのです。

目的達成をむしばむ病気(諸問題)とは大まかに分けると次のようになります。

1、 信仰心の弱体化 2、 宗教のビジネス化 3、 哲学、意見による宗教の染色 4、 内容の変換と変化 5、 支配欲 6、 宗教関係者、責任者たち 7、 宗教への無知 8、 欲望への従属 9、 宗教の分裂 10、一部の福音伝道と植民地主義 11、無神論と宗教分離への呼びかけ

これらの項目をひとつずつ説明していきましょう。

1、信仰心の弱体化

これはしばしば人間を支配する物質主義への傾倒、また人間を悪の道へと導こうとす る存在(シャイターン)からの圧力、宗教上の決まり事からの逃避、またその決まり 事に根拠のない勝手な自己流の解釈をつけること、によって起こります。これらのこ とは、信仰心を弱体化させ、個人及び社会の腐敗、またその腐敗の拡大を引き起こし ます。信仰心というものは、弱くなったり強くなったりするものです。人々の信仰心 の強さ、深さは、その人々が行う行動によって量ることができます。

信仰心の強化、増大に関して、至高のアッラーは次のように仰られています。『信者 はアッラーのことに話が進んだとき、胸が(畏敬の念で)おののく者たちで、かれら に印が読誦されるのを聞いて信心を深め、主に信頼する者たち』信仰心の弱体化につ いて、預言者ムハンマドは次のように言いました。「信仰心がしっかりしているとき に、泥棒が盗みを働くことはありません。」

2、宗教のビジネス化

幾人かの自称宗教家、布教者たちは、金銭的利益追求のため、また個人的利益追求の ために宗教の名を利用しました。彼らは最も悪い宗教家たちの例となり、しばしば宗 教に懐疑的な人々が宗教を批判する理由として挙げられます。

3、哲学・意見による宗教の染色

哲学者たちの何人かは、彼らが信仰する宗教が辿る道に、自分たちの哲学理論による 影響をあたえました。彼らは自分たちの哲学理論を人々に普及させるために、宗教と 哲学を混合させてしまいました。それは、宗教に似合わない洋服を着せたようなもの です。

4、内容の変換と変化

幾つかの宗教は、その宗教を擁する者たち自身の手で、変えられてしまいました。彼 らは自分たちの目的と、意識的あるいは無意識のうちにその宗教の崩壊のために働 き、それをアッラーからの言葉だと偽り、また人々が受け入れることができないよう なありえない物語や作り事を預言者たちに関してつくりあげてしまったのです。

5、支配欲

宗教家の中には、世俗的支配者たちとともに権力を握ることを望んだ者もいます。そ して専横支配者たちとともに歩み始め、宗教界における権力を手に入れたのです。そ の結果、人々は彼らを嫌悪し、彼らから逃れようとしたのです。さらに人々は、政教 分離、彼らの生活と宗教の分離を求めるようになりました。

6、宗教関係者、責任者たち

シニカルな支配者は時に、宗教家の中でも信仰心の弱い者たちに近づき、わざと彼ら に贅沢をさせました。そしてその後、彼らの心の弱さ、欲深さを嘲笑し、まるで宗教 家たちすべてが欺瞞に満ちた存在であるかのように人々に喧伝しました。

7、宗教への無知

宗教に対する無知は、人々の宗教への敵対・拒絶の最大の理由でした。人間というも のは自分の知らないことに関して敵意をもつことが多々あるからです。また、宗教へ の無知のため、しばしば祖先から受け継がれた習慣や間違った風習が世にはびこり、 宗教に悪影響をあたえました。多くの人々はそれらの悪習が宗教によるものだと思い ました。

8、欲望への従属

人間は物質的、肉体的な部分と精神的部分から成り立っています。人間の手によって 書き換えられていない宗教はこの2つの部分の調和を実現させます。信仰心が弱くな り、物質的、肉体的な部分が人間を支配してしまうと悪い欲望が動き、それは法と理 性を無視して人間を動かすようになってしまいます。

9、宗教の分裂

宗教の長い歩みの中で、宗教のある部分だけは信じ、ある部分は怠る人々が現れまし た。自分たちの気に入ったことのみ取り入れ、気に入らない事に関しては無視するの です。この宗教の分裂はアッラーが命じたことではありません。アッラーは次のよう に仰りました。『おまえたちは啓典の一部を信じ、残りの一部を信じないのか? そ のようなことをする者の結末は現世と来世での敗北であろう』

10、一部福音伝道と植民地主義

幾つかの植民地主義の国々は、近年、宗教に対し2方向の政治をとりました。国内では 宗教を弾圧したにもかかわらず、対外政策としては宗教の布教を熱心にしたのです。 そして軍事的、政治的、思想的、経済的殖民地化の手段として、一部の福音伝道者た ちを世界へと送り出したのです。

11、無神論、政教分離への呼びかけ

人間の手によって書き換えられ、理性が受け入れることができない幾つかの宗教に対 し、神を信じない無神論への呼びかけが世界中に広まりました。また、宗教はさまざ まな問題の原因であり、時代遅れなものであり、現代社会はそれを必要とはしなく なった、という理由で、人々を宗教から遠ざけようとする呼びかけもおこりました。

原文:マルワーン・シャイフー氏
翻訳:ファーティマ佐久間
アラブ・イスラーム学院翻訳・文化講座担当

 

 

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