イスラーム世界の文化と美術
 

【水】


水の技術
砂漠が大半を占めるアラブ諸国において、水は永遠の課題です。その他イスラム 諸国の砂漠ではない地域でも、非常に乾燥しています。水を汲み上げたり運んだ り貯蔵することは、その長い歴史において何にも増して重要な意味を持っていま した。中世イスラムの科学と工学の技術における重要な進歩が水を確保するため に達成されたのは驚くべき話ではありません。
イスラム教徒は、イスラム教の生誕のはるか以前に発明されていた水車を改良し たばかりか、水を氷にかえて保存すると言った手法を含めて、様々な水の利用法 を考え出していました。
古代からの知恵、メソポタミアとエジプトにおける水車を大幅に改良し、固定し た地下水面をもった井戸を掘る技術を修得し、精妙な灌漑システムを作り上げま した。
ペルシャにおいては、数多くの井戸を相互に連結する地下水路(カナート)をさ らに整備することによって、遠隔地の水源から水を引くことができるように改良 しました。
生存のために不可欠な水脈の発見とその利用に精妙な仕掛けを開発したイスラム 教徒は、そうした仕掛けを小規模な機器に適用する技術を開拓しました。九世紀 には、温水と冷水を供給する装置も設計されています。「オートマトン」として 知られている数多くの独創的なイスラムの機械装置の中でも、おそらくもっとも 並外れて精妙なのは、12世紀から13世紀にかけて活躍した技師パーディヴ・ アル・ザマーン・アル・ジャザリーが設計した、水力学を応用した装置だと思わ れます。彼が設計した大規模な機械装置は、水を汲み上げて運ぶ為に設計された ものでした。その種の装置の中には、大型シャペル、車輪、歯車、輸送用の水 壷、原動力として牡牛などを使った複雑なポンプが組み込まれていたものもあり ました。
「人々に水を与えることは、最も尊い行いである。」と預言者ムハンマドは人々 に語ったと言われています。

地上の楽園
水脈を発見し、水を汲み上げて運ぶことは、イスラム世界の乾燥した地帯におい て、世紀を超えてきわめて重要な課題でしたが、それは、人々の生存と繁栄に とってそれが不可欠だったと言う事実には収まりきらない、精神的な意味を持っ ていました。イスラム世界の数多くの家庭においては、一日の仕事を終えて帰宅 するという事は、中庭の小さな噴水の前に直行すると言うことを意味しているこ とが稀ではなかったからです。噴水を目にし、その音に耳を傾けることは、仕事 と言う重荷と過酷な環境からの束の間の休息となっていました。イスラムの庭園 が記念碑的な性格をもった途方もない建造物へと発達したのも、水と無縁ではあ りません。大規模な、また、公共的な意味合いを持った庭園は、とりわけアンダ ルシア(アルハンブラ宮殿)とインド(タージマハール)においては、この世の ものとも思えない魅惑の世界をつくりだしています。それは、天国をモデルにし た、人類が達成することができる最上のもの、つまり、地上の楽園が意図されて いたものと思われています。

筆者:渡辺 美代
アラブ イスラーム学院 学生

                

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2006年 アラブ イスラーム学院