アザーンが聞こえる風景
 

【祝福されたシャーム】
 

「祝福されたシャーム(現シリア・レバノン・パレスチナを含む地域)」という言葉がありますが、これは預言者ムハンマドの伝承『おお、アッラー、私たちのシャームに祝福あれ…』からきています。

私が留学していたシリアはこのシャーム地方に含まれるわけですが、この地方は昔から水が豊富にあり、緑や森、多様な果物が実る豊かな所として砂漠に住む者たちから憧れの目で見られていました。

また、シャーム地方は多くの預言者たちがその地で亡くなっていたり、この地方がイスラームの有名な学者たちを生み出した場所でもあるため宗教的・学問的にも祝福された土地とみなされています。

ロシアのイングーシ出身の友人は、「昔はロシアのムスリムの中にはハッジに行った後にシャーム地方に立ち寄り、土を持って帰った者すらいた。」と言っていました。まあ、この土を持ち帰る、という行為自体はイスラームでは意味のない行為ですが、それくらい憧れと尊敬の意をこめてシャーム地方を見ていたということです。

これから書くことは数十年前までは実際にシリアのダマスカスで見られた光景で、いろいろな先生方から聞いた事がある話です。

ダマスカスにはマルジェと呼ばれる地区があり、そのそばにはバラダ川という川が流れています。水不足が続くと枯れてしまうのですが、数十年前まではこのバラダ川には豊富な水が流れており、そのまわりには動物たちが余生を送る特別地域がありました。その地域は隔離されていたわけではないとは思うのですが、今まで人間たちに奉仕してきた家畜たちのうち、その義務を果たせなくなったもの(怪我や老齢のため)たちが、ここで餌などの心配なく安らかに余生を過ごす場所だったのでした。

想像してみてください。動物たちにそのような扱いをしていた人々ですから非常に精神的に・社会的にどれくらい豊かな状態で暮らしていたのだろう…と。

またシャーム地方の中で私が知るのは、自分が留学していた時期のダマスカスの一部でしかありませんが、通りを歩けばあちらこちらに冷水機や水道(道の壁から出ている)が設置されています。これはダマスカス特有のものだ、と聞きました。それ以外にも誰が飲んでもよいように、店の前などにはよくピクニック用の水タンク(シリアではトルモズと呼ばれていました。)が置いてあったものでした。誰ものどの渇きで苦しまないようになっているわけです。

アッラーによるシャームの祝福は様々な面に現れていますが、生活費などもこれに含まれるのではないでしょうか?

まず物価の安さ。年々物価が上がってきているとは言え、他のアラブの国々に比べると物価(特に食料品)は安いと言えると思います。

また多くの人が安月給あるいは無職で借金を抱えている状態であるにもかかわらず、何とか生活していけるということです。そして借金の存在があるにしても、どう考えても支出のほうが収入を上回っているのに生活が成り立っている所です。まともに考えていたら頭がおかしくなるような経済状態ですが、何故か大丈夫なのです!!

それからこれはシリアだけではないかもしれませんが、ホームレスがいないということ。どんなに貧しい人でも昼間は路上に座っている人でも夜がやってくるとそれぞれの家に帰っていくのです。

「シリアにいた」というと、「大丈夫なの?危なくないの?」という人が殆どですが、はっきり言って今の日本よりよっぽど安全で安心です。この原因はイスラームの教えによるもの、ムスリムたち、あるいはムスリム以外の者でも自分たちの家庭・社会を安全なところにしようという意思と努力があるためではないでしょうか?

「祝福されている土地だ」ということを、シリアに住み、そこを出た者は知ると言われています。私自身も今回幾つかのことを書き連ねましたが、このページには表わしきれない「何か」、「数学的計算では理解できない何か」がそこにはあるのです。アッラーがシャーム地方の祝福を更なるものとしてくださいますように…


筆者:ファーティマ佐久間
アラブ・イスラーム学院翻訳・文化講座担当

 

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

 

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2004年 アラブ イスラーム学院