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第11章
【ウンムハビーバ―その3】
 

母国からの手紙

 彼女を悲しみのなかに置きざりにして、時は過ぎて行った。がある日、しめ閉ざされた戸を激しくたたく音がして、ナジャーシーの侍女が面会を求めて来たのである。

 戸をあけたウンムハビーバに、侍女はナジャーシーからの伝言を伝えた。「王様がこう言っておられます。アラブの預言者とあなた様の結婚に関して、代理人を選ぶようにと……預言者が王様のもとへ、あなた様と婚約なさる旨、使者を送ってきたのです」

 ラムラは、二度も三度もくり返し述べてくれるよう侍女に頼んだ。そしてこの喜びの知らせを確認すると、自分の銀の腕輪をはずし、お礼としてその侍女に差し出した。

 そして、彼女の属するウマイヤ一族のなかで最も力あるムハージルであったハーリド・イブン・サイードにこの知らせを伝え、彼に彼女の結婚に関しての一切を委託したのであった。

 その晩ナジャーシーはハバシャに住むムスリムたちを呼んだ。ジャアファル・イブン・アブーターリブやハーリド・イブン・サイードをはじめ一行が集まった。

 ナジャーシーは、通訳をまじえてこう話した。「ムハンマド・イブン・アブドッラーが、私あてにウンムハビーバ・ビント・アブースフヤーンとの結婚の件で手紙をよこした。誰が彼女の代理人なのか」人びとは「すでにハーリド・イブン・サイードに彼女が委託しています」と答えた。ナジャーシーは彼の方を向くと、
「彼女をあなた方の預言者と結婚させなさい。彼に代わって彼女に4百ディーナールのサダークを送ることにする」そう言って袋からディーナールをあけた。ハーリドは立ちあがって言った。
「すでに預言者の言葉に答えました。ウンムハビーバ・ビント・アブースフヤーンを彼と結婚させました」そしてサダークを受けた。ナジャーシーが婚礼の祝宴を催した。「お坐り下さい。婚礼のさいに、祝宴を開くのは預言者たちの習わしです」

 そのあと人びとは、ウンムハビーバの家にお祝いを述べにやって来た。アブースフヤーンの娘は、移住したハバシャの地で信徒の母となったのである。翌朝、ナジャーシーの侍女が王妃たちからの贈物としてオウドとか、アンバルとか、ティーブといった各種の香を持って来た。ウンムハビーバは、サダークの中から50ディーナールをとり出し、こう言いながら差し出した。「昨日は何もお礼をするものがなかったので、腕輪を差し上げました。いまここに神(アッラー)からいただいたお金があります」侍女はそのディーナールを受けとることを辞退すると、こう言って腕輪も返却したのであった。「王様がこれをお返しするようにと、そして信徒の母様からは何一つ受けとらないようにとお命じになりました。また王妃様たちにも持っている香を贈るようにと命じられたのです」

 ウンムハビーバは、その贈物をありがたく受け取った。そして大切に保存して預言者の家まで持って来たのであった。預言者は彼女のもとにハバシャのいろいろな香があるのを見ても何もとがめなかった。

転載: 宗教法人日本ムスリム協会 「預言者の妻たち」
アーイシャ・アブドッラハマーン 著
徳増 輝子 訳

(2007年11月22日更新)














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2007年 アラブ イスラーム学院