アラブとの30年
 

【若者は教育される】
 

Mさんはサウジアラビアでは著名な商人で経営主です。由緒有る一族です。年齢は75歳くらいです。英語を話しません。でもどこの人とも穏やかに対応します。アラビア人は国際人です。昔から大勢の巡礼者を迎えていますから。彼の子供たちは英国、アメリカに留学し、勉強して戻ってきました。子供達は英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語とほとんどのヨーロッパ語を話します。

Mさんは一族の投資会社の宗主です。傘下に複数の会社を持ち、一族の若者に任せています。専門外の仕事でも興味を示します。取引は世界中を相手にしています。本業の内容に詳しく、暗算は速く、記憶力もよく、メモが無くとも打ち合わせ内容を暗記しています。Mさんは、何より従業員を大切に扱います。人をそらさない人柄で話題は豊富です。Mさんは多くのアラブの商人と同じく、無限責任会社の経営者です。破産したら個人のすべての財産を投げ出し責任を負うので、取引に当たっては極めて慎重な態度で臨みます。理想像を預言者ムハンマドと定めています。常に徳を以って尊敬される人物像を描いて行動します。

そのMさんがある時、アメリカ帰りの息子の一人を諭していました。当然、アメリカ帰りは目立ちます。アラブ人の美徳である、穏やかな物腰、丁寧な言葉使い、目上を尊重する態度、他人を決して侮蔑しない態度、忍耐強く相手を聞く態度、等々とは全く正反対の態度をとるからです。

Mさんは我慢できず息子に噛んで含めるように言いました。「愛する息子よ、私はあなたに伝えておくべき事がある。私の息子はアメリカで先端技術を学んで戻ってきた。これは私の誇りだ。しかしアラブの伝統は忘れないでほしい。もしアラブ人がもつ文化を台無しにするような行為をするならば、それは私を大いに悲しませる。仮に相手があなたを不遜な態度の持ち主と思い込めば、相手の仕返しは2倍になってあなたに降りかかる。あなたが役所に行き、申請書を提出したと思いなさい。役人も人間だ。まして彼は偉いと思っている。怒りを顔に出すことなく、彼は貴方の申請書を引き出しの奥に入れてしまう。その結果、再びその申請書は日の目を見ることはない」。

執筆:片山 廣
アラブ イスラーム学院顧問

 

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