アラブの出版物
アラブ諸国の主要都市で意外に目につくのが書店。その店頭に並んでいる雑誌 や単行本の種類も豊富なのに驚かされる。これが難解なアラビア語なのは残念だ が、書籍の豊かさをかいまみる思いがする。
アラブ諸国の政府はいま、国民全体の文化的水準を高めるため、古典ばかりで なく、文学叢書、歴史叢書、世界名作叢書といった形で廉価なペーパー・バック の本を大量に出版している。
また優れた著者には前金を渡して原稿を書かせたり海外の知識を吸収するため に、翻訳へ奨励金を与えているし、読書週間を設けて、国民に読書の習慣をうえ つけようとしている。
クウェート発行の「アルカバス」紙のようにカラーページをもつ日刊新聞もあ れば、アラブ諸国に25万部も普及しているというクウェート情報省発行の月刊 誌「アルアラビ」は、時事問題、歴史、宗教、科学、アラブ各国めぐり、西洋事 情といった盛沢山の内容である。
最近、急速に充実した月刊誌として成長してきているのはカタール情報省発行 の「ドーハ」で主として文芸、映画といった総合文化誌である。
注目すべきは、医学、科学、工学などの「アラビア語述語辞典」がベイルー ト、カイロで発行され始めていることだ。日本・イラクの協力で「電気通信」も 出版された。
児童向けの絵本などは、レバノン、エジプト、イラクなど幾つかの国でかなり 質的に高いものが出版されてきている。
レバノンはつい数年前までは、カイロと並ぶアラブきっての出版国であったば かりか、アラブ諸国の書籍の流通センターであったが、レバノン内戦のあおりを うけてその機能が回復していないのが惜しまれる。
筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)
(2007年7月24日更新)
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