2002年の2月のことでした。1999年から毎年早稲田大学が企画する留学生スキーツアーに参加していました。今回9.11テロ事件の後となって、嫌な思いをするのではないかと心配しました。最初は行くのをやめようと思ったのですが、政治がどう変わろうと関係なくいつものとおり仲良く過ごせばいいと思い切って行きました。
実際に行って見ると、意外にも面白かったです。多くの国から来た留学生と仲よくできました。アーロンさんというユダヤ教徒の学生もいたけれど、彼とも普通に話したり盛り上がったりしていました。皆さんが楽しく時間を過ごしている姿を見れば、世界平和の実現が不可能だなんて信じられなかったです。
イスラーム教徒が食べられない料理があるということで、いつも決まったテーブルに座って、皆さんとは違うメニューが用意されていました。そして、ある日イスラーム教徒のメニューがサーモンでしたが、他の皆さんのメニューはエビフライでした。全員がおいしそうに食べ始めましたが、一人だけは一口も口にしませんでした。その人はアーロンさんでした。その時大事なことを思い出しました。ユダヤ教徒は海老を食べるのが禁止されているのです。そこで、自分の皿をもって、アーロンさんに「交換しましょうか?」とたずねました。アーロンさんは「助かります!」と答えて、お互いの皿を交換しました。
今でも多くのイスラーム教徒が海外に出て、食べる食事に困ったときは、ユダヤ人のレストランに行って、食事をします。イスラームの教えでは豚肉と酒を除いて、ユダヤ教徒の料理もキリスト教徒の料理も許されています。そして、モーゼ(彼に平安あれ)、イエス(彼に平安あれ)、ムハンマド(彼に平安あれ)をアッラーの預言者として信じています。
今のパレスチィナ問題以前、ユダヤ人は長い間イスラーム社会の中で平和に暮らしていました。ヨーロッパで多くのユダヤ人が殺されていた時も、その後もパレスチナ問題が起きるまでは共に平和に生活していました。私は、国民一人一人のレベルから文化交流と相互理解を深めれば、公正かつ平和な世界を実現することは決して不可能ではないと信じています。
執筆:ブカーリ イサム
早稲田大学 大学院理工学研究科
アラブ・イスラーム学院文化・広報担当 |
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