アラブとの架け橋
 

【本田 孝一氏 砂漠を筆で表すアラブ書道家!】



今回はアラビア書道家で、大東文化大学国際関係学部教授の本田孝一先生とのインタビューです。

Q1.東京外大卒業後、どのような縁があってサウジアラビアへ行かれたのですか。
偶然のことなんです。卒業した1969年当時は大学紛争の時期で、勉強があまりできないままに追い出されるように卒業したんです。その実、アラビア語も向こうのことも何も知らなかったので、これではいけないと、独学で3、4年勉強していたところ、サウジアラビアへいきませんか、という誘いをうけました。全然アラビア語もできなかったので、無謀ですよね。話せることといったら、「アッサラ−ムアレイクム」くらいでしたよ。サウジアラビアへ仕事で行った1974年当時は、サウジアラビアをはじめとした国々が自国の開発のために工業先進国の力を借りていました。日本もサウジアラビアで仕事をするという会社がたくさんあり、その中のひとつである、測量の会社で働いていました。現地の地図をつくる仕事で、地名の調査を4、5年していました。

Q2.アラビア書道との出会いは?
調査、収集してきた地名を地図に書くのが、石油省の航空測量局の書家たちなんです。その書家たちが川や山や砂漠に地名を細かく書くのですが、その様子をみせてもらいました。川の流れに沿って自由自在に文字を書く様子を実際にみて、すごいと思い、すぐに教えてくださいと教えてもらったのが最初です。

Q3.大英博物館に展示されている作品はどのようなものですか。また、訴えたいことはなんですか。
3部作「神様の顔」というものです。クルアーンの中に「神様の顔」に似たような表現が何箇所かにあって、その深い意味をもった文章をどう表現しようかと考えた結果にできたものです。三角形で左右対称の字になっています。よくみると、目や顔がみえたりするんですよ。私達を取り巻いている宇宙や私達の存在そのもの、神様に生かされているという思い、永遠みたいなものを、今までの経験の中から表現しようとしたものです。

Q4.テーマや色はどのように決めているのですか。また、制作にかかる時間はどのくらいですか。
永遠や神様を自分の中でどのように解釈して表現するか。サウジアラビアの砂漠やアラビア語にめぐり合って、それを題材にして作品として発表させてもらっているというだけです。色は、砂漠の澄んだ空気のなかで刻々と変わる色が強く印象に残っていて、とくに青には神々しさを感じましてね、作品にも青が多くありますね。何もないところから、デザイン、色、深い意味の文言をいかに書道的にバランスよくかくか、などいろいろな要素が必要なので、半年くらいかかってしまいますね。ひとつ作るとまた違う「神様の顔」もあるかもしれないと思って、いつの間にか3つできていました。

Q5.「パスポート初級アラビア語辞典」「パスポート日本語アラビア語辞典」の編集をはじめ、「たのしいアラビア語」など多くの著書がありますが、編纂にあたって、苦労したことをきかせてください。
日本で勉強しないままサウジアラビアに通訳として放り込まれて、すごく恥をかいたんですよ。測量会社の人から日本に帰れと言われましたが、帰り方もわからなかったので、怒られないようにがんばろうと努力した結果が辞書になったんです。すべて私の勉強のために書いてるんです。スークにいって、「これ何ていうの。」と聞いて全部カタカナでかく。ホテルに帰って辞書で調べて、次の日実際に使ってみる。そして通じるとそれで自分のものになる。そういう蓄積です。また、本などを読んで、使える用例があったらノートにメモをしておく。その結果が辞典や「たのしいアラビア語」なんです。今でもノートを作っていますよ。

Q6.現在、大東文化大学で教鞭を執っていらっしゃいますが、どのように教えていらっしゃるのですか。
アラビア語と文化を週3回教えています。文化的なものや、書道、映画、ビデオをみながらやっています。アジアの言葉9カ国語のうち、中国語、韓国語に続いて学生が多いですね。

Q7.どのような思いでアラビア書道、アラビア語を教えていらっしゃるのですか。
アラビア語は、受験率が低いからという不純な動機から選んだだけなんですが、縁があってずっと続けています。それでさらにアラビア書道にもめぐりあってその美しさに魅惑されてしまいました。以前から大学で油絵をやっていて美術的なことが好きなこともあって、それと書道とがドッキングして、さらに語学的なものも全部が一緒になって、それが今少しずつ出てきているんです。それがすごくうれしいんですね。もともと強い意思のもとでアラビア書道をやってきたわけではなくて、偶然みて引き込まれてきたわけなんです。ひとつのことを長くやっていると、芽や可能性が出てくるということを感じています。




インタビュアー:粟野真梨子
アラブ イスラーム学院HP取材担当

                

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