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【第10章 ユーヌス】
(10:71〜10:88)
 

彼らにヌーフの知らせを読み聞かせよ。彼が彼の民にこう言った時のこと。「わが民よ、私が居ることや、私がアッラーの印を思い出させることがおまえたちに大儀であっても、アッラーに私は一任した。それゆえおまえたちの事柄を決定せよ、おまえたちの共同者たちも。それから、おまえたちの事柄がおまえたちにとって覆われたものであってはならない。それから、私に対して遂行せよ、待つことはない」。(10:71)

『彼らに』 マッカの不信仰者たちに。

『知らせを』 情報を。

『読み聞かせよ』 ムハンマドよ。

『彼が彼の民にこう言った時のこと』 『ヌーフの知らせ』を言い換えたもの。

『私が居ること』 私がおまえたちの間に留まること。

『私がアッラーの印を思い出させることが』 私のおまえたちへの訓戒が。

『大儀であっても』 苦痛であっても。

『おまえたちの事柄を決定せよ』 おまえたちが私に対してしようとすることを決意せよ。

『おまえたちの共同者たちも』 『も(wa)』は「ma‘a(一緒に)」の意。

『覆われたものであってはならない』 隠れたものであってはならない。そうではなく、それを表せ。

『私に対して遂行せよ』 おまえたちが望んだことを果せ。

『待つことはない』 猶予することはない。私はおまえたちのことなど気にかけていない。

「もしおまえたちが背き去っても、私はおまえたちに報酬を求めたわけではない。まことに、私の報酬はアッラーにあるほかない。私はムスリムのひとりとなることを命じられたのである」。(10:72)

『もしおまえたちが背き去っても』 私の訓戒から。

『報酬を』 それに対する報奨を。

『求めたわけではない』 それでおまえたちが背き去ったわけではない。

『まことに・・・ない』 「‘ in」は否定詞「mā」の意。

『私の報酬は』 私の報奨は。

『私はムスリムのひとりとなることを命じられたのである』 彼(アッラー)の掟に従い、彼の命令には背かず、彼以外のものを恐れない、ということである。あるいは、あらゆる苦難に対して服従する者である。

だが、彼らは彼を嘘だと否定し、そこでわれらは彼と彼と共にいた者を帆船に救い出した。そして、彼らを後継者とし、われらの印を嘘と否定した者たちを溺れさせた。警告を受けた者たちの結末がどのようであったかを見よ。(10:73)

『帆船に』 船に。

『彼らを』 彼と共にいた者たちを。

『後継者とし』 地上での。

『溺れさせた』 洪水によって。

『警告を受けた者たちの結末がどのようであったかを見よ』 彼らの破滅を。このようにわれらはおまえを嘘だと否定する者に対処するのである。

それからわれらは彼の後、使徒たちを彼らの民に遣わした。彼らは彼らの許に明証と共に来たが、以前に彼らが嘘だと否定したことを信じることはなかった。こうして法を越えた者の心に封をした。(10:74)

『彼の後』 ヌーフの後。

『使徒たちを彼らの民に遣わした』 イブラーヒーム、フード、サーリフなどの。

『明証と共に』 奇跡と共に。

『以前に』 つまり、使徒を彼らに遣わす以前に。

『こうして法を越えた者の心に封をした』 封印をした。それでそれらの者の心をわれらが封じたように、その民は信仰を受け入れないのである。

それから彼らの後、われらはムーサーとハールーンをフィルアウンと彼の重臣たちの許にわれらの印と共に遣わしたが、彼らは思い上がった。彼らは罪深い民であった。(10:75)

『彼の重臣たちの許に』 彼の民の許に。

『われらの印』 9つの。

『彼らは思い上がった』 それを信じることを拒んで。

彼らにわれらの許から真理がもたらされると、彼らは言った、「まことに、これは明白な魔術である」。(10:76)

『明白な』 明らかで、見え透いた。

ムーサーは言った、「真理に対し、それがおまえたちにもたらされると、言うのか。魔術か、これが。魔術師が成功することはないというのに」。(10:77)

『真理に対し、それがおまえたちにもたらされると、言うのか』 「それは間違いなく魔術である」と。

『魔術か、これが』 それをもたらした者は成功をおさめ、魔術師たちの魔術を暴いて無力化したというのに。

この2つの疑問文は非難の疑問文である。
第1の疑問文は『・・・言うのか』。第2の疑問文は『魔術か、これが』。

彼らは言った、「おまえがわれらの許に来たのは、われらがその上にわれらの祖先を見出したものからわれらを逸らせるためである。そして、この地で要職がおまえたち二人のものとなるためである。だが、われらはおまえたちを信じはしない」。(10:78)

『われらがその上にわれらの祖先を見出したものから』 偶像の崇拝から。

『われらを逸らせる』 われらを引き離す。

『この地で』 エジプトの地で。

『要職が』 王権が。

『要職が』は『なる(takūna)』の主語で、『おまえたち二人のものと』が述語である。

『われらはおまえたちを信じはしない』 真実を語っていると認めはしない。

フィルアウンは言った、「あらゆる物知りの魔術師を私の許に連れて来い」。(10:79)

『物知りの』 魔術の知識において卓越した。

魔術師が来ると、彼らにムーサーは言った、「おまえたちが投げるものを投げよ」。(10:80)

『彼らにムーサーは言った』 彼らが彼に、「おまえが投げるか、それともわれらが投げるか」と言った後に。

彼らが投げると、ムーサーは言った、「何がおまえたちのもたらしたものか。魔法か。まことに、アッラーはそれを無効にし給う。まことにアッラーは悪人の行いを正し給わない」。(10:81)

ハスフ&アースィム版:
彼らが投げると、ムーサーは言った、「おまえたちがもたらしたものは魔法である。まことに、アッラーはそれを無効にし給う。まことにアッラーは悪人の行いを正し給わない」。(10:81)

『彼らが投げると』 彼らの紐と杖を。

『何が』 『何が(mā)』は疑問詞で、主部。

『おまえたちのもたらしたもの』  その(『何が』)の述部。

『魔法か』 それ(先の疑問詞「mā」)を言い換えたもの(疑問詞のハムザ「‘a」と定冠詞のハムザ「‘al」の2つのハムザがある)。1つのハムザとして読む読誦法によれば、これは述部で、関係代名詞の「・・・もの(mā)」が主部となる(「おまえたちがもたらしたものは魔法である」)(監訳者注:ハスフ&アースィム版ではこちらの読誦法を採る)。

『アッラーはそれを無効にし給う』 消滅させ給う。

アッラーは彼の御言葉によって真理を実現し給う。たとえ罪人がそれを嫌っても。(10:82)

『彼の御言葉によって』 彼の約束によって。彼の命令、規定によって。

『真理を実現し給う』確定し、現し給う。

ムーサーを信じたのは、彼の民のうちの一族のほかになく、彼らを迫害するのではないかとフィルアウンと彼らの重臣たちを恐れていた。まことにフィルアウンはかの地で増長し、まことに彼は度を越した者のひとりであった。(10:83)

『ムーサーを信じた』 ムーサーに従った。服従の意味の信仰(‘īmān taslīm)と肯定の意味の信仰(‘īmān tasdīq)の違いは、前者は目的語に前置詞(li)を取り、後者は前置詞(bi)を取ることである。

『彼の民』 フィルアウンの。

一説では、「彼」はムーサーを指す。

『・・・のうちの』 (彼の民の)子孫のうちの。

『一族の』 一部の。

『・・・のほかになく』威力比類なきアッラーは、ムーサーがもたらした明白な大いなる奇跡について言及し給い、そのような奇跡を目にしながらも彼の子孫しかムーサーを信じなかったことを告げ給うた。これは、彼の預言者ムハンマドに対する慰めである。なぜなら、彼は自分の民が信じることをたいへん気にかけ、彼らが彼を信じることから背を向け、不信仰と否定に留まったことに苦しんでおられたため、アッラーは彼に、彼には預言者たちの模範があることを示し給うたのである。なぜなら、ムーサーがもたらした奇跡はとてつもないものであったが、それにもかかわらず、彼を信じたのは一族のみ、つまり民のわずかなものだけだったからである。

『彼らを迫害するのではないかと』 彼らを懲罰によって彼の宗教から逸らせるのではないかと。

『かの地で』 エジプトの地で。

『増長し』 奢り高ぶり。

『彼は度を越した者』 主を自称することによって、法を犯した者。

ムーサーは言った、「わが民よ、もしおまえたちがアッラーを信じるなら、彼に一任せよ。もしおまえたちがムスリムならば」。(10:84)

すると、彼らは言った、「アッラーにわれらは一任します。われらが主よ、われらを不正の民の試練となし給うな」。(10:85)

『われらが主よ、われらを不正の民の試練となし給うな』 つまり、彼らをわれらに対して勝利させ給うな。そうなれば、彼らは自分たちが真理の上にあると思い、彼らはわれらによって試練を受けることになるからである。

「あなたの御慈悲によって不信仰の民からわれらを救い出し給え」。(10:86)

われらはムーサーと彼の兄弟に啓示した。おまえたちの民のため、エジプトで住まいを手に入れ、おまえたちの住まいをキブラとし、礼拝を守れ。そして、信仰者たちに吉報を伝えよ。(10:87)

『手に入れ』 獲得し。

『おまえたちの住まいをキブラとし』 恐れから守られて、礼拝する場所とし。フィルアウンは彼らに礼拝を禁じていたのであった。

彼らのキブラ(礼拝の方角)はカアバ神殿であった。エルサレムであった、とも言われる。
アッラーはムーサーと彼に従った者に、自分たちの家で隠れて礼拝を行うように命じ給うた。それは(敵たちが)彼ら(信徒)を圧倒し迫害し、その宗教から逸らせることがないようにであり、それはイスラームの初期のマッカでのムスリムの状態と同じであったのである(Hāshiyah al=Sāwī, vol.2, p.200)。

『礼拝を守れ』 全うせよ。

『信仰者たちに吉報を伝えよ』 勝利と楽園の。

ムーサーは言った、「われらが主よ、まことにあなたはフィルアウンと彼の重臣に現世で飾りと財産を与え給いましたが、われらが主よ、それは彼らをあなたの道から迷い去らせました。われらが主よ、彼らの財産を消し去り、彼らの心を頑なになし給え。彼らが痛烈な懲罰を目にするまで信じないように」。(10:88)

『あなたの道から』 あなたの宗教から。

『それは』 それら(現世の飾りと財産)を彼らに与え給うたことは。

『迷い去らせました』 結果的に(「li-」は結果のlam)。

アル=サミーンによれば、このlāmには3つの解釈がある。第1の説によれば、これは理由のlāmで、「あなたが彼らに与え給うたものを与え給うたのは(破滅への)段階的な誘き寄せとしてである」という意味である。第2の説によれば、それは結果のlāmである。(・・・)第3の説によれば、彼らに対する祈りのlāmで、「彼らが、今いる迷いの状態に留まるように。彼らが迷ったままでいるように」と言ったかのようである。

『彼らの財産を消し去り』 変形させ。

カターダによると、彼らの財産、金銭、作物、宝石は石となった、と伝えられる。

『彼らの心を頑なになし給え』 その上に封をし、閉ざし給え。

『痛烈な』 痛みを与える。

『懲罰を目にするまで信じないように』 彼(ムーサー)は彼らに対し祈り、ハールーンがその祈りに「アーミーン(かくあれかし)」と声を合わせた。


転載:「ジャラーラインのクルアーン注釈」
中田香織 訳
中田 考 監訳
日本サウディアラビア協会出版

(2008年6月6日更新)



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