ビジュアル学習 | 注釈 | 響き | 研究 | 朗誦者紹介 | 章名一覧
 

【第8章 戦利品】
(8:26〜8:33)
 

おまえたちが地において少なく、虐げられていた時を思い起こせ。おまえたちは、人々がおまえたちを襲うことを恐れていた。だが、彼はおまえたちを避難させ、彼の応援によって加勢し、良いものから糧を与え給うた。きっとおまえたちも感謝するであろうと。(8:26)

『地において』 マッカの地において。

『人々がおまえたちを襲うことを』 不信仰者がおまえたちを突如捕らえることを。

『彼はおまえたちを避難させ』 マディーナへ。

『彼の応援によって加勢し』 バドルの戦いの日に、天使たちによって強め。

『良いものから糧を』 戦利品を。

『きっとおまえたちも感謝するであろうと』 彼の御恵みに。

信仰する者たちよ、アッラーと使徒を裏切ってはならない。また、知っていながら、信頼を裏切ることも。(8:27)

この節は、アブー・ルバーバ・マルワーン・ブン・アブド・アル=ムンズィルについて啓示された。使徒はクライザ族の許に彼らを彼の裁定に従わせるためにアブー・ルバーバを遣わされた。すると彼らは彼に指示を求めた。そこで彼は(命令が)斬殺であることを彼らに手振りで示した。なぜなら、彼の家族と財産が彼らの許にあったからである。

イブン・イスハークによると、彼は彼らを 25日夜包囲し、しまいには彼らを要塞に追い込まれた。イブン・サアドにおいては15日、イブン・ウクバにおいては十数夜であった。そして、アッラーは彼らの心に恐怖を投じ給うた。そこで、彼らの頭目のカアブ・ブン・アサドは彼らに信仰することを提案して言った、「ユダヤ教徒の者どもよ、おまえたちにはおまえたちが目にしているような命令が下った。私はおまえたちに3つのことを提案する。どれでも望むものを取るがよい」。人々は言った、「それはなにか」。「この者と契約を交わし、彼を真実と認めることだ。アッラーに誓って、彼が遣わされた預言者であり、おまえたちの啓典のうちに見出す者であることがはっきりした。それで、おまえたちは命と財産と子供と女の安全を得るであろう」。すると、彼らはそれを拒んだ。そこで彼は言った、「これを拒むのであれば、おまえたちの子供と女を殺し、ムハンマドと彼の仲間の許に剣を抜いて出かけることだ。つまり、われらとムハンマドの間でアッラーが決着を着け給うまで背後に気がかりなものを残さずに剣を鞘から抜いて、ということである。そうすれば、たとえわれらが滅びたとしても、後に気がかりを残さずに滅びるであろう」。すると彼らは言った、「われらの子供と女なしにわれらにどんな生があろうか」。そこで彼は言った、「もしおまえたちがこれを拒むのであれば、今晩は土曜の夜であり、ムハンマドと彼の仲間たちはわれらに安心しているはずだ。それゆえ、攻めよ、おそらくわれらにはムハンマドと彼らの仲間に対して勝ち目があるかもしれない」。すると彼らは言った、「安息日を犯し、われら以前の者の伝統にない新奇な改変をなすのか。そんなことをした者には隠れもない(猿への)変化(クルアーン2章65節参照)に襲われたことはおまえも知っていよう」。
そこで彼らはアッラーの御使いに使いを送り、「われらにアブー・ルバーバ、つまりリファーア・ブン・アブド・アル=ムンズィルを送ってくれ。われらは彼にわれらの件に関し指示を求めよう」と言った。そこで、彼は彼らにアブー・ルバーバを送られた。彼らが彼を目にすると、男たちは立って彼に歩み寄り、女と子供は泣きながら彼に近づいたので、彼は彼らを哀れんだ。言った、「アブー・ルバーバよ、あなたはわれらがムハンマドの決定に従うべきと見るか」。彼は言った、「そうだ」。そして、自分の喉元を指して、それが斬殺であることを示唆した。アブー・ルバーバは言った、「アッラーに誓って、私はその場でアッラーと彼の使徒を裏切ったことに気づいた」。そこでアブー・ルバーバはやみくもに立ち去り、別の道を通った。アッラーの使徒が訪れた時には、彼はモスクの柱の一つに自分自身を縛りつけていた。彼は、「アッラーが私のなしたことを赦し私に顧み戻り給うまで決してこの場所から動かない」と言い、決してクライザ族の許に足を踏み入れない、とアッラーに誓い、また、「アッラーと彼の使徒を裏切る国を決して見ない」とも言った。アッラーの御使いはルバーバを遅いと考えておられていたが、その知らせが届いた時言われた、「彼が私の許に来たとしても、彼のために赦しを乞うことはしない。彼が彼のなしたことをなしたのであれば、私はアッラーが彼に顧み戻り給うまでは、彼を彼の居る場所から解き放ちはしない」。
イブン・ヒシャームによると、アブー・ルバーバは 6夜木の幹に縛りついたままで、礼拝の時間が来るたびに彼の妻が来て、礼拝のために彼を解いた。それから戻るとまた彼を幹に縛りつけた。・・・
アブドッラー・ブン・クサイトによると、アブー・ルバーバの悔悟の啓示はアッラーの御使いがウンム・サラマの家に居た時に下った。ウンム・サラマは言った。私はアッラーの御使いが夜中に笑われるのを耳にした。「なぜ笑っているのですか、アッラーが眠っているあなたを笑わせ給うたのですか」と私が尋ねると、言われた、「アブー・ルバーバが赦された」。彼女は言った、「アッラーの御使いよ、彼にその吉報を告げましょうか」。「したければ、しなさい」。そこで彼女は部屋の扉に向った。これは「仕切り」が彼女ら(預言者の妻たち)に置かれる(クルアーン33章53節参照)前のことであった。そして言った、「アブー・ルバーバよ、喜びなさい。アッラーはあなたに戻り給うた」。人々が彼を解こうと彼に走り寄った。すると彼は言った、「だめだ、アッラーに誓って、アッラーの御使いが彼の手で私を解いてくださるまでは」。朝の礼拝に向うため彼の近くを通りがかった際、彼は彼を解き放たれた。・・・

『信頼を』 宗教など、おまえたちが託されたものを。

『裏切ることも』 してはいけない。

おまえたちの財産と子供は試練であり、アッラーの御許には大いなる報奨があると知れ。(8:28)

『試練であり』 おまえたちにとって、来世のことから逸せるものであり。

『アッラーの御許には大いなる報奨があると知れ』 それゆえ、財産や子供を守ることによって、またそれらのために裏切ることによってそれ(来世)を逃してはならない。

信仰する者たちよ、もしおまえたちがアッラーを畏れ身を守るなら、彼はおまえたちに識別を与え、おまえたちの悪業を帳消しにし、おまえたちを赦し給う。アッラーは大いなる恩恵の主であらせられる。(8:29)

彼(アブー・ルバーバ)の悔悟について啓示を下し給うた。

『もしおまえたちがアッラーを畏れ身を守るなら』 悔い改めなどによって。

『彼はおまえたちに識別を与え』 おまえたちが恐れるものとおまえたちの間の。そして、おまえたちは救われるであろう。

アル=バイダーウィーによると、『識別』とは、真理と虚偽を識別するための心の中の導きのことである。あるいは、信仰者を高め、不信仰者を貶めることによって真理の者と虚偽の者を分ける神佑のことである。あるいは、曖昧な灰色事項からの脱出口、(現世と来世の)2つの世においておまえたちが警戒すべきものからの救出のことである。

『おまえたちを赦し給う』 おまえたちの罪を。

また、信仰を拒んだ者たちがおまえに対し、拘禁するか、殺害するか、追放しようとしておまえを欺いた時のこと。彼らは欺くが、アッラーも欺き給う。アッラーは最良の策略家であらせられる。(8:30)

『また』 ムハンマドよ、思い起こせ。

『拘禁するか』 拘束し、監禁するか。

『殺害するか』 彼ら全員(の連帯責任)による一人の殺害として。

『追放しようとして』 マッカから。

『おまえを欺いた時のこと』 彼らは集会所でおまえの件について話し合うために集まったのであった。

アンサール(マディーナの住民)がイスラームを受け入れると、クライシュ族の者たちはアッラーの御使いの件が深刻化し、明白化したことを知った。そこで長老の一団はアッラーの御使いの件で話し合うために集会所に集まった。長老には、ラビーアの息子ウトゥバとシャイバ、アブー・ラビーア、アブー・ジャフル、アブー・スフヤーン、タゥマ・ブン・アディー、アル=ナドゥル・ブン・アル=ハルス、アブー・アル=バフタリー・ブン・ヒシャーム、ザムア・ブン・アル=アスワド、ハキーム・ブン・ヒザーム、アル=フジャージュの息子ナビーハとムナッビフ、ウマイヤ・ブン・ハルフがいた。そこに、イブリースが老人の姿で現れた。人々が彼を見ると、尋ねた、「おまえは誰か」。すると、彼は、「私はナジドの長老で、おまえたちの集まりを聞きつけ、それに参加しようと思ったのである。おまえたちは私から意見と助言を欠くことはないであろう」。彼らは言った、「入れ」。そこで、彼は入った。さて、アブー・アル=バフタリーは言った、「私は、ムハンマドを捕らえ、縛って家に監禁し、きつく縛り、家の扉を穴を1つ残して塞ぎ、そこから食べ物や飲み物を投げ入れ、過去に詩人たちが滅びたように彼も滅びるまで時の経過を待ってはどうかと思う」。すると、アッラーの敵イブリース、つまり、ナジドの老人は叫んで言った、「その見解のなんと悪いことか。彼を監禁したとしても、彼は命令をおまえたちが閉じた扉の向こうから彼の仲間に発するであろう。そして、彼らはすぐにでもおまえたちに飛び掛り、おまえたちと戦い、おまえたちの手から彼を奪おうとするであろう」。彼らは言った、「ナジドの老人の言うことは正しい」。すると、アーミル・ブン・ルアイー家のヒシャーム・ブン・アムルが立ち上がって言った、「私の考えでは、彼をラクダに乗せて、おまえたちの間から遠ざけてはどうかと思う。そうすれば、彼がなにをなそうと、またどこに行こうと、おまえたちに害をなすことはなく、彼の問題から息をつくことができるであろう」。すると、イブリースは言った、「なんという見解か。おまえたちはおまえたちのうち愚か者が従う者を支持し、彼をおまえたち以外の者の許に追放するのか。彼の発話の甘美さ、彼の舌の雄弁さ、そして彼の言葉によってそれを聞いた心が捉えられるのを見ていないのか。アッラーに誓って、もしおまえたちがそのようなことをすれば、彼は他の者たちのところに行って心を捉え、彼らと共におまえたちの許にやって来て、おまえたちを国から追い出すに違いない」。彼らは言った、「ナジドの老人の言うことは正しい」。そこで、アブー・ジャフルが言った、「アッラーに誓って、私がこれよりほかにはないと考える見解をおまえたちに示そう。クライシュのあらゆる部族から血統の優れた若者を連れ出し、若者それぞれに良く切れる剣を与え、一斉に一人の一打として彼に打ち込むのである。彼らが彼を殺せば、彼の血は部族すべての者に飛び散り、ハーシム家のこれらの一族も、クライシュ族すべてに戦いを挑もうとは思わないであろう。彼らがそう判断したら『血讐賠償金を取ろう』と言うであろうから、そうしたらクライシュ族がその賠償金を払えばよい。すると、呪われたイブリースは言った、「この若者が言ったことは正しい。彼はおまえたちのうちで最も良い意見の持ち主だ。彼の言ったこと以外にないと私は思う」。こうして、彼らはアブー・ジャフルの言葉に一致し、その言葉の下に解散した。そこで、ジブリールは預言者の許に行き、彼にこのことを告げ、彼が泊まっていた寝床には泊まらないように命じた。そして、この時、アッラーは彼にマディーナへの脱出を許可し給うた。夜になると、彼らは彼の家の扉に集まり、彼が寝付いたところで彼を襲うために、彼を監視した。アッラーの御使いはアリー・ブン・アビー・ターリブに彼の寝床で夜を過ごすように命じて言われた、「私の上着を着て寝なさい。そうすれば、おまえが嫌うことが彼らからおまえに対して生ずることは無い」。それからアッラーの御使いは庭からではなく、まさしく扉から外に出られた。しかし、アッラーが彼らの視覚を捉え給うたため、彼らの誰ひとりとして、彼を目にした者はいなかった。彼は、至高なる御方の御言葉『ヤースィーン・・・そして、われらは彼らの前にも後ろにも障壁を置き、彼らを覆った。それで彼らは見ることができない』(第36章[ヤースィーン]1−9節)を読みながら、手に握った土埃を彼らすべての頭の上に撒き散らし、それから、望むところに向かわれた。すると、彼らと共にいなかった者の中で彼らの許に来る者があり、言った、「おまえたちは何をここで待っているのか」。彼らは言った、「ムハンマドである」。彼は言った、「アッラーはおまえたちの目論見を挫き給い、ムハンマドはおまえたちの頭に一人残らず土埃を置いて出て行った。おまえたちはおまえたちに何が起きたか見えないのか?」。そこで男たちがそれぞれ自分の頭に手をやると、土埃があるのに気づいたのだった。
イブン・アッバースによると、その砂をかけられた者はみな、バドルの日に不信仰者として殺された(cf., al=Sāwī, Hāshiyah al=Sāwī, vol.2, p.116)。

『彼らは欺くが』 おまえを。

『アッラーも欺き給う』 彼らを。彼らが企むことをおまえに啓示で告げ、おまえに脱出を命じ給うことによって、おまえのことを取り計らうことで。

『アッラーは最良の策略家であらせられる』 彼らのうち、それに最も精通し給うた御方。

彼らは、われらの印が読み聞かされると、言った、「われらはすでに聞いた。われらが望むなら、それと同じものをわれらも言ったであろう。まことに、これは昔の者の作り話にすぎない」。(8:31)

『われらの印が』 クルアーンが。

『言った』 これは、アル =ナドゥル・ブン・アル=ハルスが言ったものである。彼は、(クーファの近くの町)ヒーラに商売に来ていた。彼は外国の話の本を買い、それについてマッカの者に語っていた。

『われらはすでに聞いた』このようなものを。それは、律法の書と福音書である。

『まことに』 「‘ in」は、否定詞「mā」の意。

『これは』 クルアーンは。

『作り話』 大嘘。

また、彼らが言った時のこと。「アッラーよ、もしこれがあなたの御許からの真理ならば、われらに空から石を降らせ、われらに痛烈な懲罰を与え給え」。(8:32)

『これが』 ムハンマドが読み聞かせるものが。

『あなたの御許からの』 (あなたの許から)下された。

『痛烈な懲罰を』 痛苦の。それ(それがあなたの御許からのものであること)を否定することに対し。

『与え給え』 アル=ナドゥルなどは嘲笑し、また自分には洞察力があり、虚偽を証明したと妄想してこう言ったのである。

だが、アッラーは、おまえが彼らの間にいながら彼らを罰し給うことはなく、彼らが赦しを乞うているのに彼らを罰し給う御方ではない。(8:33)

『おまえが彼らの間にいながら』 至高者は仰せられた。なぜなら、彼が懲罰を下し給えば、それは万物に及ぶので、共同体からその預言者と信仰者が脱出した後からでなければ、それを罰し給わないからである。

『おまえが彼らの間にいながら』とは、おまえがマッカの地に住んでいながら、ということである。それゆえ、バドルの戦いで、預言者が彼らの間にいながら彼らに懲罰を下し給うたこととは矛盾しない。なぜなら、それは彼がマッカから脱出された後のことだからである。

『彼らを罰し給うことはなく』 彼らが求めたものごとによって。

『彼らが赦しを乞うているのに』 彼らがタワーフ(カアバの周回礼)の最中に、「あなたのお赦しを。あなたのお赦しを」と言っている間は。あるいは、これは、彼らの間の虐げられた信仰者たちのことだとも言われる。アッラーは次のように仰せられているからである。『もし彼らが離れ離れになっていたならば、われらは彼らのうち信仰を拒んだ者たちを痛烈な懲罰で罰したであろう』(第48章[勝利]25節)。


転載:「ジャラーラインのクルアーン注釈」
中田香織 訳
中田 考 監訳
日本サウディアラビア協会出版

(2008年2月15日更新)



↑UP↑








日本語トップ | リンクについて | サイトマップ | ヘルプ



2008年 アラブ イスラーム学院