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第7章
【ウンムサラマ―その2】
 

誉れ高き佳人―その2

 ウンムサラマの喪中が過ぎると、教友の中でも大物たちが彼女に結婚を申し込んだ。アブーバクルが申し込むと、彼女は控えめにその申し出を断った。オマル・イブン・アルハッターブも、やはりアブーバクルとおなじように受け入れてもらえなかった一人である。

 その後、ムハンマドが結婚を申し込んだとき、ウンムサラマはできることならその栄誉に授かりたいと願ったが、すでに若くもなく、また幼い子供たちをかかえていたので、アーイシャやハフサとともに預言者の家で生活することに気がねを感じ、ムハンマドのもとに断りの使者を送って、こう伝えさせた。
「私は、年もとっているうえに、子供たちもいます。とてもふさわしくない者ゆえ、お断りいたします」

 ムハンマドの返答はこうであった。
「あなたが年をとっているとおっしゃるなら、私はあなた以上に年寄りです。もし、あなたが妻たちの気持を心配しているのなら、主(アッラー)がその悩みをとり除いてくれることでしょう。一方、子供たちは神(アッラー)のものであるし、その使徒のものでもあるのです」

 婚姻は成立した。アーイシャも、ハフサも、できるかぎりの努力をして新しい夫人を快く迎えようと心がけたのだが、アーイシャにはそのような繕った礼儀正しさに耐えていけなかった。そして、ハフサに、胸のうちにこみあげる嫉妬と悲しみを、こらえきれずに打ちあけた。アーイシャはこう語った。「使徒様が、ウンムサラマと結婚なさると聞いたとき、人々が彼女の美しさを噂するので、すごく悲しい気持でした。でも、彼女に逢うまで我慢していました。実際逢ってみると本当に、人々の言う何倍も美しい人ではないですか! 私がハフサにそう言うと、ハフサは“それほどでもないと思う”と言って、ウンムサラマの年がもう若くないことをあげたのです。その後彼女をよく見ると、ハフサの言ったとおりでしたが、それでも私は、嫉妬を覚えたのです」

 ウンムサラマは、自分の入居が預言者の最愛の妻であるアーイシャに及ぼした影響の大きさを知って、内心うれしく感じていたに違いなかった。だからこそ、幼い娘のザイナブを、乳母の手に渡してでも夫の世話に専念したいと思ったのであった。

 彼女は預言者の家に、幼い娘を連れて嫁いできたが、あるとき彼女の乳兄弟にあたるアンマール・イブン・アルヤースィルが来て、「使徒に迷惑をかけているのだから、私によこしなさい」と言って彼女の膝の上にいた少女を連れて行った。

 アルイサーバによると、それまで使徒はウンムサラマのもとに来るたびに、「ズナーブ(少女ザイナブの幼名)はどこだ?」と言っていたという。

 ウンムサラマが、自分の力をよく認識していたことは確かである。アーイシャに対しても、また他の夫人たちに対しても、ムハンマドの家における自分の立場を守り、他人にとやかく言われることを嫌った。評判の高い彼女は、他にもいろいろ語られているように自分自身にかなりの自信があった。

 預言者の夫人たちが、夫にむかって頑固な反抗的な態度をとったとき、オマルが注意をうながそうとした際も、オマルの介入を断ってこう言った。
「おかしいですね。オマルよ、あなたは何ごとにも介入なさいますけれど、預言者とその妻たちの間にまで介入なさるのですか」預言者の家における自分の置かれている立場によほどの自信があったからこそ、この言葉が出たのである。

 預言者は、彼女を自分の家(注6)の人びとに加えている。伝わるところによると、ある日、預言者がウンムサラマや、彼女の娘のザイナブとともに過ごしていた日、ちょうどそこに娘のファーティマがアルハサンとアルフセインの二人の子供を連れて遊びに来た。預言者は二人を抱きかかえてつぎのように一節(アーヤ)を読んだ。
「この家の人びとよ、主(アッラー)の慈悲と祝福があなた方の上にあれ!」

 するとウンムサラマが泣き出したので、彼女を見て神(アッラー)の使徒は、「何を泣いているのか」とやさしく聞いた。彼女は「使徒様が私と娘のことを忘れてお家の方々のことだけそうおっしゃいますから」と言った。彼は「あなたもあなたの娘もこの家の人なのだよ」と答えた。

 ザイナブは、使徒のもとですくすくと成長していった。人びとが言うには、彼女は当時では最もすぐれた女性となり、また使徒の手で清めを受けたその顔には、年を経ても一向に若々しさが消えなかったそうである。また、預言者は養子としたサラマを、戦死を遂げた叔父のハムザ・イブン・アブドルムッタリブの娘の婿に選んだという。

(注6) アハル・アルバイト(お家の人々)と呼ばれる、預言者の身内である。

転載: 宗教法人日本ムスリム協会 「預言者の妻たち」
アーイシャ・アブドッラハマーン 著
徳増 輝子 訳

(2007年8月10日更新)














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2007年 アラブ イスラーム学院