イスラーム世界の文化と美術
 

【金属製品】


シャー・タフマースブ1世の剣
シャー・タフマースブ1世の剣
イラン 1524-76年 鋼、金象嵌、105cm
 
スルターン・カーイトバイのランプ・ホルダー ピクシス(聖体容器)
スルターン・カーイトバイのランプ・ホルダー
エジプト・カイロ
1468-96年
真鍮、金銀象嵌、高さ1.6m
ピクシス(聖体容器)
おそらくシリア
13世紀中期
真鍮、金銀象嵌、本体の主要装飾は、キリスト教的内容であり、人物群像の帯状部分は、聖職叙階式を表したものである。高さ8.5cm



金と銀
中近東の人々は、古代から現在に至るまで、金銀を好んでいます。古代メソポタ ミアやイスラム以前のササン朝ペルシャでも盛んに金銀の装飾品や器が製作され ました。ところが、イスラム法が贅沢を敬遠していたにもかかわらず、金銀の器 やアクセサリー、調度品などを偏愛していたことと、イスラム世界が繁栄に伴 い、貨幣に用いる金銀が不足する事態に陥ってゆきました。当然貨幣に金銀を使 用する事が優先されるため、貴金属の食器は生産されなくなりました。

象嵌細工
貴金属の食器の代替品として、生まれたのが金属の象嵌細工です。真鍮や青銅を 地にして、金銀銅を嵌め込む技術です。この方法なら貴金属の使用を最小限に抑 える事ができ、かつ楽しむ事が出来ました。高度に発展した象嵌技術は、金属だ けに留まらず、木材、螺鈿等様々な組み合わせに適用されてゆきました。

その他の技術
金属の装飾技術には、のみで模様を刻む木補填的な技術のほか、イスラム諸国で は、七宝が好まれました。地金の表面に凹所をつくり、そこを粉末にした色ガラ スで埋め窯で焼き上げたものです。また、鍛金、打ち出し、メッキなどの技法を 用いて高品質の製品を作成しました。形式は、食器類に限らず、水差し、香炉、 燭台、鏡、火鉢などの日用品を始め、透かし彫り吊ランプ天球儀やアストロラー ベにも活用されました。

キリスト教のイスラム文化
イスラム諸国の職人達は、イスラム教徒に限っていませんでした。イスラムの教 えは実に公平であって、イスラム教徒か否かということよりも技術があるか否か で、仕事を得る事が出来ました。イスラム諸国で作成する品物についても、同じ 事がいえます。依頼があるならば、キリスト教の宗教儀式に使用する製品も作製 しました。高度な技術で造られた品物は、ヨーロッパ各地の教会で宝物として保 存された物もありました。この事は、金属製品に限らず、ガラス製品や織物など も同様でした。

イスラム文化は偏見のない異文化の吸収に始まり、また、異文化への偏見のない 開放的な文化提供で終息を迎えてゆきました。こうして文化や芸術は世界を巡っ て行くことが本来の姿ではないでしょうか。

筆者:渡辺 美代
アラブ イスラーム学院 学生

                

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