アラブとの30年
 

【アラブ市場から消え去る日本人労働者】
 

アラブ人は同じ相手に、一寸離れて戻ってきても、再会のたびに挨拶をします。アッサラーム アライクム(平安があなたの上に)、挨拶の数は一日に数えきれません。

1990年代に入ると、日本はバブル経済の絶頂期でした。バブルの功罪でしょう。
これが今までと同じ日本人か! と思うくらい、中近東では日本人の質に大きな変化がおきました。地道に自分の職務に従事する事を忘れ、道徳を忘れ、ひたすら自分本位の日本人若者が増えました。日本は世界一だ! と驕り高ぶり、働かず、権利を主張し、財テクと称し札束を追いかける日本人たちが周りに増えてきました。もちろん、アラブ諸国でも次第にひんしゅくを買うようになりました。この頃の、日本人の驕り、たかぶりは留まるところを知りません。中近東に派遣される日本人の質もこの頃は急激に低下していきました。その証拠に、日本全体の風潮がそうさせたのか、中近東で見た日本人の若者は挨拶をしなくなりました。聞いたところでは、同じ職場にあっても挨拶は親しい友達以外はしないのが常識らしい。アラブ人とは極めて対照的です。

やがて国際社会では、個々の日本人労働者の国際競争力が低下してしまい、次第に挽回は無理な状況になりました。日本人の働く場所が狭められ、日本人の若者は次第に焦ってきました。しかし普段から勉強していない日本の若者は、語学力においては他のアジア諸国の若者とは格段の差をつけられました。更にITの分野では完璧に水をあけられ、アジア諸国の中でも最も進歩のない国に近いグループに位置するほど日本の若者の知識力は低下しました。そして日本人の若者は無力化していきます。国際競争力を失った日本企業は、社員教育をするために若者に時間と金をかける余裕がなくなり、日本本国内の事務所にまで、優秀で賃金の安い外国人を雇い始めました。

一方、企業は主要な若者スタッフの教育の必要に迫られました。企業教育なしでは日本社会では通用しないからです。勿論、国際社会ではそれ以上に通用しません。結果はどうなるか…日本人一人当たりの生産性低下、世界一高い高賃金水準に一層拍車がかかり、その結果、間接費の上乗せが更に国際競争力の低下を招きました。日本では家庭も、学校も、社会も、国を挙げて放蕩息子を育て、成人してから新たに成人前に本人が自ら行うべき教育を企業に押し付け、やり直す。何とも非効率的な国家になってしまったのです。そして、中近東でのプロジェクトや企業運営方法に大きな変化がおきました。技術者を除き、日本人は極力少なくする。

そして多国籍スタッフを採用したほうがはるかに良い仕事が安く出来るのです。今や世界一賃金の高い日本人は、語学力はなく、知識はなく、能率は悪く、権利意識は高く、常識に欠け、採用する側から見ると最も使いにくい存在になりはてました。世界中何処からでも質の良いスタッフを集める中近東は、かつては日本人にとって絶好の働き場所でした。今では技術系以外の分野では、日本人の競争力は低下の一方です。
 
今や日本では、コンビニで聞くコンニチワーといった耳障りな語尾を上げたわざとらしい日本語の挨拶を聞く時勢になりました。挨拶さえもマニュアル化し、団体で怒鳴るご時世です。


執筆:片山 廣
アラブ イスラーム学院顧問

 

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