1997年の春のことでした。日本に来て半年がたち、簡単な日本語の会話ができるぐらいのレベルまでなっていました。ある日、日本語学校のカリキュラムの中で、ダーウィンの進化論について勉強をすることになりました。もちろん、日本語の勉強なので、一生懸命文法や単語や漢字などを覚えました。しかし、イスラーム教徒として、「アッラーが我々の先祖である最初の人間アーダムとハウワー(イブ)を創り、そして二人が子供を生み、そして現在に到っている」と、クルアーンに書かれているとおりに信じています。
この時、クラスで私がダーウィンの進化論を信じないと言ったのに対して、「イサムさんはイスラーム教徒ですから、別に信じなくてもいいですよ!」と先生が言われました。私のクラスは少し上のクラスだったので、私とフィリピン人の友達を除けば、皆中国又は台湾からの留学生でした。キリスト教徒であるフィリピン人の友達の意見は、確かに聖書でもアーダムとイブの話は書かれているのだが、それはあくまでも神様が望んでいたことだけであって、実際我々がサルから進化したと司教にも言われたそうです。もちろんそれはこの友達の意見だけで、世界中のキリスト教徒の皆さんがそのように考えているとは限りません。
しかし、なぜ宗教が科学と矛盾していると多くの人びとが考えているのでしょう・・・中世ヨーロッパにおける宗教のイメージとは、地球が回っていると言ったガリレオのような科学者が処刑されるなど、けっしてよいイメージとは思えません。
だが、イスラームは科学をとても大切にする宗教で、サウディアラビアでも高校の生物や地理学などの教科書の中で、科学的事実を勉強したと同時に、1400年前にクルアーンに載っている科学的事実も勉強していました。科学は、今になって技術が発達してようやく1400年前にクルアーンに掲載されていた科学的事実を証明できるようになりました。それらの理由を背景に、ダーウィンの進化論がただイスラームの教えに反しているから信じないのではなく、間違っていると科学的に証明しようと思ったのです。
当時日本語学校にいたトルコ、マレーシア人の友達に色々と情報を集めてもらいました。というのも二人が日本の大学で生物の勉強をすることになっていたからです。また、サウディの大学で医学部の勉強をしている仲間にも手伝ってもらいました。科学的にかつ論理的に「あなたのおばあさんはゴリラですか」という質問の答えを皆さんにどうしても聞かせたかったのです。
そして、1997年の9月にスピーチコンテストの日が訪れました。ようやくその答えを出せました・・・ (つづく)
執筆:ブカーリ イサム
早稲田大学 大学院理工学研究科
アラブ・イスラーム学院文化・広報担当 |
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