アラブとの30年 その2
 

【パエリヤが残したもの】
 

サウジアラビアでは、バブル経済華やかな1970年代から80年代にかけて、社会現象の変化が見られました。当時の風潮として多くの人が結婚披露宴をホテルで催しました。その際食事が多量に余り、無駄に捨てられるケースが見られるようになりました。従来のやり方ですと、来賓が食事を頂いた後は退席し、次に家族や子供達も参加し、残らずきれいに平らげます。主催者は、失礼のないように大量の料理を用意します。でも、ホテルではそうはいきません。あまった食事のお下がりの場が無いのです。

やがて、そんな風潮に疑問をはさむ市民の声が聞かれるようになりました。見栄を張り、大盤振る舞いをする行為に誰もが、自分達の行為は正しいのだろうかと反省し始めました。
「世の中には食事を満足に取れない人がいるのに何と罰当たりな行為か」「こんな事を続ければアッラーの罰を受けるのでは」「いや私たちの伝統的価値観では余るのが当たり前だ」等々の声が起こりました。

アラブ人は物を大切にします。なぜなら「地上に存在するもの総ては、人であり、動物であり、植物であり、鉱物であり、自然であっても、みんなアッラーからの借りものだ。」「アッラーが人類を創り、地上の代理人として任命したのは人類が、幸せに暮らすためである。」だから総てのものは大切に使うように、と教えられ、それを守っているからです。

ですから、人類は「アッラーの贈り物は大切につかわなければなりません。」むやみに、必要以上に消費したり、自然を破壊したりする事はマナーに反するわけです。自分の命は勿論、他人の命も尊重せねばなりません。

毎年の巡礼月の犠牲祭にマッカを訪れる巡礼者は約200万人を超えます。2005年は1月20日頃が犠牲祭です。その巡礼者が奉げる、いけにえの羊や、牛の数量は何千トンとなります。その肉はマッカから飛行機で必要としている人達の住む国へ贈られます。

アラブ人は必要な量を知り、食事も腹八分目が美徳です。まして無駄に食事を捨てたりする事は罰当たりだと思っています。資源を無駄使いしないアラビア人は、お金を無駄に使っていないか、正しい値段で買っているか、もっと良い方法は無いか、常に実践的に実験を繰り返します。アラビア人は「もったいない」という気持ちを持っています。自然と共生し、物を大切にする日本人と近いと思います。

日本でもパエリヤが好きな人は大勢います。スペインがアラブの国であった頃の名残です。もともとアラビア語のバーキヤ、残り物が語源です。我々のお茶漬けもそれに近い食べ物かもしれません。

日本人も、アラビア人も共に物を粗末に扱わず大切にする伝統をもつ国民です。アラブも日本人も共に清貧を尊び、質実剛健な生き方を誇りとしています。21世紀のスマートな生き方とは大量生産、大量消費、大量廃棄物から脱却し無駄な消費をやめ、地球の破壊を止め、人類を地上の代理人として送り込んだ神の意思を尊重し、この世に楽園を築くことが出来るかどうかだと思います。

執筆:片山 廣
アラブ イスラーム学院顧問

 

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