イスラーム研究 月刊『道(タオ)』掲載 
16アッラーの最後の使徒

アッラーの使徒達
「われはあなた以前にも、
使徒たちを遣わした。その或る者に就いては
あなたに語り、
また或る者に就いては語ってはいない。
だがどの使徒も、
アッラーの御許しによる外、
印を齎すことはなかった。
そしてアッラーの大命が下れば、
真理に基づいて裁かれる。
その時、虚偽に従った者たちは滅びる」
(『クルアーン』第四十章(ガ-フィル章)七十八節)
「われは只万有への慈悲として、
あなたを遣わしただけである」
(第二十一章(預言者章)百七節)
 アッラーのヒクマ(叡智)とラフマ(慈悲)は被造物の中から多くの使徒を選び、各民族に使徒を遣わせました。使徒達は人々に善を説き、現世と来世での幸福な生活を送るための正しい道を明らかにしました。
 また、理性で考えられないことなどについてもこれを明らかにするためと、アッラーの唯一性について説くために、数知れない使徒が地上に遣わされました。彼等は太陽や月、あるいは木や川や山などの崇拝から人々を脱却させ、正しい崇拝の方法を説きました。
 使徒達は自分達へのアッラーからのナスル(援助)やその力についても、それぞれの民族に語りかけました。また、アッラーの存在自身についても人々に語りかけ、人々が納得出来るまでアッラーの教えを説きました。
「本当にわれは、
各々の民に一人の使徒を遣わして
『アッラーに仕え、邪心をさけなさい。』
と(命じた)。
それで地上を旅して、
(真理を)拒否した者の最後が
どんなものであったかを見るがいい」
(第十六章(蜜蜂章)三十六節)
「本当にわれは、吉報の伝達者として、
また警告者として、
真理を持たせてあなたを遣わした。
(またこれまでも)どの民にもかれらの間に、
一人の警告者が行かなかったものはない」
(第三十五章(創造者章)二十四節)
 また、人間には当然ながら肉体と精神とがあり、人間がこの世で正しく快適に生活を送っていくためには肉体と精神についても知らなければなりません。肉体は飲食によって栄養を補給し、精神はアッラーの御言葉によってしか栄養を補給することは出来ません。このような教えは使徒達によってのみ伝えられています。
 アッラーはヌーフ(モーセ)やイーサー(イエス)、そして最後に預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)を遣わし、その啓示は最後のものとなりました。

最後の使徒、預言者ムハンマド
「本当にこの(クルアーン)は、
万有の主からの啓示である。
誠実な聖霊がそれをたずさえ、
あなたの心に(下した)。
それであなたは警告者の一人となるために」
(第二十六章(詩人たち章)百九十二~百九十四節)
 預言者ムハンマドは最後の使徒となり、それにより啓示は封印されました。それ以後、使徒や預言者は遣わされることは決してありません。
 預言者ムハンマド以前の使徒達は彼等の言葉で使徒が現われることを預言していました。彼の啓示をもって、それ以前の啓示は全て無効になりました。
 今から十四世紀前にアッラーは預言者ムハンマドを全人類の使徒として遣わされました。彼はその当時の彼の社会では誠実さと忠実さで子供の頃から知られていました。
 人々が預言者ムハンマドに相談を求めて来た際、彼は最も適切な忠言を下し、その信頼は大変高いものでした。
 四十歳の時、アッラーは彼に啓示を下し、人々にアッラーの唯一性を説くように命じました。彼は人々に「私はアッラーの使徒である」と公言しました。
 アッラーは使徒である預言者ムハンマドの言行の正しさや誠実さを示すためにいくつもの奇跡を授けました。そして、預言者ムハンマドは人々に復活や天国や地獄について、理性では考えられないこれらのことも伝えました。
 多くの人々は使徒の言うことを信じ、彼に啓示されたアッラーの御言葉を信仰するようになり、人々は預言者ムハンマドがアッラーの使徒であると証言するようになりました。
 預言者ムハンマドは、アッラーの教えについて人々が本当に信仰するまで教育し、その結果当時の人々はイスラームの教えを布教するほどにも信仰を持つようになりました。

アラブ社会に秩序をもたらす
「あなたがたはアッラーの絆で皆しっかりと縋り、分裂してはならない。
そしてあなたがたに対するアッラーの恩恵を心に銘じなさい。
初めあなたがたが(互いに)敵であった時
かれはあなたがたの心を(愛情で)結び付け、
その御恵みによりあなたがたは兄弟となったのである。
あなたがたが火獄の穴の辺りにいたのを、かれがそこから救い出されたのである。
このようにアッラーは、あながたのために印を明示される。きっとあなたがたは正しく導かれるであろう」
(第三章(イムラーン家章)百三節)
 預言者ムハンマドは、この世界の創造主であるアッラーによって全ての人間のために遣わされたのですが、彼が遣わされた時期というのは、アラブ社会にとっても、また世界中の人間にとっても大変に危機的な状況でした。
 殆どの人が信仰と道徳を知らないために、部族間の恐ろしい争いがずっと続いていました。
 彼等は、自分達を民族やグループで区別し、強いものが生き残るという、まるで野生の掟に従ったような世界でした。そのような状況で、差別と怒りと、ねたみと嫉妬が彼等の間に充満し、物事に決まった価値などはなく、全くの無秩序状態でした。
 かつてあった宗教も殆ど忘れ去られ、それを信仰している人はごく僅かでした。
 預言者ムハンマドはアッラーの啓示を受け、全ての人間をイスラームの正しい道に導くように命じられました。そこで、彼は人々に調和という観念を教えました。それは、イスラームよりも前の時代には存在しなかったものです。さらに、イスラームという友愛の関係も教えました。
 預言者ムハンマドは、自分自身についてはこの大地を創造したアッラーの使者に過ぎないと言っていました。
 彼は、皆にあらゆる意味での安定と、協力、そして平等をもたらしました。
 彼は、誰かが他の者よりも優るということはなく、人種間や部族間や国の間に優劣の差はなく、また、アラブ人が非アラブ人に優ることもないと教え、そして、全ての人間は創造主の奴隷であると説きました。
 その教えを聞いた各部族の兵士達は怒りの手を振り上げることなく、皆等しくイスラームのために働き始めました。このような状況は、イスラームよりも前の時代には考えられないことでした。
 彼等の協力により、預言者ムハンマドは、各部族の中に長い間続いていたあらゆる迷信や偏見を、非常に短い間に消し去ることが出来ました。
 彼等はあらゆる種類の偶像や邪悪なもの、悪意のあるものを自分達の内から除き、破壊し、また、預言者ムハンマドは彼等の内に高潔であることと、お互いの胸の内をさらすということの意味を植え付けました。
 イスラームのおかげで人権という考えは頂点に達し、あらゆる人は自分の権利と他の人の権利というものを認めるようになりました。

ムハンマドという人物
「今、使徒があなたがたにあなたがたの間から、やって来た。
かれは、あなたがたの悩みごとに心を痛め、あなたがたのため、とても心配している。信者に対し優しく、また情深い」
(第九章(悔悟章)百二十八節)
 預言者ムハンマドという人物は、その高潔さと勇気と、他の人を尊重するその態度で際立っており、マッカの社会では大変に有名でした。また、最も勇敢でした。
 彼の友人、親類、隣人、またその他の人々といった、あらゆる種類の人々と接し、その時は、それぞれに最も相応しい態度で接していました。
 預言者ムハンマドの話し方や、物腰、仕事や依頼されたことに対して非常に忠実なことなどから、その言動は人々から大変信頼され、誰からも愛されていました。
 また、彼は約束したことに対しては非常に気を使っていました。そのために、人々は彼のことを「信頼出来る人」と、まるであだ名のように呼んでいました。
 読者の皆さんには彼の伝記を読むことをお勧めします。
 イスラーム教徒、非イスラーム教徒に拘わらず、多くの学者達が彼の伝記を書いてます。それらを読み、さらに詳しく調べるならば、預言者ムハンマドがどれだけ魅力的な人物だったかが分かるでしょう。
 改めて預言者ムハンマドの伝記を読むと、彼がいかに人類の問題をイスラームに従って解決していったかが分かります。また、彼がいかに法の正義と公平さをもって他の人々と接して来たのかが分かります。
 そのことから、彼が普通の人間なのではなく、アッラーから人類へ遣わされた使徒であることが分かるでしょう。
 預言者ムハンマドは人類にイスラームをもたらしました。イスラームは問題や紛争を解決するための指針であり、現世、さらに来世でのより良い生活のための指針なのです。  (続く)

 

     
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