アラブ青年の日記
 

【禁じられたポケモン】
 

2001年2月のことでした。サウディアラビアにいる弟が電話で「ポケモンのピカチュウは、『神は存在しない』という意味なの?」と私に尋ねたのです。この突拍子もない質問に私は驚き、「違うよ、その意味は『光るネズミ』だよ」と答えました。

弟によると、その時サウディでは反ポケモン運動が激しくて、「ポケットモンスターのアニメに登場するキャラクターの名前の意味は、『神は存在しない』、『イスラーム教徒が嫌い』だ。」などという腹が立つような嘘の噂がまことしやかに流れていたのです。その話が有名な掲示板での書き込みからはじまって、メーリングリストなどで急に広まったそうです。

日本の新聞の第一面で不良債権問題が取り上げられている時期に、サウディのある新聞の第一面ではポケットモンスター問題が取り上げられていました。その新聞には、日本大使館の文章と、サウード大学日本語学科教授の文章が載っていて、それらの噂の実体を明らかにしていました。

その問題が解決されたと思って安心していたら、数日後サウディアラビアでは最高宗教団体である(ハイア イフター)による、ポケモンの禁止令がインターネットのサイトで報道されたのです。このニュースを読んだ瞬間、泣きたくなるほどとても悲しくなったのと同時にとても不愉快になりパソコンを閉じてしまいました。なぜポケモンが禁止されるのか私には理解できませんでした! 嘘の噂に基づいて決めるなんてイスラームの教えに反することだし、最高宗教団体らしくありません。

それから、日本を訪れてきたサウディ人の友達にこの件について聞きました。その友達によると、ポケモンが禁止されたのは間違った噂によってではなく、話の中で進化するポケモン達は、ダーウィンの進化論を子供に教えるからだそうです。また、ポケモンのカードゲームには、イスラームで禁じられているギャンブル的な要素が含まれているため、禁止されたようであります。子供たちがお金でカードを買い、勝ち負けでお金を得たり失ったりすることになるからです。

実は、最近サウディアラビアのテレビでは、デジモンが放送されています。しかし、ポケモンの経験からよく学んだようで、毎回番組の最初に、モンスター達が戦う最中に自分の仲間を呼んで、代わりに戦いを続けてくれる場合もあるという説明が入っています。要するに、進化はしていません!

このように、サウディでは子供たちの番組にもそれらのようなチェックが入っています。その上、日本アニメーションのアラビア語バージョンには、キャラクターがとても丁寧な正規アラビア語で話していて、「アッラーにたたえあれ」などのようなイスラーム的なセリフを言うなど、アラブ社会にうまくカスタマイズされているのです。

最近、アラブ世界の中でもアニメ製作会社が立ち上がって、いくつかの作品をつくっていますが、子供たちからすれば、日本やアメリカのアニメーションの方が魅力的ですので、それらの会社にはまだ多くの課題が残されています。

今後、同じようなことが二度と起こらないように、それらのような噂を作る人たちに対して厳しく対応すべきだし、外国のアニメのアラビア語バージョンを作る際に、アラブ社会のことを考えた上で翻訳の段階から工夫することが必要になります。

最後に、どんなものに対してもメディアが報道するものをそのまま信じるのではなく、簡単に騙されないように自分でしっかり調査して、真実に辿り着くまで判断をしてはいけないと思いました。

執筆:ブカーリ イサム
早稲田大学 大学院理工学研究科
アラブ・イスラーム学院文化・広報担当

 

 

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