アラブ案内
 

【アラブの芸能と芸術運動 1】

ヨルダンの国立民俗舞踊団。ジェラシュ
ヨルダンの国立民俗舞踊団。ジェラシュ。
チュニジアのネフタの民俗舞踊
チュニジアのネフタの民俗舞踊。

チュニジア南部の結婚式の行列
チュニジア南部の結婚式の行列。
ラバーバの弾き語り。エジプト
ラバーバの弾き語り。エジプト。
アレッポ大学生の勇壮な踊り
アレッポ大学生の勇壮な踊り。


舞踊と音楽
 アラブ諸国を訪れるとラジオテレビの中からリズミカルな音楽が流れ、色彩豊 かな民俗衣装を着た民俗舞踊団の踊りを見ることがある。アラブ諸国では今、長 い伝統の中で民衆の間に育まれてきた豊かな民俗芸能を掘り起こし、摂取し、ア ラブ独自の新しい国民文化を創り上げるナハダ・サカフィーヤ(文芸復興)運動 が進められている。各国政府は、民衆の中に人気のある民俗舞踊の向上に力を入 れている。

 こうしたアラブ諸国の民俗舞踊運動は、1958年頃から、まずエジプト、レ バノンなどで始められた。エジプトの「レダ民俗舞踊団」、「国立民俗舞踊 団」、レバノンの「カラカラ民俗舞踊団」、「フェイルーズ民俗舞踊団」などが 活躍してきたが、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、シリア、イラ ク、アラビア湾岸諸国など殆どのアラブ諸国でも著しい進歩をとげている。

 これはアラブ諸国で盛んに開かれている国際的フェスティバルで互いに学びあ い、技術を高め、レパートリーを豊かにしているためであろう。1978年春の 「イラク国立民俗舞踊団」の日本公演は反響を呼んだ。アラブの民俗舞踊の舞台 芸術化が進むにつれて、民俗芸能がもつ土の香りやバイタリティがだんだん稀薄 になっていく危険が存在することは否めないが、この国立イラク民俗舞踊団とい い、バクダットで見た結成間もないバスラ民俗舞踊団といい、この二つの要素を 失わず、かつ芸術的にもかなり洗練されたものである。

 一方、音楽の分野でも、古典アラブの音楽の再生、民謡や英雄談の弾き語りと いった伝統音楽の継承とともに西洋音楽から滋養分はできるだけ学びとり、イラ クやエジプトのようにオーケストラをもつ国もある。

 生前新曲を発表する演奏会の夜には、全アラブの国王から運転手までの耳をラ ジオに釘づけにしたという「東方の明星」オム・カルスームの歌は、しみじみと アラブの心を歌う民族的色彩の濃いものだが、エジプトの大作曲家、アブデル・ ワッハーブや神の声にも似ているといわれるレバノン最高の女流歌手フェイルー ズの音楽や歌は、アラブと西欧音楽を折衷させた国際的な音楽で、外国人には親 しみ易い。

 アラブ各国とも民族的遺産である民俗資料を蒐集するための「民俗文化セン ター」を設け、地方に残る歌謡、物語、踊り、衣装、楽器、慣習などの採集と整 理、研究や活用などに多くの専門家の力を動員している。

 急テンポな工業化による豊かな民俗的資産の消滅を何とか食いとめたいという 悲願がこもっているようだ。


筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)

(2007年5月15日更新)

                

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