時は1970年代、まだ日本食の輸入がアラブ諸国で難しかった頃、コンニャクを他の食材と共に日本から取り寄せました。コンニャクにはデビルタング(悪魔の舌)という英訳がついていました。通関業者はそれをアラビア語訳し、通関を開始しました。なかなか許可は下りません。しばらくすると、税関から荷物の受取人が直接説明に来るようにとのことでした。
税管吏いわく「悪魔を何頭殺したのか」「わが国に何頭の悪魔舌を持ち込めば気が済むのか、絶対に許さん」。その真剣さに肝をつぶしながらも原料は芋であることを説明すると、納得を得ることができました。そして「芋なら芋と書け!」と言われました。
確かにその通りでした。
言葉を大切にする国アラブでは訳語も十分注意すべきであると、改めて感じ入りました。アラビア語は時代と共に表現力は増すでしょう。しかし聖クルアーンそのものは、未来永劫に変わりません。したがって聖クルアーンのアラビア語がもつ悪魔のイメージが、不快感を読んだのだろうと思っています。
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